今週のコラム 二代目社長はなぜ“決めきれない”のか?社内の力学を読み解く3ステップ

「社長に就任してから、何かを決めようとするたびに、先代や古参社員の顔が浮かんでしまいます。新しい方針を打ち出しても、『以前はこうではなかった』『先代ならそんな判断はしない』と言われると、自信がなくなり、結局は判断を先送りしてしまいます。どうすれば、自分の意思で会社を動かせるようになるのでしょうか?」―これは、当社にご相談いただいた二代目社長から寄せられたお悩みです。
確かに、「社長なのだから、自分で決めなければならない」と頭では分かっていても、実際には簡単ではありません。
先代が築いてきた会社の歴史、長年会社を支えてきた古参社員との関係、親族や取引先への配慮など、二代目社長の判断には、さまざまな人の思惑が絡んでいるからです。
そのため、「もっと自信を持って決断しよう」「社長なのだから強く指示を出そう」と考えるだけでは、問題は解決しません。むしろ、社内の状況を整理しないまま強引に改革を進めれば、社員の反発を招き、会社が分裂してしまう可能性もあります。
二代目社長が決めきれないのは、本人に決断力がないからではなく、会社の中にある見えない力関係が整理されていないからかもしれません。
では、二代目社長は、先代や古参社員との関係を壊すことなく、どのように自分の意思で経営判断を下せるようになればよいのでしょうか?
そのためには、最初から大きな改革に踏み出すのではなく、誰が会社を動かしているのか、どこで意思決定が止まっているのかを見極める必要があります。
本コラムでは、二代目社長が「決めきれない」本当の理由を明らかにするとともに、社内の力学を読み解き、自分の意思で会社を動かすための3つのステップを解説します。
はじめに
「自分が社長なのだから、最後は自分で決めなければならない」
そう分かっていても、いざ重要な判断を前にすると、なかなか決めきれない。そんな悩みを抱えている二代目社長は、決して少なくありません。
・新しい事業に踏み出すべきか。
・古参社員の役割を見直すべきか。
・先代から続く取引を続けるべきか。
・赤字部門から撤退すべきか。
どれも先送りできない課題です。しかし、判断しようとすると、「先代ならどう考えるだろうか」「古参社員が反発するのではないか」「失敗したら、自分の責任になる」といった思いが頭をよぎります。
そして、社員の意見をさらに聞き、会議を重ね、判断材料を集め続けるうちに、結局、何も決まらないまま時間だけが過ぎてしまいます。
しかし、ここで知っていただきたいことがあります。
二代目社長が決めきれないのは、決断力や経営者としての能力が不足しているからとは限りません。
会社の中には、組織図だけでは見えない力関係があります。先代との関係が深い古参社員、現場で強い影響力を持つ社員、重要な情報を握っている管理職、社員が密かに頼りにしている人物などです。
形式上のトップは社長でも、実際には別の誰かの意向を確認しなければ物事が進まない会社もあります。この状態では、社長がどれほど真剣に考えても、判断するたびに見えないブレーキがかかります。
会社を変えるために最初に行うべきことは、無理に大きな決断をすることではなく、誰が会社を動かし、どこで意思決定が止まっているのかを把握することです。
社内の力学が見えれば、誰に何を説明するべきか、どの役割を整理するべきか、どこから着手するべきかが分かります。
今日から、会議での発言だけを見るのではなく、「社員は本当は誰の判断を待っているのか」「社長の方針は、どの段階で止まっているのか」を観察してみてください。
決められる社長になるためには、まず決められなくしている会社の構造を知ることが必要です。
本コラムでは、社内の力学を読み解き、二代目社長が自分の意思で会社を動かすための3つのステップを解説します。
1.二代目社長が「決めきれない」のは、決断力がないからではない
二代目社長の中には、重要な経営判断を前にすると、なかなか決断できず、そんな自分を責めてしまう方が少なくありません。
「自分は社長なのに、なぜ決められないのだろう」
「先代なら、もっと早く判断していたはずだ」
「社員から、頼りない社長だと思われているのではないか」
このような不安を抱えながら、何度も会議を開き、社員の意見を聞き、資料を集めているうちに、数週間、場合によっては数か月が過ぎてしまいます。
しかし、二代目社長が決めきれないのは、必ずしも決断力が不足しているからではありません。
二代目社長の判断を難しくしているのは、先代から受け継いだ人間関係、社内の力関係、過去の成功体験、そして「会社を壊してはいけない」という強い責任感です。
創業者である先代は、自分で会社を立ち上げ、自分の判断で人を採用し、取引先を開拓し、組織をつくってきました。ところが二代目社長は、すでに完成した人間関係や慣習の中に入り、その状態を引き継いで経営を始めます。
つまり、同じ「社長」という立場であっても、創業者と二代目では、意思決定の前提が大きく異なるのです。
まず必要なのは、「自分は決断力がない」と責めることではなく、自分の判断を止めているものが何なのかを冷静に見つけることです。
原因が見えれば、対応できます。原因を見ないまま気合いや勢いだけで決めようとすると、社内の反発や実行段階での停滞を招き、かえって自信を失う結果になりかねません。
1.1.社長になっても、実権まで引き継げるとは限らない
事業承継によって代表取締役に就任すると、登記上も組織図上も、二代目社長が会社のトップになります。
しかし、肩書きを引き継いだからといって、会社を動かす力まで自動的に引き継げるとは限りません。
たとえば、先代が会長や相談役として会社に残っている場合、社員は二代目社長の方針を聞きながらも、最後は先代の反応を確認しようとします。
二代目社長が新しい制度を導入しようとしても、
「会長には相談したのですか」
「先代の頃は、そんなやり方ではありませんでした」
「一度、会長にも確認した方がよいのではないでしょうか」
と言われ、判断が止まってしまうことがあります。
また、先代が会社にいなくても、古参社員が強い影響力を持っている場合があります。
・長年、営業を支えてきた社員。
・重要な取引先との関係を一手に担っている社員。
・社内の事情を誰よりも知っている管理部門の責任者。
・先代から厚い信頼を受けてきた役員。
こうした人たちは、組織図上の役職以上に大きな発言力を持っています。
二代目社長が方針を出しても、その社員が納得しなければ現場が動かない。会議では賛成していても、現場に戻ると「しばらく様子を見よう」と指示され、実行が止まる。このようなことは珍しくありません。
会社の中では、役職と実際の影響力が一致しているとは限らないのです。
この状況で、二代目社長が「社長なのだから従ってもらう」と強引に進めれば、一時的には社員を動かせるかもしれません。しかし、表面上は従っていても、裏では反発が広がり、重要な情報が社長に上がらなくなる可能性があります。
だからこそ、最初に確認していただきたいのは、組織図ではありません。
・誰が誰に相談しているのか。
・現場の社員は、最終的に誰の判断を待っているのか。
・重要な情報は、誰に集まっているのか。
・誰の発言によって、会議の空気が変わるのか。
このような「実際の人の動き」を見てください。
今日からできることとして、直近の重要な経営判断を一つ思い出してみましょう。
・その判断は、誰のところで止まったでしょうか。
・誰の承認を待つ状態になったでしょうか。
・社長である自分が決めた後、現場では誰が実行を左右したでしょうか。
社長としての実権を取り戻す第一歩は、誰が会社を実際に動かしているのかを把握することです。
人を排除するためではありません。影響力を持つ人を正しく理解し、その力を会社の将来に向けて使うためです。
1.2.「失敗してはいけない」という重圧が判断を遅らせる
二代目社長の判断を遅らせるもう一つの原因が、「失敗してはいけない」という強い重圧です。
創業者は、自分で会社をつくったため、挑戦することにも失敗することにも、ある意味で慣れています。
・新しい商品が売れなければ、別の商品を考える。
・営業先で断られれば、次の会社へ行く。
・採用がうまくいかなければ、やり方を変える。
失敗を繰り返しながら、会社をつくってきました。
一方、二代目社長は、すでに社員がいて、取引先があり、借入金があり、守るべき信用があります。
そのため、経営判断をするたびに、
「自分の判断で社員の生活を不安定にしてはいけない」
「先代が築いた取引先との関係を壊してはいけない」
「自分の代で業績を悪化させてはいけない」
という思いが強くなります。
これは、責任感があるからこそ生まれる感情です。
しかし、失敗を避けようとするあまり、判断を先延ばしにすると、別の問題が生じます。
・赤字事業から撤退できない。
・成果の出ない社員の配置を変えられない。
・利益率の低い取引を見直せない。
・古い設備や業務の仕組みを変えられない。
その結果、会社の体力は少しずつ失われていきます。
経営では、「決めて失敗するリスク」だけでなく、「決めないことで失うもの」も考えなければなりません。
たとえば、毎月100万円の赤字を出している事業から撤退するかどうかを3か月悩めば、その間にさらに300万円の損失が発生します。
社員の配置転換を半年先送りすれば、成果が出ない状態が半年続くだけでなく、周囲の社員の不満も高まります。
つまり、判断を先送りすることも、一つの経営判断なのです。そして、その判断にも結果と責任が伴います。
「絶対に失敗しない答え」を探し続けるのではなく、「今ある情報で決め、結果を確認し、必要なら修正する」という考え方に切り替えてください。
経営判断は、一度決めたら二度と変更できないものばかりではありません。
・まず3か月試す。
・対象部門を限定して導入する。
・一定の数値を下回ったら見直す。
・責任者と期限を決めて検証する。
このように、判断を小さく区切れば、失敗の影響を抑えながら前に進めます。
今日、社内で先送りになっている問題を一つ書き出してください。
そして、「あと3か月決めなければ、何を失うのか」を数字や事実で考えてみてください。
決めることへの不安だけでなく、決めないことの代償が見えてくるはずです。
1.3.社員の意見を聞くほど、判断の軸が見えなくなる
二代目社長は、先代と比較されることを恐れ、社員の意見を丁寧に聞こうとする傾向があります。
「一方的に決める社長だと思われたくない」
「現場のことは社員の方がよく分かっている」
「皆が納得したうえで進めたい」
この姿勢そのものは、決して間違いではありません。
むしろ、社員の声を聞かずに独断で進めるよりも、はるかに望ましい姿勢です。
しかし、社員の意見をすべて受け入れようとすると、経営判断はできなくなります。
・営業部門は、売上を増やすために価格を下げたいと考えるかもしれません。
・管理部門は、利益率を守るために値引きを減らしたいと考えるでしょう。
・製造部門は、品質を保つために納期を延ばしたいと主張するかもしれません。
・現場は人員を増やしてほしいと言い、経理は人件費を抑えるべきだと考えます。
それぞれの意見は、自分の立場から見れば正しいものです。
問題は、誰が正しいかではありません。社長が、何を優先するかを決められるかどうかです。
社員は、それぞれの担当業務について意見を述べますが、会社全体の将来について最終的な責任を負うのは社長です。
社員の意見を聞くことと、社員に判断を委ねることは違います。
社員に意見を求めるときは、単に「どう思うか」と聞くのではなく、
「この案を実行した場合のメリットとリスクは何か」
「必要な費用と期間はどのくらいか」
「どの数値をもって成功と判断するか」
「実行する場合、誰が責任者になるのか」
まで確認してください。
感想ではなく、判断材料を集めるのです。
そのうえで、会社として何を優先するのかを社長が決めます。
・収益性を優先するのか。
・顧客との長期的な関係を優先するのか。
・社員の成長を優先するのか。
・資金繰りの安定を優先するのか。
すべてを同時に満たせない場合には、優先順位を示す必要があります。
意見をまとめることが社長の仕事ではありません。異なる意見を聞いたうえで、会社が進む方向を決めることが社長の仕事です。
会議を開く前に、社長自身が「今回の判断で、最も重視するものは何か」を一つ決めておきましょう。
それだけでも、社員の意見に振り回されにくくなります。
そして、最終的に決めた後は、結論だけでなく、判断した理由も伝えてください。
「今回は、売上よりも利益率を優先する」
「短期的には負担が増えるが、3年後の事業基盤をつくるために投資する」
「全員が賛成しているわけではないが、資金繰りを守るために撤退する」
このように説明すれば、すべての社員が賛成しなくても、会社としての判断は理解されやすくなります。
二代目社長が目指すべきなのは、誰からも反対されない判断ではありません。
反対意見があっても、判断の根拠を説明し、結果に責任を持てる経営者になることです。
まずは、現在先送りしている案件を一つ選び、社員から集めるべき情報と、社長自身が決めるべきことを分けて書き出してみてください。
その整理をするだけでも、曖昧だった判断の輪郭が見え始めます。
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2.社内の力学を見誤ると、社長の決断は実行されない
社長が方針を決めたにもかかわらず、なぜか現場が動かない。
会議では反対意見も出ず、担当者も「承知しました」と答えていた。それなのに、数週間後に確認すると、ほとんど進んでいない。理由を尋ねても、「現場が忙しかった」「もう少し検討が必要だった」「関係者との調整に時間がかかった」といった説明が返ってきます。
このような経験をした二代目社長は、少なくないのではないでしょうか。
社長としては、方針を説明し、社員の意見も聞き、正式に決定したつもりです。それでも実行されないと、「自分の伝え方が悪かったのだろうか」「もっと強く指示を出すべきだったのか」と悩んでしまいます。
しかし、社長の決断が実行されない原因は、説明不足や指示の弱さだけではありません。
会社の中には、組織図や役職だけでは分からない、人と人とのつながりや影響力があります。
・誰が発言すると会議の空気が変わるのか。
・社員は困ったときに誰へ相談しているのか。
・社長が決めた後、実際には誰の判断を待っているのか。
こうした社内の力学を把握しないまま方針を出しても、決定が現場に届くまでの途中で止まったり、別の意味に変えられたりすることがあります。
経営者が見るべきなのは、誰がどの役職に就いているかだけではありません。誰の言葉によって社員が動き、誰の態度によって実行が止まるのかを見極める必要があります。
社内の力学を理解することは、影響力を持つ社員を排除するためではありません。その力を会社の方針と同じ方向へ向け、社長の決断を実行につなげるために必要なのです。
2.1.役職と影響力は、必ずしも一致していない
多くの会社には、社長、役員、部長、課長といった役職があります。
組織図だけを見れば、誰が誰に指示を出し、誰が責任を負うのかは明確に見えるでしょう。しかし、実際の会社では、組織図どおりに人が動いているとは限りません。
たとえば、営業部長が正式な責任者であっても、長年トップ営業を続けてきた古参社員の発言の方が、若手社員に強い影響を与えていることがあります。
部長が「今月から新しい営業方法に変える」と指示しても、その古参社員が、
「そんな方法では売れない」
「今までのやり方で十分だ」
「しばらく様子を見た方がいい」
と言えば、現場は新しい方法へ切り替わりません。
また、役職を持っていない事務担当者が、社内の情報を最も多く把握していることもあります。
社員の性格、取引先との関係、過去のトラブル、先代の意向などを熟知し、何かを決める際には、誰もがその人へ相談する。形式上は一般社員であっても、実際には大きな影響力を持っているのです。
影響力は、役職から生まれるとは限りません。経験、実績、人脈、情報、信頼関係などから生まれます。
二代目社長が注意しなければならないのは、組織図上の責任者に説明しただけで、現場にも方針が伝わったと思い込むことです。
責任者が賛成していても、現場の実力者が納得していなければ、社員は動きません。
では、社内で誰が実際に影響力を持っているかを、どのように見極めればよいのでしょうか。
まず、会議で発言している人だけを見るのではなく、発言後の周囲の反応を観察してください。
・誰かが話した直後に、社員が一斉にうなずく。
・特定の人が黙っていると、会議全体が結論を出せない。
・正式な責任者が、別の社員の表情を確認してから回答する。
こうした場面には、実際の力関係が表れています。
次に、社員が困ったときの相談先を確認してください。
業務上の問題が起きたとき、直属の上司ではなく、特定の古参社員へ相談しているのであれば、その人は組織図以上の影響力を持っています。
社長が最初に行うべきことは、役職者だけでなく、「社員が本当に頼っている人」を把握することです。
ただし、その人物を見つけたからといって、敵と考えてはいけません。
その人には、社員から信頼される理由があります。経験が豊富なのかもしれません。困ったときに助けてきたのかもしれません。現場の事情を誰よりも理解しているのかもしれません。
その影響力を否定するのではなく、新しい方針を実現するために力を借りることを考えてください。
重要な方針を発表する前に、影響力を持つ人物へ個別に説明し、懸念点を聞く。必要に応じて、役割を与える。実行段階で現場への橋渡しを依頼する。
このような働きかけをすることで、社長の方針が現場に伝わりやすくなります。
2.2.会議で賛成しても、現場では従っていないことがある
会議では、誰も反対しなかった。
全員が「分かりました」と答えた。
それにもかかわらず、現場では従来のやり方が続いている。このような状況は、多くの中小企業で起きています。
社長から見れば、会議で決まったことは、会社としての正式な決定です。しかし、社員にとっては、「社長が言っていたこと」「一応、会議で決まったこと」程度に受け止められている場合があります。
会議の後、現場で次のような会話が交わされていないでしょうか。
「社長はそう言っていたけれど、今までどおりでいい」
「本当に実行するかは、もう少し様子を見よう」
「また方針が変わるかもしれない」
「部長が何も言っていないから、まだ動かなくていい」
表面上は反対していなくても、実際には実行を保留しているのです。
なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。
一つは、過去に社長の方針が途中で変わった経験があるからです。
新しい制度を導入すると発表したものの、古参社員の反対で中止になった。業務改善を始めたものの、忙しさを理由に自然消滅した。責任者を決めたものの、進捗確認が行われなかった。
このようなことが続くと、社員は「すぐに動かなくても、そのうち話がなくなる」と学習します。
もう一つは、会議で反対意見を言いにくい雰囲気があるからです。
社長が熱心に説明しているため、水を差したくない。反対すると評価が下がるかもしれない。自分だけが反対したくない。
そのため、会議では賛成したように見せ、現場に戻ってから実行しないという行動を取ります。
会議で異論が出なかったことと、社員が納得して実行することは、まったく別の問題です。
経営者は、会議で「賛成ですか」と確認するだけでは不十分です。
・実行するために何が必要なのか。
・どのような問題が起こりそうなのか。
・誰がいつまでに何を行うのか。
・実行できない場合、何が障害になるのか。
ここまで確認する必要があります。
たとえば、会議の最後に、担当者へ「来週までに何を行いますか」と尋ねてください。
「検討します」「関係者に伝えます」といった曖昧な回答ではなく、「○月○日までに対象者へ説明する」「来週の会議までに試算を提出する」など、行動が分かる状態にします。
また、決定事項について、期限と担当者を議事録に残し、次回の会議で進捗を確認してください。
社長の決断を実行につなげるためには、「決めたかどうか」ではなく、「誰が、いつまでに、何をするか」まで明確にしなければなりません。
さらに、実行が進まなかった場合、すぐに社員を責めるのではなく、止まった理由を確認してください。
・本人に権限がなかったのか。
・他部署の協力が得られなかったのか。
・古参社員から別の指示が出たのか。
・目的が理解されていなかったのか。
実行が止まった場所を突き止めれば、組織上の問題が見えてきます。
会議の回数を増やすだけでは、会社は動きません。
決定、役割、期限、確認を一つの流れとして運用することが必要です。
2.3.先代の存在が、見えない判断基準になっている
二代目社長が会社を引き継いだ後も、先代の影響が残り続けることがあります。
特に、先代が会長や相談役として会社に残っている場合、社員は二代目社長だけでなく、先代の意向も気にしながら行動します。
二代目社長が方針を決めても、
「会長はご存じですか」
「先代にも確認しておいた方がよいのではないでしょうか」
「以前は、会長が直接決めていました」
と言われれば、判断が止まります。
さらに難しいのは、先代が何も言っていなくても、社員が先代の考えを推測して行動することです。
「先代なら、この取引先は切らない」
「先代なら、社員を異動させない」
「先代なら、借入をしてまで投資しない」
このように、先代の過去の判断が、現在も社内の基準として残っているのです。
先代が会社にいなくても、「先代ならどうするか」という考え方が、社員の中に残っていることがあります。
もちろん、先代の考え方や経験には、学ぶべきものが数多くあります。会社が今日まで続いてきたのは、先代の判断と努力があったからです。
しかし、市場環境、顧客ニーズ、人材、資金調達環境が変わっている中で、過去と同じ判断が常に正しいとは限りません。
先代の判断をそのまま続けるだけでは、会社は過去の延長線上から抜け出せなくなります。
一方で、二代目社長が先代のやり方をすべて否定すると、古参社員から強い反発を受けます。
社員にとって、先代のやり方は、自分たちが長年努力してきた証でもあるからです。先代を否定されることは、自分たちの過去まで否定されたように感じられます。
したがって、二代目社長に必要なのは、先代の経営を全面的に肯定することでも、全面的に否定することでもありません。
・何を残すのか。
・何を変えるのか。
・なぜ、今変える必要があるのか。
これらを整理し、自分の言葉で説明することです。
先代を尊重することと、先代と同じ判断を続けることは別です。これからの会社について最終的に決めるのは、現在の社長でなければなりません。
まず、先代から引き継いだ経営上の慣習を三つ書き出してみてください。
そして、それぞれについて、
・今も続ける理由は何か。
・現在の環境に合っているか。
・続けた場合と変えた場合に、どのような影響があるか。
を考えてみましょう。
先代がいる場合には、役割と権限について、曖昧なままにしないことも大切です。
・どの分野について先代へ相談するのか。
・誰が最終決定を行うのか。
・先代から社員への直接指示をどのように扱うのか。
これらを話し合い、社員にも共有してください。
先代との関係を整理せずに、社員へ「私の指示に従ってほしい」と言っても、社員はどちらを優先すべきか判断できません。
社内の力学を整理するとは、誰かを追い出したり、権力を奪ったりすることではありません。
誰が意見を述べ、誰が決め、誰が実行するのかを明確にし、会社の意思決定を正常な状態へ戻すことです。
社長の方針が実行されないと感じたら、社員のやる気だけを問題にしないでください。
・役職と影響力が一致しているか。
・会議の決定が行動まで落とし込まれているか。
・先代の存在が別の判断基準になっていないか。
この三つを確認するだけでも、これまで見えなかった停滞の原因が見えてきます。
そして、原因が見えたら、一つずつ整理してください。
・影響力を持つ社員と対話する。
・担当者と期限を明確にする。
・先代との役割分担を決める。
社長の決断は、会議で宣言しただけでは会社の決定になりません。現場で実行され、結果が確認されて初めて、会社を動かす決断になります。
まずは、直近で決めたにもかかわらず進んでいない案件を一つ選び、どこで止まっているのかを確認してみてください。
そこに、社内の力学を読み解くための具体的な手がかりがあります。
3.ステップ1――誰が会社を動かしているのかを可視化する
二代目社長が自分の意思で会社を動かそうとするとき、最初に行うべきことは、大きな方針を打ち出すことでも、組織を一気に変えることでもありません。
まず必要なのは、社内で実際に誰が人を動かし、誰の判断によって物事が進み、どこで意思決定が止まっているのかを把握することです。
多くの経営者は、会社の組織図を見れば、誰が責任者で、誰が誰に指示を出すのかは分かると考えます。
しかし、実際の会社は、組織図どおりに動いているとは限りません。
営業部長よりも、長年トップセールスを続けてきた古参社員の言葉の方が、現場に強い影響を与えていることがあります。
管理部長ではなく、社内の情報を最も多く持つ経理担当者に、社員が相談を持ちかけていることもあります。
役員会では社長が最終判断をしているように見えても、実際には会長や創業メンバーの意向を確認しなければ、誰も動かない会社もあります。
このような状態で、組織図だけを見て指示を出しても、現場では実行されません。
むしろ、社長が影響力を持つ人物を理解しないまま改革を進めると、表面上は賛成されても、現場では静かな抵抗が起きる可能性があります。
会社を動かすためには、正式な役職ではなく、実際に人・情報・判断がどのように流れているのかを見える状態にしなければなりません。
ここで大切なのは、影響力を持つ社員を見つけて排除することではありません。
なぜ、その人に影響力が集まっているのかを理解し、その力を会社の将来に向けて活用することです。
そのためには、「影響力の地図」をつくり、意思決定が止まる場所を確認し、反対意見の裏にある事情を読み取る必要があります。
3.1.組織図ではなく「影響力の地図」をつくる
組織図は、会社の正式な命令系統を示すものです。
社長の下に役員がいて、その下に部長、課長、担当者が配置されている。誰がどの部署を管理し、誰が誰に報告するかが示されています。
もちろん、組織図は必要です。
しかし、組織図だけでは、社員が実際に誰を信頼し、誰の意見を重視し、誰の顔色を見て行動しているのかまでは分かりません。
たとえば、営業部長が新しい営業方針を説明しても、現場の社員が古参営業社員に、
「本当にこのやり方で進めてよいのでしょうか」
と確認しているのであれば、実際に影響力を持っているのは、その古参営業社員です。
社長が業務改善を指示しても、担当者が先代の意向を確認してからでなければ動かないのであれば、最終的な判断基準は現在の社長ではなく、先代にあります。
また、役職を持たない事務担当者に、社員からさまざまな相談が集まっていることもあります。
その人は、人間関係、過去の経緯、取引先の事情、先代の考え方などを詳しく知っているため、社内では実質的な調整役になっているのです。
影響力は、役職だけでなく、経験、実績、情報、人脈、信頼関係から生まれます。
そこで、経営者には、組織図とは別に「影響力の地図」をつくっていただきたいのです。
難しい資料を作成する必要はありません。
紙の中央に、重要な経営課題を書いてください。
たとえば、
「新しい営業方針の導入」
「不採算事業からの撤退」
「古参社員の役割変更」
「評価制度の見直し」
など、現在進めたい課題を一つ選びます。
その周りに、その課題に関係する人物の名前を書き出します。
そして、次のことを確認してください。
・誰が最終的な情報を持っているのか。
・誰の賛成がなければ現場が動かないのか。
・誰が反対すると、ほかの社員も慎重になるのか。
・誰が社員同士の意見をまとめているのか。
・誰が先代と最も近い関係にあるのか。
これを線で結んでいくと、組織図には表れない関係が見えてきます。
経営者が把握すべきなのは、役職者の一覧ではなく、「誰の言葉によって、誰が動くのか」という実際のつながりです。
たとえば、部長へ説明しただけでは現場が動かないのであれば、現場で影響力を持つ社員にも事前に説明する必要があります。
一方で、特定の社員に情報や判断が集中しているのであれば、その状態を放置してはいけません。
その人が休んだり退職したりすれば、会社の業務が止まる可能性があるからです。
影響力の地図をつくることで、協力を求めるべき人物だけでなく、会社が抱える属人化の危険も見えてきます。
今日、すべての社員を分析する必要はありません。
まずは、現在最も進めたい課題を一つ選び、関係者を五人程度書き出してみてください。
そして、「この人は誰の意見を気にしているか」を考えるだけでも、会社の実際の力関係が見え始めます。
3.2.意思決定が止まる場所を確認する
影響力の地図をつくったら、次に行うことは、社長の意思決定がどこで止まっているのかを確認することです。
社長が会議で方針を決めても、その方針がそのまま実行まで進むとは限りません。
社長から役員へ伝わり、役員から部長へ伝わり、部長から現場責任者へ伝わる。
その途中で、内容が曖昧になったり、優先順位が下がったり、誰かの判断で保留にされたりすることがあります。
たとえば、社長が「来月から値引きを減らす」と決めたとします。
営業部長は理解していても、現場の営業担当者が、
「この取引先だけは例外にしてほしい」
「売上が下がるのが怖い」
「以前からこの条件で取引している」
と考え、従来どおりの値引きを続けているかもしれません。
また、部長が社長の方針に納得しておらず、現場へ積極的に伝えていない場合もあります。
社長には「進めています」と報告しながら、実際には現場への説明が行われていないこともあります。
経営者は、決定事項が伝わったかどうかではなく、どの段階まで実行されているかを確認しなければなりません。
まず、直近で決めたにもかかわらず、進んでいない案件を一つ選んでください。
そして、次の順番で確認します。
・誰が決定内容を受け取ったのか。
・その人は、次に誰へ伝えたのか。
・誰が実行責任者になったのか。
・実行に必要な権限や予算は与えられていたか。
・どの時点から進捗が止まったのか。
この確認を行うと、社員のやる気ではなく、仕組み上の問題が見えてくることがあります。
たとえば、担当者は実行したくても、部長の承認がなければ動けなかったのかもしれません。
複数の部署が関係しているにもかかわらず、責任者が決まっていなかったのかもしれません。
先代から別の指示が出ていたため、どちらに従うべきか分からなかった可能性もあります。
意思決定が止まったときに確認すべきなのは、「誰が悪いのか」ではなく、「どの段階で、何が不足して止まったのか」です。
原因が分かれば、対策を取れます。
・権限が不足しているのであれば、権限を与える。
・役割が曖昧であれば、責任者を決める。
・目的が伝わっていないのであれば、改めて説明する。
・先代との指示が重なっているのであれば、役割分担を整理する。
しかし、原因を確認せずに「なぜやっていないのか」と叱るだけでは、社員は報告を避けるようになります。
その結果、社長には悪い情報が上がらなくなり、問題の発見がさらに遅れます。
会議では、結果だけでなく、止まっている理由も報告させてください。
たとえば、
「予定どおり進んでいるか」
「何が障害になっているか」
「誰の協力が必要か」
「社長が判断すべきことは何か」
を定期的に確認します。
さらに、「進んでいません」という報告を責めないことも重要です。
問題が小さい段階で報告してもらえれば、修正できます。
報告が遅れ、損失が大きくなってから発覚する方が、会社にとっては深刻です。
まずは、今週中に、進んでいない案件を一件選び、担当者と15分だけ話す時間を設けてください。
その際、「なぜできていないのか」と問い詰めるのではなく、「どこから止まっているのか」と尋ねてみましょう。
質問を変えるだけで、これまで見えなかった障害が見つかることがあります。
3.3.反対意見の裏にある事情を読み取る
社長が新しい方針を示したとき、反対する社員が現れることがあります。
二代目社長にとって、古参社員からの反対は特に大きな負担です。
「自分を社長として認めていないのではないか」
「先代の方がよかったと思っているのではないか」
「改革を邪魔しようとしているのではないか」
と感じ、感情的になってしまうこともあるでしょう。
しかし、反対意見をすべて抵抗や反抗として受け取ると、会社にとって重要な情報を見落とします。
反対の背景には、さまざまな事情があります。
・新しい制度によって、自分の役割がなくなることへの不安。
・長年続けてきた仕事を否定されたと感じる寂しさ。
・新しい方法についていけるか分からない恐れ。
・失敗したときに、自分だけが責任を負わされるのではないかという警戒。
・現場の実情を知らないまま、社長が決めたのではないかという不信感。
社員が反対しているのは、方針そのものではなく、その方針によって自分がどうなるのか分からないからかもしれません。
たとえば、ベテラン社員が新しい営業管理システムの導入に反対しているとします。
表面上は、「入力作業が増える」「今の方法で問題ない」と主張しているかもしれません。
しかし、本当は、これまで自分の経験や記憶に頼って管理してきた情報が共有されることで、自分の存在価値が下がると感じている可能性があります。
また、部署の再編に反対する部長は、単に変化を嫌っているのではなく、自分が育ててきた部下と離れることや、権限が縮小することに不安を感じているかもしれません。
その事情を理解しないまま、「会社の決定だから従ってほしい」と押し切れば、表面上は従っても、実行段階で協力を得られなくなります。
そこで、反対意見が出たときには、すぐに説得しようとせず、次のことを尋ねてください。
「この方針で、最も心配していることは何ですか」
「現場では、どのような問題が起こると思いますか」
「実行するために、何が必要ですか」
「あなた自身の役割について、どのような不安がありますか」
この質問によって、反対の裏側にある事情が見えてきます。
反対意見は、改革を止めるための言葉とは限りません。経営者がまだ把握していないリスクや不安を知らせる情報でもあります。
もちろん、すべての反対意見を受け入れる必要はありません。
社員の不安を聞いたうえで、それでも会社として必要な判断であれば、実行するべきです。
ただし、その際には、
・なぜ変える必要があるのか。
・何を守るための判断なのか。
・本人にどのような役割を期待しているのか。
・会社としてどのような支援を行うのか。
を丁寧に説明してください。
たとえば、新しい仕組みについていけるか不安な社員には、研修や移行期間を設けることができます。
役割がなくなると心配している古参社員には、これまでの経験を生かせる新しい役割を提示できるかもしれません。
責任を負わされることを恐れている責任者には、どこまでが本人の責任で、どこからが社長の責任なのかを明確にできます。
反対意見の裏にある事情を理解することは、社員の言いなりになることではありません。
社員の不安を把握したうえで、経営者が必要な判断を下し、実行できる条件を整えることです。
今日から、反対する社員を「協力しない人」と決めつけるのをやめてみてください。
まず一人だけ選び、個別に話を聞いてみましょう。
会議の場では言えなかった本音が出てくるかもしれません。
そして、その本音の中に、改革を実行するために経営者が整えるべき条件が隠れていることがあります。
誰が会社を動かしているのかを可視化する目的は、力を奪うことではありません。人の影響力、意思決定の流れ、反対の背景を理解し、会社の力を同じ方向へ向けることです。
まずは、組織図とは別に影響力の地図を一枚つくってください。
次に、進んでいない案件がどこで止まっているかを確認してください。
そして、反対している社員の話を一度、結論を急がずに聞いてみてください。
この三つの行動を始めるだけでも、これまで見えなかった社内の力学が見え始めます。
会社の実際の動きを把握できれば、二代目社長は、誰にどのように働きかけ、どこを整えれば会社が前へ進むのかを判断できるようになるのです。
4.ステップ2――経営判断の基準と責任の所在を明確にする
社内の力学を把握し、誰が実際に影響力を持っているのかが見えてきたら、次に取り組むべきことは、経営判断の基準と責任の所在を明確にすることです。
二代目社長が決めきれない会社では、意見が多いこと自体が問題なのではありません。
問題なのは、意見が対立したときに、何を基準に決めるのかが定まっていないことです。
・営業部門は売上を増やしたい。
・管理部門は利益率を守りたい。
・製造部門は品質を優先したい。
・古参社員は従来のやり方を続けたい。
・若手社員は新しい仕組みを導入したい。
それぞれの意見には、それぞれの立場から見た正しさがあります。
だからこそ、社長が「誰の意見を採用するべきか」と考え始めると、判断は難しくなります。誰かの意見を採用すれば、別の誰かを否定したように見えるからです。
その結果、全員が納得する案を探し続け、会議を何度も重ねることになります。しかし、立場が違えば、すべての人が完全に納得する案は簡単には見つかりません。
経営判断に必要なのは、全員の意見を一つにまとめることではなく、会社として何を優先するのかを明確にすることです。
さらに、方針を決めても、誰が実行し、誰が進捗を管理し、最終的に誰が責任を負うのかが曖昧であれば、会社は動きません。
「皆で協力して進めよう」
「現場で話し合って決めてほしい」
「担当部門で対応してください」
このような言い方は、一見すると社員を尊重しているように見えます。しかし、誰が最終判断をするのかが分からなければ、社員は互いの出方を見ながら動かなくなります。
社長の役割は、すべてを自分一人で考えることではありません。何を基準に決めるのかを示し、誰が決め、誰が実行し、誰が責任を負うのかを明確にすることです。
経営判断の基準と責任の所在が整理されると、社員は迷いにくくなります。社長自身も、周囲の意見に振り回されることなく、自分の言葉で判断を説明できるようになります。
4.1.「誰の意見が正しいか」ではなく「何を基準に決めるか」
社内で意見が対立したとき、多くの経営者は「どちらの意見が正しいのか」を考えます。
しかし、経営においては、どちらも正しいことがあります。
たとえば、営業部門が「値下げをしなければ、競合他社に受注を奪われる」と主張しているとします。
一方、経理部門は「これ以上値下げをすれば、利益が残らず、資金繰りが悪化する」と反対します。
・営業部門は売上の観点から正しい。
・経理部門は利益と資金繰りの観点から正しい。
この場合、どちらかの担当者が間違っているわけではありません。
社長が決めるべきなのは、「営業と経理のどちらを支持するか」ではなく、「今の会社は、売上と利益のどちらを優先すべき状況なのか」ということです。
資金繰りに余裕があり、新規顧客との取引を増やしたい局面であれば、一定期間は売上を優先する判断もあるでしょう。
反対に、売上は伸びていても利益が残らず、借入金の返済が重くなっている会社であれば、受注を減らしてでも利益率を守る判断が必要かもしれません。
経営判断は、人ではなく、会社の状況と将来の方向性を基準に行うものです。
判断基準としては、次のような項目が考えられます。
・会社の理念に合っているか。
・顧客にどのような価値を提供できるか。
・利益と資金繰りにどのような影響があるか。
・社員の負担は許容できる範囲か。
・将来の事業基盤につながるか。
・想定されるリスクに耐えられるか。
すべての項目を同時に満たせるとは限りません。だからこそ、今回の判断で最も重視する項目を決める必要があります。
たとえば、新規事業への投資を検討する場合には、
「今期の利益を守ること」
「3年後の売上の柱をつくること」
「既存事業との相乗効果を生み出すこと」
のどれを最優先にするのかを決めます。
最優先事項が決まっていれば、社員の意見を聞いたときにも、判断しやすくなります。
「良い案かどうか」だけではなく、「今回の目的に合っているか」で判断できるからです。
意見が割れたときに社長が示すべきものは、誰を支持するかではありません。会社として何を守り、何を実現するために決めるのかという優先順位です。
この優先順位を示さずに結論だけを伝えると、採用されなかった側は「自分の意見を否定された」と感じます。
しかし、
「今回は資金繰りを最優先にする」
「短期的な利益よりも、将来の事業基盤づくりを優先する」
「売上を追うのではなく、利益の残る取引に集中する」
と説明すれば、すべての社員が賛成しなくても、なぜその判断になったのかは理解しやすくなります。
今日から、重要な案件を検討するときには、会議を開く前に「今回、最も優先する判断基準は何か」を一つ書き出してください。
その一文があるだけで、議論が人の好き嫌いや声の大きさに左右されにくくなります。
4.2.相談することと、決定を委ねることを分ける
社長がすべての情報を持っているわけではありません。
現場のことは現場社員の方が詳しく、専門分野については担当者や外部専門家の方が深い知識を持っています。
そのため、社長が重要な判断をする前に、社員や専門家へ相談することは必要です。
しかし、ここで注意しなければならないのは、相談することと、決定を委ねることを混同しないことです。
二代目社長の中には、失敗への不安から、多くの人に相談を重ねる方がいます。
・古参社員に相談する。
・顧問税理士に相談する。
・取引銀行に相談する。
・同業者に相談する。
・家族や親族に相談する。
さまざまな意見を聞くほど、判断材料は増えます。しかし、それぞれの立場や経験が違うため、意見が一致するとは限りません。
・銀行は返済の安全性を重視します。
・税理士は税務や会計上の適切さを重視します。
・社員は現場の負担や自分の役割を重視します。
・先代はこれまでの経験や人間関係を重視します。
誰かが間違っているのではありません。見ている範囲と責任が違うのです。
相談相手は判断材料を提供してくれますが、会社の将来について最終的な責任を負うわけではありません。
相談を重ねるうちに、社長が「皆さんはどう思いますか」と問いかけ、最も多かった意見を採用するようになることがあります。
一見すると民主的ですが、経営判断を多数決で決めることには危険があります。
社員の多くが変化を望まなければ、必要な改革でも否決されます。短期的に負担が増える投資や、痛みを伴う事業の見直しは、賛成を得にくいからです。
また、「皆が賛成したから決めた」という状態では、結果が悪かったときに責任の所在が曖昧になります。
社長は「みんなの意見を聞いた」と考え、社員は「最終的に決めたのは社長だ」と考えます。
この食い違いが、不信感を生みます。
意見は広く集めても、決定まで周囲に預けてはいけません。最終的に選び、説明し、結果を引き受けるのは社長です。
相談するときには、質問の仕方も変えてください。
「この案でいいと思いますか」と聞くと、賛成か反対かという感想が返ってきます。
それよりも、
「この案を実行した場合の最大のリスクは何ですか」
「必要な人員と費用はどれくらいですか」
「現場ではどのような反発が予想されますか」
「別の方法があるとすれば、どのような案ですか」
「失敗するとしたら、どこで失敗すると思いますか」
と尋ねてください。
このように聞けば、相談相手から判断に必要な情報を引き出しやすくなります。
そして、意見を聞いた後は、
「意見を踏まえたうえで、最終的にはこの方針で進めます」
と明確に伝えます。
採用しなかった意見についても、
「今回は資金繰りを優先するため、こちらの案を選びます」
「懸念点は理解しているので、3か月後に見直します」
と説明すれば、相手は自分の意見が無視されたとは感じにくくなります。
まずは、今抱えている経営課題について、誰に何を相談するのかを整理してください。
相談相手ごとに、
「事実を確認したいのか」
「リスクを知りたいのか」
「代替案を出してほしいのか」
を決めてから話を聞くことで、相談が判断の先延ばしになりにくくなります。
4.3.決定者・実行者・責任者を曖昧にしない
社長が方針を決めても、現場で実行されなければ、経営判断にはなりません。
ところが、中小企業では、決めた後の役割分担が曖昧なままになっていることがよくあります。
「営業部で進めてください」
「関係者で調整してください」
「皆で協力して対応しましょう」
こうした指示では、誰が最初に動くのかが分かりません。
営業部長は課長が動くと思い、課長は担当者が進めると思い、担当者は上司から具体的な指示が出るのを待つ。
その結果、誰も動かないまま時間が過ぎます。
「部署が担当する」という状態と、「特定の誰かが責任を持つ」という状態は違います。
一つの案件について、最低でも次の役割を整理する必要があります。
・誰が最終的に決めるのか。
・誰が実際の作業を進めるのか。
・誰が進捗を確認するのか。
・問題が起きたとき、誰が対応を判断するのか。
・結果について、誰が説明責任を負うのか。
小さな会社では、一人が複数の役割を担うこともあります。それでも、役割を言葉にして確認することが重要です。
たとえば、新しい顧客管理システムを導入する場合、社長が導入の最終決定を行い、営業部長が実行責任者となり、担当者がデータ移行や操作説明を行う。進捗は毎週の会議で営業部長が報告し、予算超過や方針変更が必要な場合は社長が判断する。
ここまで明確になっていれば、社員は自分が何をすべきか理解できます。
反対に、「営業部で導入を進める」としか決まっていなければ、問題が起きるたびに判断が止まります。
特に注意したいのが、実行者に責任だけを負わせ、必要な権限を与えていない状態です。
・値引きを減らすよう指示しているのに、重要顧客については社長や古参社員が例外を認める。
・採用担当者に人材確保を任せているのに、給与条件を見直す権限がない。
・部長に部門改革を任せているのに、配置転換や評価について決められない。
この状態では、担当者は責任を負わされる一方で、必要な判断ができません。
責任を求めるのであれば、その責任を果たすために必要な権限と資源も渡さなければなりません。
また、実行責任者を決めたからといって、社長の責任がなくなるわけではありません。
社員に任せることと、丸投げすることは違います。
社長は、必要な支援を行い、重要な問題が起きたときに判断し、結果について最終的な責任を負います。
社員に任せるとは、責任を手放すことではありません。役割と権限を渡したうえで、社長が最終責任を引き受けることです。
実行を確実にするためには、期限と確認の場も決めてください。
「なるべく早く」ではなく、「○月○日までに」。
「状況を見て報告」ではなく、「毎週月曜日に進捗を報告」。
「問題があれば相談」ではなく、「予算を○万円超える場合は社長へ相談」。
このように具体的に決めることで、社員は迷わず動けます。
今日、社内で進行中の案件を一つ選び、紙に次の5項目を書き出してみてください。
・決定者は誰か。
・実行者は誰か。
・進捗管理者は誰か。
・期限はいつか。
・問題が起きたとき、誰が何を判断するか。
一つでも答えられない項目があれば、その案件は途中で止まる可能性があります。
経営判断の基準と責任の所在を明確にすることは、社長の権力を強めるためではありません。
社員が安心して動ける状態をつくるためです。
何を基準に判断するのかが分かり、誰が決めるのかが明確で、自分の役割と権限が整理されていれば、社員は余計な忖度をせずに行動できます。
会社が動かないとき、社員の能力や意欲だけを疑わないでください。判断基準と役割分担が曖昧なために、動けなくなっている可能性があります。
まずは、次の経営会議で一つの案件を取り上げ、
「今回、何を最優先に判断するのか」
「誰が最終決定するのか」
「誰がいつまでに実行するのか」
「どの時点で社長へ報告するのか」
を明確にしてください。
経営判断は、社長が結論を出した瞬間に終わるのではありません。判断基準、役割、権限、期限を明確にし、現場の行動へ落とし込んで初めて、会社を動かす力になります。
5.ステップ3――小さな決断を積み重ね、社長の決定権を取り戻す
社内の力学を把握し、経営判断の基準と責任の所在を明確にしたら、次に必要なのは、実際に決めて動かすことです。
ここまで読んで、「会社の問題は分かった。あとは一気に改革しなければならない」と考える方もいるかもしれません。
しかし、二代目社長が社内の決定権を取り戻そうとするとき、最初から大きな改革に踏み切るのは得策とは限りません。
・役員体制を大幅に変更する。
・古参社員の権限を一気に縮小する。
・評価制度や給与制度を全面的に変える。
・先代のやり方をすべて見直す。
こうした改革は、必要な場合もあります。
ただし、社長の方針がまだ社内に十分浸透しておらず、社員が「この社長の判断は本当に実行されるのか」と見ている段階で大改革を始めると、強い反発を招くことがあります。
社員は、改革の内容だけを見ているのではありません。
・社長が最後までやり切れるのか。
・反対されたときに方針を変えないか。
・特定の社員だけを例外扱いしないか。
・結果が悪かったときに、社員へ責任を押しつけないか。
こうした点を見ています。
社長の決定権は、肩書きによって自動的に認められるものではありません。決めたことを実行し、結果を確認し、責任を引き受ける姿勢を積み重ねることで、少しずつ社内に認められていくものです。
そのため、最初に目指すべきなのは、会社を一度に変えることではありません。
小さくても、会社にとって意味のある課題を一つ選び、社長が決め、社員へ説明し、期限を定めて実行し、その結果を確認することです。
この一連の流れを繰り返すことで、社員の中に、
「今回は本当に進む」
「この社長は、決めた後も確認する」
「理由を説明したうえで判断している」
「問題があれば修正してくれる」
という認識が生まれます。
二代目社長が取り戻すべきものは、社員を従わせるための権力ではありません。自分の判断によって会社を前へ進め、その結果に責任を持つ経営者としての信頼です。
その信頼は、一度の大きな決断ではなく、小さな決断の積み重ねによってつくられます。
5.1.最初から大改革をしようとしない
二代目社長が会社を引き継ぐと、さまざまな問題が一度に目に入ります。
・会議が形骸化している。
・採算の悪い取引が残っている。
・古参社員に業務や情報が集中している。
・若手社員が育っていない。
・評価基準が曖昧である。
・先代の判断を待つ習慣が残っている。
これらを見れば、「早く全部変えなければならない」と考えるのも無理はありません。
しかし、問題を同時に解決しようとすると、現場の負担が大きくなり、社員は何を優先すればよいのか分からなくなります。
さらに、複数の改革を一度に始めると、どの施策によって成果が出たのか、なぜ失敗したのかも分かりにくくなります。
その結果、改革そのものが途中で止まり、社員から「また社長が新しいことを始めたが、結局続かなかった」と受け取られてしまいます。
大きな改革を成功させるためにも、最初は小さな範囲で、確実に実行できる課題から始める必要があります。
たとえば、会社全体の評価制度を変える前に、一つの部署で目標管理の方法を試してみる。
すべての会議を見直す前に、毎週の営業会議だけ、決定事項・担当者・期限を明確にする。
全取引先の価格を見直す前に、採算の悪い上位10社だけを対象に、利益率を確認する。
全社員の役割を変更する前に、特定の業務について、誰が決め、誰が実行するのかを整理する。
このように範囲を絞れば、社員への説明もしやすく、実行状況も確認しやすくなります。
また、経営者自身も、決めたことを最後まで追いかけることができます。
ここで大切なのは、「簡単なことから始める」という意味ではありません。
小さくても、会社の停滞を生み出している部分に手を入れることです。
たとえば、毎回の会議で結論が曖昧になっているなら、次回から必ず「誰が、いつまでに、何を行うか」を決める。
社長の承認待ちで業務が止まるなら、一定金額までの決裁権を部長へ渡す。
古参社員が情報を抱えているなら、まず一つの取引先について、担当者と情報を共有する仕組みをつくる。
こうした改善は、規模は小さくても、会社の動き方を変える効果があります。
最初の一歩で重要なのは、目立つ改革を行うことではありません。「社長が決めたことが、現場で実行され、結果まで確認された」という実績を一つつくることです。
今日、社内で止まっている案件を三つ書き出してみてください。
その中から、
・影響する社員が少ない。
・1か月以内に結果を確認できる。
・会社にとって意味がある。
・社長自身が進捗を追える。
この条件に当てはまるものを一つ選びます。
それが、決定権を取り戻す最初の課題です。
5.2.決めた理由を、自分の言葉で説明する
社長が何かを決めたとき、社員が知りたいのは結論だけではありません。
・なぜ、その決定をしたのか。
・何を変えようとしているのか。
・会社はどこへ向かおうとしているのか。
・自分たちに何を求めているのか。
こうした背景を知りたいのです。
しかし、二代目社長の中には、自分の判断に自信が持てず、説明を短く済ませてしまう方がいます。
「社長として決めました」
「経営上必要だからです」
「今後はこの方針で進めます」
これだけでは、社員は納得できません。
一方で、社員の反発を恐れるあまり、説明を長くしすぎて、結局何を決めたのか分からなくなることもあります。
大切なのは、すべての社員を説得することではありません。
何を守るために、何を変え、何を目指しているのかを、社長自身の言葉で明確に伝えることです。
たとえば、不採算取引の条件を見直すのであれば、
「売上を減らしたいわけではない。利益が残らない取引を続けることで、社員の給与や将来の投資に使える資金が失われている。会社を長く続けるために、利益の残る取引へ変えていきたい」
と説明できます。
会議の進め方を変えるのであれば、
「これまでの会議では意見交換で終わり、決めたことが実行されないことが多かった。これからは、会議の最後に担当者と期限を決め、次回に進捗を確認する。誰かを責めるためではなく、決めたことを確実に前へ進めるために行う」
と伝えられます。
古参社員の役割を変更する場合にも、
「これまでの貢献を否定するためではない。会社が次の世代へ知識を引き継ぐために、経験を若手へ伝える役割を担ってほしい」
と説明できます。
このように、決定の目的と背景を伝えれば、社員がすぐに賛成しなくても、社長の考えは理解しやすくなります。
社員の納得とは、全員が賛成することではありません。社長が何を考え、何を基準に決めたのかが分かることです。
説明するときには、次の三つを意識してください。
まず、「現在、何が問題なのか」を伝えます。
次に、「なぜ今、変える必要があるのか」を説明します。
最後に、「何を実行し、どのような状態を目指すのか」を示します。
この順番で話せば、社員は判断の背景を理解しやすくなります。
また、先代と異なる判断をするときには、先代を否定する表現を避けることも重要です。
「今までのやり方は間違っていた」ではなく、
「これまでのやり方で会社は成長してきた。しかし、顧客や市場が変化しているため、今後はこの部分を変える必要がある」
と伝えてください。
先代の功績を認めながら、現在の環境に合わせて判断する姿勢を示すことで、古参社員も受け入れやすくなります。
社長の決定に力を持たせるのは、肩書きや強い口調ではありません。「なぜ、この判断をするのか」を、自分の責任で語る言葉です。
次に何かを決めるときには、発表する前に、紙へ三つだけ書いてください。
・今、何が問題なのか。
・なぜ、今変えるのか。
・この決定によって、何を実現したいのか。
その三つを、自分の言葉で社員へ伝えるだけでも、決定の伝わり方は大きく変わります。
5.3.決めた後に検証し、必要なら修正する
経営者が決断をためらう理由の一つに、「一度決めたら、途中で変えてはいけない」という思い込みがあります。
方針を変えれば、社員から「社長は判断がぶれている」と思われるのではないか。
先代や古参社員から、「だから言っただろう」と言われるのではないか。
その不安から、最初から絶対に間違いのない答えを探そうとします。
しかし、経営環境が変化する中で、最初から完璧な判断をすることはできません。
必要なのは、決めたことを放置せず、結果を確認することです。
経営者の責任は、最初から正解を当てることではありません。決めた後の変化を見続け、必要な修正を行うことです。
たとえば、新しい営業方法を導入したなら、
・訪問件数は増えたか。
・成約率は上がったか。
・利益率は維持できているか。
・営業担当者の負担は増えすぎていないか。
を確認します。
値上げを行ったなら、
・失注はどの程度発生したか。
・粗利益は改善したか。
・既存顧客からどのような反応があったか。
・価格以外の価値を説明できているか。
を見ます。
人事配置を変更したなら、
・本人の成果はどう変わったか。
・周囲の業務負担はどうなったか。
・情報共有が進んだか。
・新しい問題が生まれていないか。
を確認します。
決めた時点で、何をもって成果とするのか、いつ検証するのかを決めておくと、感情ではなく事実で判断できます。
たとえば、
「3か月間試し、粗利益率が2ポイント以上改善しなければ見直す」
「1か月後に社員の業務時間を確認する」
「6か月以内に新規顧客を10社獲得できなければ、営業方法を再検討する」
というように、期限と数値を設定します。
これにより、社員も「いつまで、この方針を続けるのか」「何を見て判断するのか」を理解できます。
検証の基準を決めずに始めると、成果が出ているのか分からず、賛成派と反対派の感想だけがぶつかることになります。
また、結果が想定どおりでなかった場合には、決定そのものが間違っていたのか、実行方法に問題があったのかを分けて考える必要があります。
・方針は正しかったが、社員への説明が不足していた。
・担当者に必要な権限がなかった。
・期限が短すぎた。
・顧客への伝え方が適切でなかった。
このような場合には、方針を撤回するのではなく、実行方法を修正すればよいのです。
反対に、前提となる市場環境が変わったり、想定以上の損失が発生したりした場合には、方針そのものを見直す必要があります。
ここで重要なのは、修正の理由を社員へ説明することです。
「うまくいかなかったので、やめます」ではなく、
「3か月実施した結果、売上は増えたが、想定以上に利益率が低下した。そのため、方針の目的は維持しつつ、対象顧客を絞る方法へ変更する」
と伝えてください。
この説明があれば、社員は方針変更を迷走ではなく、検証に基づく修正として受け止めやすくなります。
一度決めたことを変えない社長が信頼されるのではありません。結果から逃げず、事実を確認し、必要な修正を責任を持って行う社長が信頼されるのです。
まず、現在進めている施策を一つ選び、
・何を成果とするのか。
・いつ確認するのか。
・どの状態になったら続けるのか。
・どの状態になったら修正するのか。
を決めてください。
決めた後に検証する習慣が身につけば、社長は「失敗したらどうしよう」と過度に恐れなくなります。
すべてを一度で正しく決める必要がないと分かるからです。
二代目社長が決定権を取り戻すために必要なのは、大きな声で社員を従わせることではありません。
・小さな課題を選び、判断基準を示して決める。
・決めた理由を、自分の言葉で説明する。
・実行した結果を確認し、必要なら修正する。
この流れを繰り返すことです。
小さな決断を最後までやり切るたびに、社長自身の判断力が磨かれ、社員の受け止め方も変わっていきます。
最初から完璧な経営者である必要はありません。
しかし、決めずに先送りし続ければ、会社は変わりません。
社長の決定権は、誰かから返してもらうものではありません。自ら決め、実行し、検証し、責任を引き受ける行動によって、少しずつ取り戻していくものです。
まずは今週、1か月以内に結果を確認できる課題を一つ選んでください。
そして、決めるだけで終わらせず、理由を説明し、担当者と期限を定め、確認日を予定表に入れてください。
その小さな一歩が、会社を「先代の判断を待つ会社」から、「現在の社長が意思を持って動かす会社」へ変える出発点になります。
まとめ
二代目社長が「決めきれない」のは、決断力が不足しているからとは限りません。
先代の影響、古参社員との関係、役職とは異なる実際の発言力、曖昧な責任分担など、社内に残る見えない力関係が、経営判断を難しくしていることがあります。
その状態で、社長だからと強引に決めても、社員は表面上だけ従い、現場では実行されないかもしれません。反対に、全員の納得を得ようとして意見を聞き続ければ、判断は先送りされ、会社の時間と資金が失われていきます。
必要なのは、誰かを排除することでも、先代のやり方をすべて否定することでもありません。
まず、組織図だけでは見えない影響力を把握し、社長の決定がどこで止まっているのかを確認してください。そして、反対意見の裏にある不安や事情を聞き取ります。
次に、「誰の意見が正しいか」ではなく、会社として何を優先するのかを明確にします。相談相手からは判断材料を集めますが、最終決定まで委ねてはいけません。誰が決め、誰が実行し、誰が進捗を確認するのかまで整理する必要があります。
二代目社長の役割は、全員が賛成する答えを探すことではありません。異なる意見を聞いたうえで、会社が進む方向を決め、その結果に責任を持つことです。
ただし、最初から会社全体を変えようとする必要はありません。
まずは、1か月以内に結果を確認できる課題を一つ選んでください。決めた理由を自分の言葉で説明し、担当者と期限を定め、確認日まで決めます。実行後は結果を検証し、必要であれば修正します。
社長の決定権は、肩書きだけで確立されるものではありません。決めたことを実行し、結果を確認し、責任を引き受ける姿勢の積み重ねによって、社内の信頼へと変わっていきます。
今日、先送りしている案件を一つ書き出してみてください。
そして、「誰の意見を待っているのか」「何を基準に決めるのか」「誰がいつまでに実行するのか」を整理してください。
小さくても、自分で決めて最後までやり切る。その一歩が、会社を「先代の判断を待つ組織」から、「現在の社長が自ら動かす組織」へ変える始まりになります。
