今週のコラム 会社に仕組みを導入するには新入社員の教育プログラムを活用せよ!
「組織を回す仕組みがなければ、会社としての体を成しておらず、個人商店と同じとのことですが、最初にやるべきことは何でしょうか?正にウチの会社がその状態なので・・・」──当社のセミナーにご参加いただいた不動産関連事業の社長からのご相談です。
結論を申し上げると、「新入社員の教育プログラムから着手してください。これが完成したら通常業務にも仕組みを導入してください。」と回答させていただきました。
目次
【なぜ、会社に仕組みを導入しなければならないのか?】
組織が仕組みで回っていない会社では、間違いなく社長一人が孤軍奮闘している状況になっています。
トップ営業は常に社長であり、他の従業員が 束になっても敵わない。
日常業務でも、ちょっとしたイレギュラーなことが発生すると直ぐに社長に判断を求めて指示を仰ぐ。ましてや、クレーム発生時に、従業員が対応するとかえってトラブルを引き起こすので、社長がクレーム対応せざるを得ない。
まさに、社長がスーパーマンのような働きをすることで、会社が何とか回っている状況になっており、とても組織が仕組みで動いているとはいえません。
いくら○○部、□□部、というように部門が分かれていても、会社としての体を成しておらず、社長がその場にいなければ業務が滞ってしまう…ので、実質的に個人商店と同じなのです。
このような状態では、社長の能力以上に会社が成長することはありません。営業を頑張って売上を上げても、社長が忙しくなるばかりで、社長が倒れてしまっては元も子もありません。
社長が、「組織を回す仕組みを導入するぞ!」と、トップダウンで指示を出したところで、組織で動く体験したことのない従業員に、いきなりやらせても上手くいくはずがありません。
このような会社では、社内に「新入社員の教育プログラム」がない会社がほとんどですので、先ずは「新入社員の教育プログラム」から着手していくのが賢明なのです。
【新入社員の教育プログラムについて】
新入社員の教育プログラムでは、粗くてもいいので、最低限、下記項目について作成してください。
①企業理念・目標などについて
社長であるあなたが、会社としてどのようなビジョンや価値観、目標を持っているのかを、新入社員に伝えなければなりません。
これは、新入社員があなたの会社に適応するために必要なものだからです。新入社員がいろいろと習得する際、そして独り立ちした後も、どのような考え方で対応していくべきなのか、判断基準にも役立ちます。
②業務に関する基礎知識について
各部門で、どのようなことを新入社員に基礎知識として習得しなければならないか、必要なトレーニングを行うためのものです。
これには、商品やサービスの説明だけでなく、会社としてどのような業務をしているか全体的なプロセスや、業務に必要なツールやシステムなども含まれます。
③社内ルールやマナーについて
あなたの会社で、守らなければならないルールやマナーがあるはずですので、これを習得させなければなりません。
服装や身だしなみ、電話対応やメールの書き方、社内決裁の手順など、が該当します。
④OJT(On the Job Training)について
職場の上司や先輩が、新入社員に対して、実際の仕事を通じて指導し、知識、技術などを身に付けさせます。
学生から社会人(新入社員)となり、これまでの学生気分を一新するためにも、OJTは必要不可欠です。職場の上司や先輩の働きぶりを、新入社員の目に焼き付けてください。
⑤キャリアサポートについて
あなたの会社が、従業員の将来的なキャリアの展望を示すとともに、スキルアップの方法などを示すことで、自己啓発を促すものです。
新入社員が5年後、10年後の自分がどのようなキャリアになっているか、そしてそのために必要なスキルなどがわかることで、自分自身で望むキャリアに到達する努力を促します。
新入社員が入社後すぐに辞めてしまう理由の上位に、将来展望が描けないというのがありますので、心当たりのある社長は是非とも対応してください。
⑥その他(あれば)
その他に新入社員に伝えておきたいことなど。
以上のような新入社員の教育プログラムを提供することで、新入社員の早期戦力対応やスキルアップ、キャリア開発が促進されますので、是非とも作成してください。
【新入社員の教育プログラムから会社全体の仕組み導入へ】
①期待される業務のレベルや品質の定義つくり
なぜ、新入社員の教育プログラムから着手するかというと、そうすることで、あなたの会社が従業員に対して期待する業務のレベルや品質を、従業員の抵抗なく定義することができるからなのです。
新入社員の教育プログラムをつくることで、新入社員だけでなく全従業員が必要とされる知識やスキルが明確になります。さらに、新入社員がそのプログラムでトレーニングを受けることで、実際にその知識やスキルが求められているものに合致しているかの検証もできるので、業務の品質向上や生産性の向上につながります。
②会社と従業員の心理的結びつきの醸成
さらに、新入社員があなたの会社のビジョンや価値観に共感することで、モチベーションや忠誠心を高めることにもなります。業務に取り組む姿勢を育成することで、新入社員とあなたの会社の間に強い結びつきをつくり上げることができるのです。
そして、教育プログラムを実践することで、新入社員だけでなく全従業員にも、あなたの会社のビジョンや価値観が浸透してきます。新入社員の業務に取り組む姿勢を育成するだけでなく、全従業員のモチベーションや忠誠心を高めることにつながるのです。
③職責ごとに必要となる知識やスキルの明確化
これだけではありません。新入社員が必要とされる知識やスキルが明確になるので、今後は上司や先輩が、それぞれの職責に応じてどのような知識やスキルが必要とされるのかを明確にしていくことが可能になるのです。
主任、係長、課長、部長、役員など、それぞれの職責に応じて、どのような知識やスキルが必要とされるのかを明確にすることで、従業員の将来的なキャリアの展望やスキルアップの方法などとともに、将来どのように自己啓発をしていけばよいのかが全従業員が理解できるようになります。
④会社全体での最適化
また、各部門での業務プロセスも明確になり、各業務の流れや納期、責任者の権限など、複数の部門が関わる業務では、業務の流れを明確にすることで効率化が図れます。
そして、業務遂行していく中で、課題やトラブルがでてきた際には、どこのプロセスを修正・改善すればいいのかが、共通認識することが可能になり、ボトルネックの解消が容易になります。
⑤仕組みの定着化
さらに、会社を仕組みで回すためには、社内の各部門や役割、責任範囲を明確にすることで、効率的に業務を推進することができるようになるだけでなく、時代の変化などに合わせて柔軟に組織全体を見直し、改善することもできるようになります。
仕組みの定着化ができてくると、人に業務をつけるのではなく、業務に人をつけることができるので、誰でも業務を回すことができるようになり、引き継ぎさえしっかり行えば、全従業員が長期休暇をいつでも取得できるようになります。
ここまでできるようになってくると、社長であるあなたは、これまでのスーパーマンのような働きをしなくても、会社がキチンと回っている状況になっているので、経営だけに専念することが可能になります。売上・利益の増加に向けて、思い切り舵を切ってください。
【DX(デジタルトランスフォーメーション)も視野に】
ここまでできたら、必要なシステムを導入することで、ITを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)につなげていくことも可能になります。
ただし、DX(デジタルトランスフォーメーション)については、言葉だけが先走っているようですので、ここでおさらいしておきましょう。
DX(デジタルトランスフォーメーション)には、次の3段階があります。
ITツールの導入という①デジタイゼーションは、将来の②デジタライゼーション、その先にある③デジタルトランスフォーメーションの実現にとって必要条件のひとつなのですが、これをDX(デジタルトランスフォーメーション)と誤った認識をされている経営者の方が少なくありません。
①デジタイゼーション
情報をデジタルツールでつくる。アナログからデジタルへの移行。
②デジタライゼーション
情報のやり取り、共有をデジタルツールでおこなう。デジタル化されたデータを活用して、作業の進め方やビジネスモデルを変革する。
③デジタルトランスフォーメーション
(ツールの導入を行うといった局所的なIT導入のことではなく)デジタル技術の利活用で、根本的なビジネスモデルそのものを変えること。主に人や組織に関する変革を指す。
我々のような中小企業では、これからITツールの導入という①デジタイゼーションに着手するところが多いでしょうし、情報のやり取り、共有をデジタルツールでおこなう②デジタライゼーションまでが、実質的に必要かつ効率的なものだと現時点では考えています。
【まとめ】
組織を回す仕組みがなければ、会社としての体を成しておらず、個人商店と同じ。
トップ営業は常に社長であり、他の従業員が 束になっても敵わない。
日常業務でも、ちょっとしたイレギュラーなことが発生すると直ぐに社長に判断を求めて指示を仰ぐ。ましてや、クレーム発生時に、従業員が対応するとかえってトラブルを引き起こすので、社長がクレーム対応せざるを得ない。
まさに、社長がスーパーマンのような働きをすることで、会社が何とか回っている状況になっており、とても組織が仕組みで動いているとはいえず、正に個人商店と同じなのです。
なぜなら、業務に人を付けているのではなく、人に業務を付けているから…組織を仕組みで回しているのではなく、個人商店として業務をこなしているに過ぎないからなのです。
個人商店の状況のままでは、会社の売上・利益は社長であるあなた次第であり、それ以上に増やすことができません。中小企業のほとんどが、売上高数億円程度なのは、これが原因なのです。
売上や利益を増やしたいのであれば、個人商店ではなく、組織を仕組みで回すことができるようにならなければなりません。そのためには、「新入社員の教育プログラム」をつくることが一番の近道なのです。
新入社員の教育プログラムをつくることで、期待される業務のレベルや品質の定義つくり、会社と従業員の心理的結びつきの醸成、職責ごとに必要となる知識やスキルの明確化、会社全体での最適化、仕組みの定着化に繋げることができます。
仕組みの定着化までできるようになると、人に業務をつけるのではなく、業務に人をつけることができるので、誰でも業務を回すことができるようになります。社長であるあなたは、これまでのスーパーマンのような働きをしなくても、会社がキチンと回っている状況になっているので、経営だけに専念することが可能になります。
ここまでできるようになってから、DX(デジタルトランスフォーメーション)にも着手してください。そうでないと、効率化どころか無駄なものを作り上げてしまいますので…
さあ、売上・利益の増加に向けて、思い切り舵を切ってください。
現在の売上高が数億円規模であれば、10億円から30億円規模の企業に成長させることが十分可能になっています。
あなたは社長として、どのように新入社員の教育プログラムを活用されますか?
組織で回す仕組みづくりに新入社員の教育プログラムを活用していただくことで、社長が経営に専念できる強く儲かる会社にしていきましょう。