資金調達・企業成長支援コンサルティング

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今週のコラム 売上10億円を達成するための5つの具体的ステップ

「うちの会社もようやく年商2億円まできたんですが、ここから先がまったく伸びないんです。人を入れても育たないし、自分が営業しないと数字が動かないし……。このまま続けていて、10億円なんて本当にいけるんでしょうか?」―これは、先日行った個別相談で、サービス業を営む経営者から寄せられた切実な声です。

実際、多くの中小企業が年商3~5億円のあたりで成長が止まってしまいます。売上の波に左右され、人に依存し、経営者がプレイヤーであり続ける限り、次のステージにはなかなか進めません。

「10億円を超える会社と、止まってしまう会社。いったい何が違うのか?」
この問いに明確に答えられる経営者は意外と少ないものです。しかし、答えはあります。

売上10億円を目指す企業には、それにふさわしい“考え方”と“進め方”が存在します。

本コラムでは、成長の壁を乗り越え、年商10億円という目標を現実にするための具体的なステップを、順を追ってご紹介していきます。

【はじめに】

売上1億円から10億円へ!この数字の違いは、単なる「売上の大きさ」ではありません。実際には、ビジネスモデルの構造・組織体制・経営者の視点や役割がまったく別物になるという現実があります。

多くの中小企業が、年商1〜3億円の壁、そして5億円の壁を乗り越えられずにいます。それは努力が足りないからでも、商品力がないからでもありません。“やるべき順番”と“変えるべき部分”を見誤っているからなのです。

10億円を目指すには、現場にどっぷり浸かる経営から、戦略と仕組みで会社を動かす経営へとシフトする必要があります。ここを意識できるかどうかが、成長する会社と停滞する会社の分岐点になります。

このコラムでは、売上10億円を実現するために、どの順番で、何を、どう変えるかという「5つの具体的ステップ」をご紹介します。机上の空論ではなく、現場経験に基づいた実践的な内容です。

今いるステージに満足せず、“次の10年を見据えた成長”を本気で考える経営者にこそ、ぜひ読んでいただきたい内容です。変化を起こすのは、他の誰でもない、あなた自身です。

ステップ1:ビジョンを“共有可能な言葉”にする

年商10億円を目指す企業にとって、最初に取り組むべきことは「売上アップの戦術」ではありません。組織として成長するための原点、つまりビジョンの明確化と共有です。

多くの中小企業がこの段階でつまずくのは、経営者の頭の中にある理想や想いが、社員に伝わっていない、あるいは理解されていないからです。経営者自身がどれほど未来を描いていても、それが社内に共有されていなければ、会社全体が同じ方向を向くことはできません。

そこで最初に必要なのが「ビジョンを“共有可能な言葉”にすること」です。抽象的なスローガンではなく、社員が理解し、共感し、行動に移せる言葉で伝えることが求められます。

1-1. 経営者自身が腹落ちするビジョンを言語化する

まずは経営者自身が、自分の想いや将来の理想像をしっかりと言語化する必要があります。ここでのポイントは、「人に語るために」言語化するのではなく、自分自身の中にある熱意や価値観に真正面から向き合い、心から納得できる形にすることです。

よくある失敗例として、外部のコンサルタントや流行の経営書の言葉を借りて、耳障りの良いフレーズをビジョンとして掲げるケースがあります。しかしそれでは、自社にとってのリアルな未来像にはなり得ません。

ビジョンとは、「5年後、10年後、私たちは社会に対して何を実現しているのか」「どんなお客様に、どんな価値を届けているのか」「その結果、社員はどのような姿で働いているのか」といった未来のストーリーです。それを経営者自身の言葉で語れなければ、組織は迷子になります

言語化に取り組む際は、過去の経験、自社の強み、社会への貢献、社員への想いなどを深掘りし、単なる目標数値ではなく「存在意義」を明確にすることが大切です。

1-2. 社員に響くストーリーとして伝える

ビジョンが経営者の中で言語化できたら、次はそれを「社員に伝える技術」が必要になります。

ここで大切なのは、「ビジョンを伝える=説明すること」ではないという点です。数字の目標や計画だけを伝えても、人は動きません。大事なのは、社員一人ひとりが自分ごととしてビジョンを受け取ることなのです。

そのためには、ビジョンを物語として語ることが効果的です。
・なぜこの会社を始めたのか
・どんな失敗を経験し、どんな教訓を得たのか
・どのような未来を本気で目指しているのか

こうした感情や体験を交えたストーリーテリングは、社員の心に届きます。たとえ今すぐ実現できる内容でなくても、「この人と一緒に未来をつくりたい」と思ってもらえるようになります。

また、ビジョンは上から押しつけるものではなく、共に創っていく感覚も大切です。社員に問いかけながら、意見を聞きながら、自社らしい言葉に育てていく。そうすることで、共感が生まれ、行動が伴うようになります。

1-3. 社内のあらゆる場で繰り返し伝え続ける

言語化し、ストーリーに乗せて伝えても、一度や二度では定着しません。人は一度聞いただけでは忘れます。だからこそ、経営者は“しつこいくらい”繰り返し伝える必要があります

朝礼、週次会議、1on1ミーティング、社員研修、掲示物、社内報など、あらゆるタッチポイントでビジョンを発信し続けることが不可欠です。

例えば、
・朝礼でビジョンに関連するエピソードを共有する
・会議の冒頭で「この議題はどのようにビジョンと関係しているか」を明確にする
・掲示物や社内ポスターに、ビジョンを印象的に表現する

こうした積み重ねによって、社員の言葉にもビジョンが自然と含まれるようになります。つまり、社員一人ひとりが「うちの会社ってこういう方向を目指してるんだよね」と、他者に語れるようになるのです。

また、経営環境が変化しても、ビジョンが全社員の拠りどころとして機能するようになります。判断に迷ったときの羅針盤となり、意思決定の軸になるのがビジョンなのです。

まとめ:言葉にすることで、会社の未来は動き出す

売上10億円を目指すには、社員の力が不可欠です。しかしその力を引き出すには、単なる「数字目標」だけでは足りません。共通の未来像を、共通の言葉で描くことが必要なのです。

経営者の想いを社員と共有することで、組織は一体感を持ち、同じ方向へ進み始めます
そしてその第一歩が、「ビジョンを共有可能な言葉にする」ことなのです。

ステップ2:利益モデルを“高収益体質”に再設計する

売上を伸ばすだけでは、企業は強くなりません。10億円を超える企業を目指すなら、まず考えるべきは「利益構造の改革」です。

売上至上主義から脱却し、いかに利益を確保するか。これが中小企業が持続的に成長していく上で避けて通れない課題です。利益がなければ、人も育てられず、投資もできません。売上が伸びても、利益が出ない構造のままでは、経営の不安定さはむしろ増していきます。

このステップでは、自社の利益構造を見直し、「儲かる仕組み」に作り変えるための3つの具体的行動を解説していきます。

2-1. 利益率の高い商品・サービスを軸に再構成する

あなたの会社には「一番粗利を生んでいる商品やサービス」が明確に把握されていますか?

多くの経営者が、売上の金額だけを見て「主力商品」を決めていますが、これは大きな落とし穴です。実は、売上の多い商品が、会社の利益を圧迫していることは少なくありません

まず取り組むべきは、商品別・顧客別に「粗利」を可視化することです。売上ではなく、粗利額と粗利率を基準に「本当に儲かっている商品はどれか?」「どの事業が会社を支えているのか?」を把握するところから始めましょう。

この分析によって、たとえ売上規模は小さくても、極めて高い利益を生んでいる“隠れた優良商品”が見つかることもあります。そういった商品を軸に据え、ラインナップを再編成していくことが重要です。

さらに、原価の見直し提供プロセスの効率化などにより、同じ商品でも利益率を高める工夫ができます。例えば、材料仕入れの見直し、工程短縮、在庫管理の最適化など、細かい部分の改善が利益に大きく影響します。

会社全体を「利益を生む商品を中心に組み直す」発想に変えることが、高収益体質への第一歩です。

2-2. 安売り依存から脱却し「価値で勝つ」戦略へ

次に重要なのが、安易な値引きに頼る販売姿勢を改め、「価値で選ばれる商品やサービス」を確立することです。

中小企業が価格競争に巻き込まれると、資本力のある大企業には勝てません。顧客から「もっと安くしてほしい」と言われたとき、値引きで応じることは簡単です。しかし、それを続ける限り、利益はどんどん削られていきます。

価格で勝負する限り、永遠に消耗戦から抜け出せません

では、どうすればいいのか?
それは、「安さ」ではなく「価値」で選ばれるポジションを築くことです。
たとえば、
・顧客の手間を省くサービス付き提案
・高品質なアフターフォローや保証体制
・特定の課題に特化した専門性のある商品

など、お客様の「悩み」「不安」「未解決の課題」に正面から向き合い、解決策を提供することです。

そのためには、商品・サービスの見せ方を変える必要があります。「高機能」「最新技術」などのスペックではなく、「お客様がどう変化するのか」「どうラクになるのか」を明示することで、価格以上の価値が伝わります。

また、営業現場でも価格の話から始めるのではなく、「なぜこの商品が必要か」「導入後にどうなるか」という“結果ベースの提案”に切り替えることが効果的です。

「安さ」で選ばれるのではなく、「この会社じゃないとダメ」と言われる存在になること。これが利益率を高める最大の武器になります。

2-3. 利益を生まない事業・顧客を切り捨てる勇気を持つ

最後に取り上げたいのは、「売上はあるけど、利益が出ていない」部分にメスを入れる決断です。

これは非常に勇気のいる行動ですが、売上至上主義から脱却するには避けて通れません。どんなに数字が上がっていても、その事業や取引先が赤字であれば、会社全体の体力をじわじわと奪っていきます。

たとえば、
・値下げ要求が激しい大口取引先
・毎回カスタマイズ対応で工数ばかりかかる案件
・担当者依存が強く、利益管理が難しいサービス群

これらを分析し、「付き合いが長いから」「断りにくいから」という感情を手放し、数字で判断する勇気が求められます。

経営資源は有限です。限られた人材・時間・資金を、本当に価値を生み出せる部分に集中投下しなければ、成長のステージには到達できません。

不要な事業・顧客を切り離すことは、「捨てる」のではなく「未来に向けて選び直す」ことです。そして、この選択が、利益体質をつくる上での転換点になります。

まとめ:儲かる体質は「選ぶ力」で決まる

高収益体質への転換は、一朝一夕ではできません。しかし、その出発点はとてもシンプルです。
「どこで利益を生むか」を見極め、「利益にならないものをやめる」

そして、その選択を基に、商品戦略・営業スタイル・顧客との関係までを組み直すことで、会社の構造は大きく変わります。

売上だけを追いかける経営から卒業し、「利益で判断する経営」へと転換することで、あなたの会社は着実に10億円企業への道を歩み始めます。

ステップ3:経営幹部を“現場の延長”から“戦略思考”へ

売上10億円を目指す企業にとって、経営者一人の力には限界があります。規模が大きくなるほど、判断すべきこと、管理すべきこと、見渡すべき視野は広がり、トップダウンの限界は明らかになります。

そのとき必要になるのが、「現場のリーダー」ではなく、「経営に加わる幹部人材」の存在です。
現場の経験値だけで判断するマネージャーから脱却し、戦略的な視点を持って会社全体の未来を描ける人材を育てる必要があります。

このステップでは、現場リーダーを「戦略を考える幹部」へと育てていくための3つの実践策をご紹介します。

3-1. 幹部候補に経営数字を学ばせる

現場で成果を出してきた人が、必ずしも幹部になれるわけではありません。
幹部に求められるのは、売上や現場対応の腕ではなく、会社全体の“お金の流れ”を理解し、数字で判断できる力です。

まず、基本中の基本として、PL(損益計算書)とBS(貸借対照表)を読めるようにすることが必要です。月次決算書を前にしたときに、どの費用が重くのしかかっているのか、どこに改善余地があるのかを見極められなければ、的確な経営判断はできません。

また、KPI(重要業績指標)を使った数字管理のスキルも必須です。売上だけではなく、
・顧客単価
・リピート率
・案件化率
・在庫回転率

など、事業の構造を分析する視点が必要です。これらの数字は、経営の“健康診断”とも言える存在です。幹部候補がこれを読み取り、現場の打ち手と結びつけられるようになれば、会社は大きく変わります。

数字を扱えない幹部は、経営を語る資格がない――それくらいの基準で教育を進めることが必要です。

3-2. 権限委譲と成果責任をセットで与える

人を育てるためには、実践の場が欠かせません。幹部候補には、「任せる」ことによってしか得られない学びがあります。

しかし、ここでよくある失敗が、「業務は任せるが、責任は経営者が背負い続ける」ことです。それでは真の幹部は育ちません。

重要なのは、“権限”と“責任”をセットで渡すことです。つまり、「決定していい」「実行していい」だけでなく、「その結果に対して説明責任を持つ」ことも含めて任せるということです。

具体的には、
・新規事業の立ち上げ責任者としてPLを管理させる
・採用や人事に関して裁量と成果評価を明確に与える
・営業部門の数字とメンバー育成を丸ごと任せる

など、実践の中で自分で考え、選び、責任を取る環境をつくることが重要です。もちろん、最初から完璧にできるわけではありません。失敗もあります。しかし、失敗の中でしか得られない判断力・責任感・覚悟が幹部を育てます

経営者が「自分でやったほうが早い」と思って手を出し続ける限り、いつまでも人は育ちません。多少の時間がかかっても、「任せる勇気」と「任せ続ける根気」が、戦略を考えられる幹部を生み出します。

3-3. 定期的な戦略会議を実施し“考える場”をつくる

幹部育成のもう一つの要は、「日常業務に追われない、未来を考える場」を意図的に設けることです。

現場リーダーが幹部に育たない最大の理由は、「思考の時間が足りない」ことにあります。忙しい日々の中では、目の前のトラブル対応や進捗管理ばかりに意識が向かい、中長期的な戦略を考える余裕が生まれません。

そこで有効なのが、「定例の戦略会議」の導入です。週次、あるいは月次で、現場業務から離れた視点で
・市場環境の変化
・自社の強み・弱み
・中長期の成長戦略
・新規事業や投資判断

といったテーマを話し合う場をつくります。

ここでは、経営者がすべてを決めるのではなく、幹部候補に考えさせ、発言させることがポイントです。最初は発言が出なくても構いません。徐々に思考の癖が育ち、全社視点で物事を捉える力がついてきます。

戦略を語れる人材を育てるには、“考える訓練の場”を持つことが不可欠です。それは自然には育たないからこそ、意図的に仕組みとして設ける必要があります。

まとめ:幹部を育てることは、経営者の未来をつくること

10億円の企業になるということは、経営者が「すべてを把握している状態」から、「信頼して任せる状態」への移行を意味します。

そのためには、現場を知り、数字を読み、戦略を考え、責任を果たす幹部が不可欠です。
そしてその幹部は、自然には育ちません。経営者が意志を持って「育てる仕組み」を用意することで、はじめて成長していきます。

最初は手間もかかり、失敗もあるでしょう。しかし、あなたが本気で10億円を目指すなら、今この瞬間から、幹部育成に着手する価値は十分にあります。

会社の未来を担うのは、あなたではなく、これから育てる幹部たちです。

ステップ4:営業を“人に依存”から“仕組み化”へ

売上10億円を目指す経営において、最もボトルネックになりやすいのが「営業の属人化」です。社長や一部のエース社員に営業成果が集中し、「あの人がいないと売れない」状態になっている企業は非常に多く存在します。

しかし、売上10億円というスケールを目指すには、営業を“個人の技”ではなく“再現可能な仕組み”に変える必要があります。誰がやっても一定の成果が出せる構造を作らなければ、成長は頭打ちになります。

ここでは営業の属人化を解消し、組織的に売上を作るための3つの取り組みについてお伝えします。

4-1. 営業プロセスを可視化し、誰でも再現できる形にする

営業が属人化している会社には、共通点があります。それは「売れる営業が何をやっているのかが見えない」ということです。

優秀な営業パーソンほど、商談中に自然にクロージングへ持ち込み、感覚的に契約を取ってきます。社長自身が営業トップという会社では、そのやり方が「自分の感覚」でしか伝えられず、他の社員に真似させることができません。

まず取り組むべきは、営業プロセスの言語化と可視化です。
・見込み客へのアプローチ方法
・初回面談でのヒアリング項目
・提案書の構成やタイミング
・クロージングの言い回し

これらを一つ一つ棚卸しし、「誰でも同じようにできる状態」に落とし込むことが必要です。

そのためには、営業マニュアルやトークスクリプト、提案書テンプレートなどを整備し、「売れている営業の型」を形式知化することが効果的です。

さらにロールプレイングや営業同行を通じて、行動の標準化を実現することで、経験の浅い社員でも成果を出せる環境が整います。

再現性のある営業を仕組みとして社内に構築することで、成長スピードは一気に加速します。

4-2. 見込客管理・フォローの仕組みを整備する

営業成果の差は、実は“記憶”や“感覚”による対応の差から生まれることが多々あります。売れていない営業担当の多くは、見込み客との接点や商談の進捗を「なんとなく」で管理しているのです。

ここで必要になるのが、見込み客情報を一元管理し、フォローを仕組みで動かす仕組みづくりです。

・見込客ごとの接点履歴
・ステータス(初回訪問・提案中・検討中など)
・フォローすべきタイミングと内容
・対応者と次回アクションの記録

これらをCRM(顧客管理システム)やクラウドツールで一元管理し、「忘れない・漏れない・遅れない」営業体制を構築することが重要です。

ツールは万能ではありませんが、人的ミスや感覚の差を最小限に抑える効果があります。Excelやスプレッドシートでも十分な場合もあり、まずは「共有化と見える化」がポイントです。

また、定期的なフォローの自動化(メール配信、リマインダー設定など)を行うことで、放置される見込み客を減らし、受注確度を高めることが可能になります。

属人営業から脱却し、チームで売上を作る体制を整えるには、この見込客管理体制の整備が避けて通れません。

4-3. 営業数字をKPIで管理し、PDCAを回す

最後に、営業を仕組みに変える上で欠かせないのが、「数字で管理する文化」の定着です。

「今月あといくら売上が足りないか」ではなく、「どの指標を改善すれば売上が伸びるか」を考える視点が必要です。

たとえば、
・訪問数(アプローチ件数)
・商談数(見込み客との面談数)
・成約率(商談に対する契約率)
・平均単価(契約1件あたりの売上)
・フォロー数(休眠客へのアプローチ)

これらをKPIとして定め、部門・個人ごとに毎週/毎月チェックすることで、「感覚ではなく数字で営業を語る文化」が育ちます

さらに、数字の変化に応じて営業手法や提案内容を改善していくという、PDCAのサイクルを回し続けることが重要です。

KPIで見える化し、継続的な改善を仕組みに落とし込むことが、営業力の底上げにつながるのです。

この仕組みが回り出せば、属人的な営業力に頼らず、組織全体で成果を積み上げることができるようになります。

まとめ:営業は「才能」から「仕組み」へ進化させる

売上10億円を目指すなら、営業を「属人的な職人技」から「再現性のある仕組み」に進化させる必要があります。
・誰でも一定の成果が出せる営業プロセスの可視化
・見込客管理を仕組みで動かす体制づくり
・KPIによるマネジメントと継続的な改善

これらの取り組みは、派手さはないかもしれません。しかし、仕組み化なくして、安定的な成長も、幹部の育成もありません

あなたの会社の営業は、まだ“人任せ”になっていませんか?
今こそ、組織営業へと転換するタイミングです。

ステップ5:資金調達を“融資頼み”から“戦略的調達”へ

売上10億円を目指す中小企業にとって、成長に不可欠なのが「投資」です。設備、人材、マーケティング、新規事業…いずれも資金がなければ前に進めません。

ところが、資金調達といえば「銀行から借りるもの」と捉えている経営者は未だに多く、計画性のない融資依存の経営に陥りがちです。実際に、「資金が足りないからとりあえず借りる」というその場しのぎの判断を繰り返すうちに、借入過多・財務悪化という事態を招いている企業も少なくありません。

そこで必要なのが、資金調達を“戦略的な経営手段”として活用する視点です。借りることが目的ではなく、企業成長のために「どこから」「どれだけ」「どう使うか」を逆算して考える。これが、10億円企業を目指す資金調達の在り方です。

以下に、戦略的資金調達を実現するための3つのアプローチをご紹介します。

5-1. 銀行と“借りる関係”から“共に育てる関係”へ

まず意識したいのは、銀行との付き合い方を「借りる・返す」の繰り返しから脱却することです。

多くの経営者は、資金が必要になってから銀行に相談します。しかし、それでは一方的なお願いになり、対等な関係性は築けません。

重要なのは、銀行を「資金提供者」ではなく「成長パートナー」として捉えることです。そのために有効なのが、月次試算表の共有や四半期ごとの経営報告です。

定期的に現状を報告し、これからの成長戦略を語り、事業への思いを伝える。そうすることで、銀行も「この会社を応援したい」と感じるようになります

さらに、資金使途を明確にしたうえでの融資依頼であれば、銀行側も安心して対応できます。「この資金は新商品開発のため」「この投資で売上がいくら伸びる見込み」といった具体的な戦略を共有できれば、融資審査も前向きに進む可能性が高まります。

また、普段からの信頼関係があれば、急な資金需要やトラブル時にも柔軟な対応を得やすくなります。

銀行は信用情報の蓄積を非常に重視します。日頃から丁寧な説明と報告を心がけ、「この会社なら安心して貸せる」という存在になることが、長期的な資金調達力につながります。

5-2. 計画的な投資・資金繰りを経営に組み込む

中小企業の資金調達が場当たり的になりやすい最大の原因は、「投資と資金繰りの計画が立てられていない」ことにあります。

今あるお金をどう回すか、足りなくなったらどう借りるか、という視点ではなく、
・この半年で何にいくら投資するのか
・どのタイミングで資金が不足するのか
・資金回収はいつか

といった“中長期の視点”を持つことが不可欠です。

このためには、資金繰り表の作成と、資金計画のシミュレーションを日常業務に組み込む必要があります。毎月のキャッシュイン・キャッシュアウトを予測し、「何月にいくら必要か」「それをどう調達するか」を事前に設計しておくことが、安定経営の第一歩です。

さらに、投資対効果の検証も重要です。設備投資・人材採用・広告宣伝などの効果を定期的に振り返り、期待通りの成果が出ているか、改善の余地があるかを確認しましょう。

「必要だから借りる」ではなく、「成長のためにどう使うか」から逆算する発想を持つことで、資金調達が“攻め”の経営手段へと変わります。

5-3. 補助金・助成金・リースなど多様な資金源を活用する

戦略的な資金調達を行ううえで忘れてはならないのが、融資以外の資金源の活用です。

多くの企業が、資金調達=銀行融資と思い込んでいますが、実際にはさまざまな選択肢があります。
・各種補助金(事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金など)
・助成金(雇用関係、DX推進など)
・リース・割賦販売の利用
・ベンチャーキャピタルや事業会社との提携
・クラウドファンディング

これらを組み合わせることで、借入過多を避けながら、資金調達の安定性と柔軟性を高めることができます。

たとえば、設備導入をリースで対応することで初期投資を抑えたり、補助金を活用して新規事業のリスクを軽減したりすることが可能です。

補助金・助成金については、自社だけで調べて申請するのではなく、専門家(社労士・中小企業診断士等)と連携して取り組むことが成功のポイントです。

また、月次のキャッシュフロー分析とセットで、どの時期にどの資金源を活用するかをシミュレーションしておくと、経営の選択肢がぐっと広がります。

まとめ:資金は“借りるもの”から“未来をつくる道具”へ

売上10億円を目指すには、攻めの経営が必要です。そして、その土台となるのが“強い資金戦略”です。
・銀行と信頼関係を築き、共に成長する姿勢
・未来から逆算した資金繰り・投資計画
・多様な資金源を見据えた柔軟な対応

これらを実践することで、資金は「困ったときに頼るもの」ではなく、「未来をつくるための手段」に変わります

「資金が足りない」ではなく、「資金をどう活かすか」。その視点を持ったとき、あなたの会社は真に成長するフェーズに入ります。

【まとめ】

売上10億円は、限られた企業だけが辿り着けるゴールではありません。正しい順番で、正しい取り組みを積み上げていけば、多くの中小企業にも実現可能な現実です。

本コラムでご紹介した5つのステップは、いずれも劇的な一手ではなく、日々の経営に地道に組み込むべき「再現可能な取り組み」です。
ビジョンを共有可能な言葉にし、利益構造を見直し、幹部を育て、営業を仕組みに変え、資金調達を戦略的に設計する――この積み重ねが、組織の成長エンジンを生み出します。

そして、どのステップにも共通して求められるのは、経営者自身の意思と覚悟、そして“行動に移す力”です

理屈ではなく、実行できるかどうか。現場に落とし込めるかどうか。組織としてやりきれるかどうか。それこそが、10億円企業になるか、現状維持で終わるかを分ける決定的な違いになります。

今、どのステップが自社に不足しているかを見極め、まずは一つでも着手してみてください。その一歩が、確実に次の変化を呼び、企業の未来を動かします。

10億円企業になる道は、あなたの決断から始まります。

あなたは最高経営責任者として、どのようにして10億円企業に成長させるおつもりでしょうか?