今週のコラム 製造業の2代目社長が経営コンサルタントを選ぶ際の5つの基準

今回ご紹介するのは、売上約8億円、従業員約40名の製造業の事例です。
事業承継から4年が経過していましたが、会長として会社に残った先代と、製造現場を長年まとめてきた工場長の影響力が強く、現社長が決めた原価改善や新規事業が、なかなか実行されない状態に陥っていました。
経営会議では方針が決まります。しかし、現場に下りると「会長にも確認した方がよい」「工場長が難しいと言っている」と判断され、いつの間にか計画が止まってしまいます。
現社長は、この状況を変えようと、経営計画の見直しや会議の改善、幹部への指示など、さまざまな取組を行いました。しかし、計画を作り直しても、指示を強めても、会社は思うように動きませんでした。
そこで、外部の経営コンサルタントへの相談を検討することになりました。
ところが、経営コンサルタントといっても、経営計画の作成、製造現場の改善、人事制度、事業承継、資金調達など、得意分野はそれぞれ異なります。
もし、この会社が経営計画を作ることだけを得意とするコンサルタントへ依頼していたら、先代や工場長の影響力は整理されないまま、実行されない計画だけが増えていたかもしれません。
また、製造現場の効率化だけを支援するコンサルタントであれば、原価や生産性は一時的に改善しても、現社長が決めたことが実行されないという根本的な問題は残っていた可能性があります。
この会社に必要だったのは、製造業の現場を理解したうえで、先代との権限整理、工場長や古参幹部との関係改善、経営会議の再設計、財務改善まで一体的に支援できるコンサルタントでした。
実際に、それぞれの役割、権限、社員への影響を整理し、現社長が経営判断を行い、幹部が責任を持って実行する体制へと組み替えたことで、会社は少しずつ動き始めました。
その結果、2年後には売上10億円の壁を突破するとともに、利益率も改善しました。
この事例が示しているのは、経営コンサルタントであれば、誰に依頼しても同じ結果になるわけではないということです。
会社が抱えている本当の問題と、コンサルタントの専門分野が合っていなければ、立派な計画や提案を受けても、会社を動かすことはできません。
本記事では、この製造業の事例をもとに、2代目社長が経営コンサルタントを選ぶ際に確認すべき5つの基準を、具体的に解説します。
はじめに
「経営コンサルタントに相談したいが、誰に依頼すればよいのか分からない」
このように悩んでいる製造業の2代目社長は、少なくありません。
インターネットで検索すると、経営戦略、事業承継、製造現場の改善、人事制度、資金調達など、さまざまな専門分野を掲げるコンサルタントが見つかります。どの会社も豊富な実績や丁寧な伴走支援を打ち出しているため、違いが分かりにくいのではないでしょうか。
しかし、経営コンサルタントであれば、誰に相談しても同じ成果が得られるわけではありません。
例えば、経営計画の作成を得意とするコンサルタントに依頼しても、先代と現社長の権限が曖昧なままであれば、計画は実行されません。製造現場の改善を進めても、工場長や古参幹部が社長の方針に納得していなければ、改革は途中で止まってしまいます。
また、組織の問題だけを見て、設備投資や借入返済、資金繰りを考慮しなければ、改善策を実行するための資金が不足することもあります。
製造業の2代目社長が抱える問題は、先代との関係、工場長や古参幹部の影響力、経営会議、製造原価、設備投資、銀行対応などが複雑に絡み合っています。
そのため、表面的な課題だけを解決するのではなく、会社が動かない根本的な原因を見つけ、組織と財務の両面から実行を支援できる専門家を選ばなければなりません。
コンサルタントを選ぶ際には、知名度や料金、提案書の見栄えだけで判断するのではなく、「自社と同じような問題を解決した経験があるか」「経営者への助言だけでなく、幹部や現場にも関与するか」「成果が定着するまで支援するか」を具体的に確認する必要があります。
コンサルタント選びを誤ると、時間と費用をかけて計画を作っても、会社は何も変わりません。反対に、自社の問題に合った専門家を選べば、止まっていた改革を動かし、社長の方針が実行される会社へ変えることができます。
まずは、現在相談を検討しているコンサルタントが、どこまで支援できるのかを確認してください。
本記事では、製造業の2代目社長が経営コンサルタントを選ぶ際に、必ず確認しておきたい5つの基準を具体的に解説します。
1.製造業と事業承継後の問題を理解しているか
製造業の2代目社長が経営コンサルタントを選ぶ際、最初に確認しておきたいのが、製造業の現場と事業承継後に起きる問題を本当に理解しているかという点です。
経営コンサルタントの中には、経営計画の作成、営業戦略、人事制度、原価改善など、特定の分野を専門としている人がいます。もちろん、それぞれの専門知識は重要です。
しかし、製造業の2代目社長が抱える問題は、一つの専門分野だけでは解決できないことが少なくありません。
例えば、原価率が高いという問題があったとしても、その原因が単純な材料費の上昇とは限りません。工場長が従来の生産方法を変えようとしない、営業部門が採算を確認せずに受注している、在庫管理の責任者が曖昧になっているなど、組織や人間関係が数字に影響している場合があります。
また、経営会議で改善策を決めても、先代や古参幹部の影響力によって実行されなければ、数字は変わりません。
製造業の経営改善では、決算書や試算表だけでなく、工場の中で誰が判断し、誰の意見によって現場が動いているのかまで確認する必要があります。
コンサルタントを選ぶ際には、製造業の知識があるかだけでなく、事業承継後の社内で起きる問題を理解し、数字と現場を一体として見られるかを確認してください。
1.1.製造現場特有の人間関係を理解しているか
製造業では、組織図に記載された役職と、実際の影響力が一致していないことがあります。
社長が経営方針を決める立場であっても、製造現場では、長年勤務してきた工場長や熟練社員の判断が優先されることがあります。
例えば、新しい設備を導入しようとしても、工場長から「今の設備で十分だ」「現場が混乱する」と言われると、計画が止まってしまうことがあります。新しい製品を開発しようとしても、技術部門の責任者から「これまで扱ったことがない」と反対され、検討そのものが進まないこともあります。
一方で、工場長や熟練社員は、長年にわたり会社を支えてきた存在です。製造技術、取引先ごとの品質要求、設備の特性、社員の能力など、社長が把握しきれていない情報を持っています。
そのため、改革に反対しているからといって、すぐに抵抗勢力と決めつけるべきではありません。
工場長が反対する背景には、品質事故への不安、過去の設備投資の失敗、新しい取組によって自分の役割が失われることへの危機感などが隠れている場合があります。
必要なのは、工場長や古参社員を排除することではなく、なぜ反対しているのかを確認し、経験を活かせる役割と、今後担う責任を整理することです。
製造業の人間関係を理解していないコンサルタントは、社長の話だけを聞き、「トップダウンを強めるべきだ」「反対する幹部を交代させるべきだ」と判断することがあります。
しかし、影響力のある工場長を一方的に外せば、製造現場が混乱したり、熟練社員が退職したりする可能性があります。取引先との品質対応や生産管理に支障が出れば、経営改革どころではありません。
経営コンサルタントを選ぶ際には、社長への助言だけでなく、必要に応じて工場長、製造責任者、営業責任者などと個別に面談できるかを確認しましょう。
また、次のような質問をしてみてください。
「古参の工場長が改革に反対した場合、どのように対応しますか」
「組織図上の役職と実際の影響力が異なる場合、どのように調査しますか」
「現場の協力を得ながら改革を進めた事例はありますか」
具体的な支援方法や事例を説明できなければ、製造現場の人間関係に踏み込んだ支援は難しいかもしれません。
製造業の改革を進めるには、社長の権限を強めるだけではなく、工場長や古参社員が持つ経験と影響力を、会社の成長に向けて使える形に組み替える必要があります。
1.2.承継前ではなく、承継後の支援実績があるか
事業承継支援と聞くと、株式の移転、相続税対策、後継者の選定、事業承継計画の作成などを思い浮かべる方が多いかもしれません。
これらは、会社を引き継ぐために必要な手続きです。しかし、2代目社長が実際に悩み始めるのは、代表取締役に就任した後です。
形式上は社長になっていても、先代が会長や相談役として会社に残り、重要な取引先や銀行との関係を握っている場合があります。社員が何かを決めるたびに先代へ確認し、現社長が決めた方針が後から変更されることもあります。
また、古参幹部が「前の社長のときはこうだった」と従来のやり方を優先し、新しい方針に従わないこともあります。
このような状態では、株式や代表権の承継が完了していても、実質的な経営権の移行は終わっていません。
事業承継は、社長の肩書や株式を引き継いだ時点で完了するのではなく、現社長の意思決定が社内で実行されるようになって、初めて次の段階へ進みます。
承継前の計画策定を中心に支援してきたコンサルタントと、承継後の組織改革を実際に支援してきたコンサルタントでは、対応できる範囲が異なります。
承継後の支援では、先代と現社長の役割、決裁権限、社員への指示系統、取引先対応、銀行対応などを具体的に整理しなければなりません。
さらに、工場長や古参幹部に対して、今後どのような責任を担ってもらうのかを明確にする必要があります。経営会議の運営方法を見直し、決定事項に責任者と期限を設定し、実行状況を確認する仕組みも必要です。
コンサルタントを選ぶ際には、「事業承継の支援実績があります」という説明だけで判断してはいけません。
次の点まで確認してください。
・支援したのは、承継前か承継後か
・先代が会社に残っている事例を扱ったことがあるか
・先代と現社長の権限を、どのように整理したか
・古参幹部との関係改善に、どこまで関与したか
・経営会議や実行管理の仕組みまで支援したか
・支援後、会社にどのような変化が起きたか
「親子でよく話し合ってください」「社長が強いリーダーシップを発揮してください」という助言だけでは、承継後の問題は解決しません。
親子である前に、会長と社長、株主と経営者として、経営上の役割を整理する必要があります。そして、社員が誰の指示に従い、誰が最終的に判断するのかを明確にしなければなりません。
2代目社長が選ぶべきなのは、承継の手続きを知っている専門家ではなく、承継後に会社が動かなくなる理由を理解し、実際に動く組織へ変えた経験を持つ専門家です。
1.3.製造業の数字と現場を結び付けて考えられるか
製造業の経営改善では、数字を見る力も欠かせません。
ただし、決算書や試算表を分析し、「原価率が高い」「在庫が多い」「利益率が低い」と指摘するだけでは不十分です。
重要なのは、その数字が、現場のどのような行動によって生まれているのかを確認することです。
例えば、原価率が上昇している場合、材料価格の上昇だけが原因とは限りません。
少量多品種の受注が増え、段取り替えの回数が増えているかもしれません。営業担当者が採算を確認せずに値引きをしている可能性もあります。製造現場で不良品や作り直しが発生し、材料費や作業時間が余計にかかっていることもあります。
在庫が増えている場合も同様です。
販売見込みのない製品を作り続けているのか、欠品を恐れて材料を多めに仕入れているのか、営業部門と製造部門で販売計画が共有されていないのかによって、取るべき対策は変わります。
数字は結果であり、その背景には、営業、製造、購買、在庫管理、品質管理など、現場の具体的な判断と行動があります。
数字だけを見るコンサルタントは、経費削減や値上げなど、表面的な改善策を提案することがあります。しかし、現場の仕組みが変わらなければ、改善効果は一時的なものになります。
反対に、現場改善だけを重視し、利益や資金繰りを確認しないことにも問題があります。
生産性を上げるために新しい設備を導入しても、設備投資後の借入返済を含めた資金繰りを確認していなければ、現金が不足する可能性があります。売上を増やすために大量受注しても、利益率が低く、売掛金の回収期間が長ければ、資金繰りは苦しくなります。
製造業の経営コンサルタントには、少なくとも次の項目を関連付けて考える力が求められます。
・製品別、取引先別の売上と粗利益
・材料費、外注費、労務費などの製造原価
・設備の稼働率と生産能力
・仕掛品、製品、材料の在庫
・不良率や手直しにかかる費用
・設備投資後の減価償却費と借入返済
・受注から入金までの資金の流れ
コンサルタントへ相談する前に、自社でも一度、数字と現場を照らし合わせてみてください。
「利益率が低い製品は何か」
「赤字になっている取引先はないか」
「在庫が増え始めたのはいつか」
「設備を入れた後、売上や利益は計画どおり増えたか」
「工場長や営業責任者は、自部門の数字を理解しているか」
これらを確認するだけでも、会社の問題が具体的に見えてきます。
そのうえで、コンサルタントに「この数字の背景を、どのように調べますか」と質問してください。
決算書の分析方法だけでなく、現場へのヒアリング、製造工程の確認、製品別採算の整理、会議での進捗確認まで説明できるかが重要です。
数字と現場を別々に改善するのではなく、数字が悪化した原因を現場で確認し、現場の行動を変えた結果を再び数字で確かめる。この循環をつくれるコンサルタントを選んでください。
製造業と事業承継後の問題を理解しているかどうかは、最初の相談時にある程度判断できます。
自社の状況を説明した際、すぐに解決策を提示するのではなく、先代の関与、工場長の影響力、部門間の関係、製品別採算、設備投資、資金繰りなどを具体的に質問してくるかを確認してください。
会社の表面だけを見て、一般的な成功事例を当てはめようとするコンサルタントでは、複雑な問題を解決することは難しいでしょう。
まずは候補となるコンサルタントに、自社と似た会社を支援した経験と、その際に行った具体的な支援内容を尋ねてみてください。
自社の問題を正しく理解できる相手かどうかを確認することが、会社を変えるための最初の行動です。
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2.先代と古参幹部の問題に対応できるか
製造業の2代目社長が経営改革を進めようとするとき、大きな壁になりやすいのが、会社に残る先代と古参幹部の存在です。
ここで注意しなければならないのは、先代や古参幹部が会社の成長を意図的に妨げているとは限らないことです。
先代は、会社を創業または成長させ、取引先や金融機関との関係を築いてきました。工場長や古参幹部も、長年にわたり製造現場を支え、品質や納期を守ってきた人たちです。
その経験や信用は、会社にとって大切な財産です。
しかし、事業承継後も先代の影響力が強く残り、古参幹部が現社長よりも先代の意向を優先する状態が続くと、現社長の方針は実行されません。
例えば、現社長が経営会議で原価改善を決めても、現場から「会長にも確認した方がよい」と言われる。新しい設備の導入を指示しても、工場長が「今のやり方で問題ない」と判断し、検討が止まる。新規事業の責任者を決めても、古参幹部が協力しないため、計画が進まない。
このような状態では、肩書上は事業承継が完了していても、実際の意思決定は先代時代のままです。
問題なのは、先代や古参幹部が会社に残っていることではありません。誰が何を決め、誰が実行責任を負うのかが曖昧なままになっていることです。
経営コンサルタントを選ぶ際には、先代を退任させる、古参幹部を交代させるといった単純な解決策ではなく、それぞれの経験を活かしながら、現社長を中心とした経営体制へ移行できるかを確認する必要があります。
2.1.先代との権限整理を支援できるか
事業承継後の会社では、先代と現社長の役割が明確に決まっていないことがあります。
先代は会長や相談役になっていても、重要な取引先との商談、設備投資、人事、銀行対応などに引き続き関与している場合があります。
社員から相談を受けた先代が、その場で指示を出してしまうこともあります。先代に悪意はなくても、社員から見れば、社長と会長という二つの指揮命令系統が存在することになります。
例えば、現社長が不採算製品からの撤退を決めたにもかかわらず、先代が「長年の取引先だから続けるべきだ」と営業部長に伝えれば、現場はどちらに従えばよいか分かりません。
多くの場合、社員は影響力が強く、長年の実績を持つ先代の判断を優先します。その結果、現社長が経営会議で決めた方針が実行されなくなります。
こうした状況に対して、「会長は口を出さないでください」と伝えるだけでは、問題は解決しません。
先代にとって会社は、自分が人生をかけて築いてきた存在です。突然、経営への関与を否定されれば、自分の経験や存在そのものを否定されたと感じる可能性があります。
また、現社長側も親子関係への配慮から、強く伝えられないことがあります。家庭内の感情が経営判断に持ち込まれ、話し合いそのものを避けてしまうケースもあります。
必要なのは、親子の感情論ではなく、会社経営に必要な役割と権限を具体的に整理することです。
例えば、次のような項目を明確にします。
・経営方針や事業計画を最終決定する人
・設備投資や借入を決定する人
・社員へ業務上の指示を出す人
・重要な取引先との関係を維持する人
・銀行との交渉や説明を担当する人
・技術や品質について助言する人
・採用、配置、評価を決定する人
先代には、長年の経験や人脈を活かして、主要取引先との関係維持や技術上の助言を担ってもらう。一方、投資、人事、新規事業、組織改革などの経営判断は、現社長が行う。
このように、先代の役割をなくすのではなく、会社の成長に貢献できる範囲へ再設計します。
権限整理とは、先代からすべてを取り上げることではありません。先代の経験を活かす領域と、現社長が最終判断する領域を、社員にも分かる形で明確にすることです。
経営コンサルタントを選ぶ際には、先代と現社長の話を別々に聞き、双方が会社に対してどのような考えを持っているのかを整理できるか確認してください。
また、役割分担を口頭で確認するだけでなく、決裁権限表、職務分掌、会議体、社内への周知方法まで落とし込めるかも重要です。
候補となるコンサルタントには、次のように質問してみてください。
「会長が社員へ直接指示を出している場合、どのように整理しますか」
「先代と現社長の意見が対立したとき、どのように支援しますか」
「整理した権限を、社員にどのように浸透させますか」
具体的な進め方を説明できるかどうかを確認しましょう。
現社長が経営責任を負っているにもかかわらず、最終判断が先代に残ったままでは、会社は次の成長段階へ進めません。まず、誰が何を決めるのかを明文化することから始めてください。
2.2.古参の工場長や幹部を改革に巻き込めるか
製造業では、工場長や古参幹部が、役職以上の影響力を持っていることがあります。
工場長は、生産設備の特徴、製造工程、品質管理、社員一人ひとりの技量など、現場に関する多くの情報を持っています。現場の社員から厚い信頼を得ており、工場長が納得しなければ、新しい取組が進まない会社もあります。
2代目社長が新しい方針を示したとき、工場長が「現場では無理です」と言えば、社員はその言葉を重く受け止めます。
このとき、社長が「決定事項だから実行してほしい」と指示を強めるだけでは、表面的には従っても、実際の行動は変わらないことがあります。
工場長が改革に反対する理由を確認する必要があります。
例えば、次のような事情が考えられます。
・品質事故や納期遅延を心配している
・過去に新しい設備やシステムの導入で失敗した経験がある
・現社長が製造現場を十分に理解していないと感じている
・自分の役割や存在価値が失われることを恐れている
・改革の目的や会社の危機的状況を知らされていない
・現場の人員や時間が不足しており、実行できる状態ではない
反対の理由を確認せず、「古い考えに固執している」と決めつければ、対立はさらに深まります。
一方で、工場長の意見をすべて受け入れれば、改革は進みません。
必要なのは、工場長の経験を尊重しながら、会社として変えなければならない部分を明確にすることです。
例えば、社長が「原価率を3ポイント改善する」という目標を示し、工場長には、製造工程のどこに改善余地があるのかを提案してもらいます。改善方法まで社長が一方的に決めるのではなく、工場長を計画づくりの段階から参加させます。
そのうえで、責任者、実施期限、確認する数字を決めます。
古参幹部を改革に巻き込むとは、単に意見を聞くことではありません。会社が目指す結果を共有し、その実現に必要な役割と責任を正式に担ってもらうことです。
経営コンサルタントには、社長と古参幹部の間に入り、双方の考えを整理する力が求められます。
社長の方針を古参幹部へ伝えるだけでなく、古参幹部が抱えている不安や現場上の制約を聞き取り、実行可能な計画へ修正する必要があります。
また、改革に協力した古参幹部が正当に評価される仕組みも必要です。
新しい役割を与えたにもかかわらず、評価制度や報酬が従来のままであれば、「責任だけが増えた」と感じるかもしれません。役割、権限、評価を一体として見直すことが重要です。
候補となるコンサルタントには、次の点を確認してください。
「社長が強く指示すればよい」という回答だけであれば、複雑な社内問題への対応は難しいでしょう。
長年会社を支えてきた工場長や古参幹部は、改革を止める存在にも、改革を進める中心人物にもなります。どちらになるかは、経験を尊重しながら、今後の責任を明確にできるかで変わります。
2.3.社内の実際の影響力を可視化できるか
会社の正式な組織図を見れば、役職や指揮命令系統は分かります。
しかし、組織図だけでは、会社が実際にどのように動いているのかは分かりません。
社長の下に工場長や営業部長が配置されていても、重要な判断の前には全員が会長へ確認しているかもしれません。
役職のない熟練社員が、若手社員や協力会社に大きな影響を与えていることもあります。社長よりも古参の経理担当者の方が、銀行や会社の資金繰りを把握している場合もあります。
このような非公式の影響力を把握しないまま、組織図や役職だけを変更しても、会社の動きは変わりません。
例えば、工場長の役職を変更して新しい製造部長を任命しても、現場の社員が引き続き元工場長へ相談していれば、実質的な意思決定は変わらないままです。
新しい会議を設けても、会議後に参加者が先代へ個別に確認を取り、決定事項が覆されるのであれば、会議は機能しません。
会社を変えるためには、正式な組織図ではなく、社員が実際に誰へ相談し、誰の了解を得て、誰の言葉によって行動を変えているのかを把握する必要があります。
そのために、社内の影響力を可視化します。
確認すべき内容として、次のようなものがあります。
・重要な判断を行う前に相談される人
・社員が困ったときに頼る人
・会議で最も発言力を持つ人
・反対すると計画が止まる人
・部署を越えて情報を持っている人
・若手社員や現場社員から信頼されている人
・先代と日常的に連絡を取っている人
・取引先や協力会社との関係を握っている人
これらを整理すると、組織図には表れない社内の意思決定経路が見えてきます。
例えば、先代、現社長、工場長、営業部長、経理責任者などについて、誰から相談を受け、誰に影響を与えているかを図にします。
すると、現社長が出した指示が、どこで止まっているのかが分かります。
工場長で止まっているのか、営業部門と製造部門の対立で止まっているのか、社員が先代へ確認することで止まっているのかによって、対応方法は異なります。
影響力を可視化する目的は、社内の有力者を探して排除することではありません。
誰の協力を得れば改革が進むのかを把握し、その人に適切な役割を担ってもらうためです。
例えば、若手社員から信頼されている熟練社員を改善プロジェクトのメンバーに加えることで、現場への浸透が進む可能性があります。取引先との関係が深い先代には、営業上の助言や重要顧客との関係維持を担ってもらうこともできます。
経営コンサルタントを選ぶ際には、社長へのヒアリングだけで判断せず、幹部や社員への面談、会議への参加、指示や相談経路の確認などを通じて、社内の実態を調べられるかを確認してください。
具体的には、次のように質問してみましょう。
「組織図と実際の指揮命令系統が異なる場合、どのように確認しますか」
「社員へのヒアリングは、誰を対象にどのように行いますか」
「把握した影響力を、改革にどのように活用しますか」
社内の実態を十分に確認せず、一般的な組織論を当てはめるだけでは、改革が途中で止まる可能性があります。
会社が動かない原因を知りたければ、組織図ではなく、実際の相談経路と意思決定の流れを確認してください。どこで判断が止まり、誰の一言で方針が変わっているのかが見えれば、取るべき対策も明確になります。
先代や古参幹部の問題は、感情が絡むため、社内だけで整理することが難しい場合があります。
だからこそ、経営コンサルタントには、先代、現社長、古参幹部の誰か一人に偏らず、会社にとって必要な体制を客観的に示す役割が求められます。
まずは、現在の会社について、次の三つを書き出してみてください。
「経営上の最終判断をしているのは誰か」
「社員が実際に指示を受けているのは誰か」
「その人が反対すると止まる取組は何か」
この三つが組織図どおりになっていなければ、権限と影響力の整理が必要です。
先代や古参幹部との関係を曖昧なままにせず、役割、権限、責任を見える形にすることが、2代目社長の方針で会社を動かすための第一歩です。
3.経営会議に入り、実行まで支援できるか
経営コンサルタントへ依頼したものの、立派な計画書ができただけで、会社はほとんど変わらなかった。
このような経験をした中小企業経営者は、少なくありません。
経営計画、改善提案、組織図、数値目標などを作ることは重要です。しかし、どれほど優れた計画でも、幹部や現場が実行しなければ成果にはつながりません。
製造業の2代目社長が抱える問題は、正しい方針がないことだけではありません。
経営会議で決めた設備投資の検討が進まない。原価改善の担当者を決めても、日常業務に追われて手がつけられない。新規事業の責任者を任命しても、工場長や営業部長の協力が得られず、途中で止まってしまう。
こうした会社では、さらに新しい計画を作るよりも、すでに決めたことが実行されない理由を確認する必要があります。
経営改善の成果を左右するのは、提案内容の良し悪しだけではありません。決定事項を誰が、いつまでに、どのような状態まで実行するのかを明確にし、その後も確認を続けられるかどうかです。
そのため、製造業の2代目社長が経営コンサルタントを選ぶ際には、助言や計画書の提出だけで終わらず、経営会議に入り、幹部との対話を通じて、実行と定着まで支援できるかを確認しなければなりません。
3.1.助言や計画書の提出だけで終わらないか
経営コンサルタントの支援には、さまざまな形があります。
現状を分析し、経営課題を整理する。中期経営計画や事業計画を作成する。改善策を提案書としてまとめ、経営者へ説明する。
これらの支援にも価値はあります。
経営者が自社の問題を客観的に把握できるようになり、今後の方向性が明確になるからです。
しかし、製造業の2代目社長が抱える「会社が動かない」という問題は、提案書を受け取っただけでは解決しません。
例えば、コンサルタントから「製品別採算を把握し、不採算製品を整理すべきだ」という提案を受けたとします。
方向性としては正しくても、誰が製品別原価を集計するのか、営業部門と製造部門のどちらが判断するのか、既存取引先へどのように説明するのかが決まっていなければ、実行は進みません。
また、「経営会議を活性化すべきだ」と助言されても、会議の参加者、議題、資料、進行方法、決定後の確認方法まで変えなければ、従来どおりの報告会が続きます。
計画書の提出で支援が終わる場合、実行の責任はすべて経営者に戻ってきます。
しかし、2代目社長は、すでに日々の営業、製造、人事、資金繰り、先代への対応など、多くの業務を抱えています。さらに、幹部へ指示し、進捗を確認し、止まった理由を聞き出し、計画を修正するところまで一人で担うのは簡単ではありません。
結果として、計画書は社長室の棚に置かれたままになり、半年後には誰も見なくなってしまいます。
コンサルタントを選ぶ際には、何を提案してくれるかだけでなく、提案後にどこまで実行へ関与するかを確認する必要があります。
具体的には、次の点を質問してください。
・提案後の実行計画を誰が作るのか
・担当者と期限をどのように決めるのか
・実行状況をどの頻度で確認するのか
・計画が止まった場合、誰にどのような働きかけをするのか
・成果が出なかった場合、どのように修正するのか
・経営会議や幹部会議へ参加するのか
「提案後は社内で進めてください」という支援なのか、「実行状況まで一緒に確認します」という支援なのかでは、得られる結果が大きく異なります。
支援事例についても、計画書を作成した件数だけでなく、その後に何が実行され、どのような成果が出たのかを確認しましょう。
例えば、原価率が何ポイント改善したのか、在庫がどの程度減ったのか、経営会議の決定事項がどの程度実行されるようになったのかなど、具体的な事実を説明できることが重要です。
製造業の2代目社長が選ぶべきなのは、正しいことを教えてくれるだけのコンサルタントではありません。決めたことが現場で実行され、数字や行動が変わるまで支援するコンサルタントです。
3.2.経営会議の再設計に対応できるか
会社が動かない原因は、経営会議に表れていることがあります。
経営会議を毎月開催していても、各部門が売上や生産状況を読み上げるだけで終わっている会社は少なくありません。
営業部長が受注状況を報告し、工場長が生産や納期について説明し、経理担当者が試算表の数字を読み上げる。その後、社長がいくつか指示を出して会議が終了する。
このような会議では、情報共有はできても、会社を前へ進める意思決定はできません。
また、会議中は全員が賛成していたにもかかわらず、会議が終わると何も進まないこともあります。
原因は、会議で決めた内容が曖昧だからです。
「原価を下げる」
「営業を強化する」
「新規事業を早く進める」
「在庫を減らす」
こうした表現だけでは、誰が何をすればよいのか分かりません。
例えば、「在庫を減らす」であれば、対象となる在庫、削減目標、担当者、期限、具体的な処分方法や発注方法まで決める必要があります。
さらに、次回の会議で何を確認するかも明確にしなければなりません。
経営会議は、報告を受ける場ではなく、会社の重要課題について意思決定し、実行責任を明確にする場です。
経営会議を再設計する際には、まず会議の目的を決めます。
売上や生産状況の報告だけであれば、事前に資料を共有すれば済む場合があります。会議の時間は、課題の原因分析、対応策の選択、優先順位の決定、実行責任の確認に使うべきです。
次に、会議へ参加する人を見直します。
役職が高いという理由だけで参加者を増やすと、報告項目が多くなり、意思決定に時間がかかります。一方で、実行責任を持つ工場長や営業責任者が参加していなければ、決定事項が現場へ伝わりません。
議題ごとに、決める人、意見を述べる人、実行する人を整理する必要があります。
会議資料も見直します。
大量の数字を並べるだけではなく、計画と実績の差、差が生じた理由、対応策、経営判断が必要な事項が分かる資料に変更します。
そして、会議で決めたことについて、必ず次の項目を記録します。
・決定事項
・実行責任者
・期限
・確認する数値や状態
・次回確認日
・実行できない場合の対応
これらが明確になれば、次回の会議で「やったか、やっていないか」が確認できます。
実行されていなければ、担当者を責める前に、止まった理由を確認します。
権限がなかったのか。人員が不足していたのか。先代や工場長から異なる指示が出たのか。他部門の協力が得られなかったのか。そもそも期限や目標が現実的でなかったのか。
原因を確認し、必要に応じて役割や計画を修正します。
経営コンサルタントを選ぶ際には、会議で意見を述べるだけでなく、会議の目的、参加者、議題、資料、進行、記録、実行確認まで設計できるかを確認してください。
また、会議をコンサルタント任せにするのではなく、最終的には社長と幹部だけでも運営できる状態を目指しているかも重要です。
経営会議を変える目的は、会議を上手に進めることではありません。会議で決めたことが、翌日から現場で実行される仕組みをつくることです。
現在の経営会議を見直すために、まず直近3回分の議事録を確認してください。
決定事項に担当者と期限が書かれているか。前回の決定事項が次回に確認されているか。同じ問題が何度も議題に上がっていないか。
これらを確認するだけでも、経営会議が機能しているかどうかが見えてきます。
3.3.幹部との個別面談を行えるか
経営コンサルタントが社長の話だけを聞いて支援内容を決める場合、会社の問題を正確に把握できないことがあります。
社長から見れば、「工場長が方針に従わない」「営業部長が動かない」「幹部に経営者意識がない」と感じるかもしれません。
しかし、幹部側には別の事情がある可能性があります。
工場長は、新しい設備を導入すると品質が不安定になると考えているかもしれません。営業部長は、利益率の低い仕事だと分かっていても、主要取引先との関係を守るために受注しているかもしれません。
幹部が動かないのではなく、社長から求められている役割や権限が曖昧な場合もあります。
また、社長へ率直な意見を伝えることを避けている可能性もあります。
2代目社長が就任して間もない会社では、古参幹部が「反対意見を言えば、自分が改革を邪魔していると思われるのではないか」と考え、本音を話さないことがあります。
その結果、経営会議では賛成しているように見えても、実際には納得しておらず、実行段階で止まります。
会社が動かない理由を正確に把握するには、経営者の視点だけでなく、実行責任を担う幹部の視点も確認しなければなりません。
幹部との個別面談では、単に不満を聞くのではなく、次のような内容を確認します。
・現在の役割をどのように認識しているか
・社長から何を期待されていると考えているか
・現場で起きている問題は何か
・改革を進めるうえで何を不安に感じているか
・実行に必要な権限や人員はあるか
・他部門との間で何が止まっているか
・先代との関係が判断に影響していないか
・今後、どのような役割を担いたいか
面談によって、社長の認識と幹部の認識にどのような違いがあるかが分かります。
例えば、社長は工場長へ「生産性改善を任せた」と考えていても、工場長は「改善案を出すだけで、設備投資や人員配置を決める権限はない」と考えているかもしれません。
この状態で「責任を持って進めてほしい」と伝えても、行動にはつながりません。
役割と責任に見合う権限を与え、どの範囲まで自分で判断できるのかを明確にする必要があります。
ただし、個別面談の内容をそのまま社長へ伝えればよいわけではありません。
誰が何を言ったかを報告するだけでは、社内に不信感が生まれる可能性があります。個人の批判ではなく、組織として共通している問題や、役割・権限・情報共有の不足として整理する必要があります。
経営コンサルタントを選ぶ際には、幹部面談の経験があるかだけでなく、聞き取った内容をどのように経営改善へ反映するのかを確認してください。
次の点を質問するとよいでしょう。
・誰を対象に面談するのか
・面談では何を確認するのか
・面談内容の秘密をどのように扱うのか
・社長へどのように報告するのか
・面談後に役割や会議をどう見直すのか
・幹部の行動変化をどのように確認するのか
面談を実施するだけで終わらず、その結果を職務分担、会議運営、実行計画、評価へ反映できることが重要です。
幹部との個別面談は、社長への不満を集めるために行うものではありません。幹部が動けない理由を明らかにし、役割、権限、責任を実行可能な形へ整えるために行うものです。
経営会議と幹部面談は、別々の取組ではありません。
個別面談で把握した現場の問題を経営会議の設計へ反映し、経営会議で決めた役割や目標を、再び幹部との対話で確認する。この繰り返しによって、社長と幹部の認識がそろい、会社が動き始めます。
コンサルタントへの相談を検討している場合は、契約前に「経営会議へ参加して、実行確認まで行ってもらえますか」「必要に応じて幹部とも面談してもらえますか」と質問してください。
その回答が曖昧であれば、支援範囲を具体的に確認する必要があります。
計画を作ることが目的ではありません。経営会議で決めたことを幹部が実行し、その成果が数字と現場に表れる状態をつくることが目的です。
4.組織と財務を一体的に支援できるか
製造業の2代目社長が経営改革を進める際、組織の問題と財務の問題を別々に考えてはいけません。
会社が動かないから組織コンサルタントへ相談し、資金繰りが苦しいから税理士や金融機関へ相談する。このように相談先を分けること自体が間違いというわけではありません。
しかし、製造業では、人や組織の問題が利益や資金繰りに影響し、財務上の制約が組織改革を止めていることが少なくありません。
例えば、経営会議で設備の更新を決めても、工場長が必要性に納得していなければ、導入準備は進みません。反対に、社長と幹部が設備投資に賛成していても、投資後の借入返済や資金繰りを確認していなければ、実行に移せません。
原価率を改善しようとしても、営業部門が採算を確認せずに受注し、製造部門が従来の工程を変えなければ、数字は改善しません。また、資金繰りが厳しいことを社長と経理担当者しか知らなければ、幹部は従来どおりに仕入れや外注を続けてしまいます。
組織の動きが数字をつくり、その数字が次の経営判断を制約します。組織と財務は、切り離して改善できるものではありません。
経営コンサルタントを選ぶ際には、社員の意識改革や会議の改善だけでなく、利益、資金繰り、設備投資、借入返済、銀行対応まで関連付けて支援できるかを確認する必要があります。
4.1.組織改革と資金繰りを同時に扱えるか
組織改革には、時間と資金が必要です。
幹部を育成するための研修、新しい管理システムの導入、設備の更新、人員の採用、外部専門家の活用など、改革を実行するには何らかの費用が発生します。
ところが、資金繰りを確認せずに改革を始めると、途中で資金が不足し、計画そのものを中断せざるを得なくなることがあります。
反対に、資金繰りが厳しいからという理由だけで、すべての投資や改革を止めることにも問題があります。
採算の悪い製品を作り続け、効率の低い設備を使い、社長がすべての判断を抱えたままであれば、会社の収益力は改善しません。資金を守るために改革を先送りした結果、さらに資金繰りが悪化することもあります。
必要なのは、限られた資金の中で、何を優先して変えるかを決めることです。
例えば、売上約8億円、従業員約40名の製造会社で、原価率の上昇と資金繰りの悪化が起きていたとします。
社長は工場の生産性を改善したいと考えていましたが、工場長は日々の納期対応に追われ、改善活動に取り組めていませんでした。営業部門では、売上を確保するために利益率の低い注文も受けており、製造部門へ無理な短納期を求めていました。
その結果、残業や外注が増え、売上が増えても利益と現金が残らない状態になっていました。
この会社に対して、単に「原価を下げましょう」と助言しても改善は進みません。
まず、製品別、取引先別の採算を把握し、どの受注が利益を圧迫しているのかを確認します。そのうえで、営業部門には受注時の採算確認を求め、製造部門には残業、外注、不良品、段取り替えなどの改善目標を設定します。
さらに、経営会議で毎月、売上だけでなく、粗利益、在庫、外注費、資金繰りを確認します。社長だけでなく、営業部長や工場長にも、自分たちの判断が会社の現金にどのような影響を与えるかを理解してもらいます。
資金繰り改善とは、社長や経理担当者が入出金を管理することだけではありません。営業、製造、購買、在庫管理など、各部門の行動を変えることです。
コンサルタントを選ぶ際には、組織改革の実行計画と資金繰り計画を、同時に作れるかを確認してください。
例えば、次のような質問が有効です。
・改革に必要な費用を、どのように見積もるのか
・投資の優先順位を、何を基準に決めるのか
・資金繰りが厳しい場合、どの改革から着手するのか
・利益改善策を、各部門の行動へどう落とし込むのか
・経営会議で、どの財務数値を確認するのか
・資金不足が予想される場合、銀行対応まで支援するのか
組織の問題だけを扱うコンサルタントでは、実行に必要な資金を見落とす可能性があります。一方で、財務だけを見る専門家では、数字を悪化させている社内の行動まで変えられないことがあります。
組織改革を成功させるには、「会社をどう変えるか」と同時に、「その改革を実行する資金をどう確保し、いつまで持たせるか」を具体的に決めなければなりません。
まず、自社の改革案について、必要な費用、成果が出るまでの期間、資金繰りへの影響を書き出してみてください。
計画を実行してから資金不足に気づくのでは遅すぎます。改革の内容とお金の動きを並べて確認することが、実行可能な計画をつくる第一歩です。
4.2.設備投資と銀行対応を理解しているか
製造業の成長には、設備投資が欠かせない場合があります。
老朽化した設備の更新、生産能力の増強、省人化、品質向上、新製品への対応など、設備投資は会社の競争力を高める重要な経営判断です。
しかし、設備を導入すれば必ず利益が増えるわけではありません。
設備代金だけでなく、設置工事費、運送費、試運転費用、金型や付帯設備、人材教育、保守費用などが必要になります。稼働が安定するまで、生産性が一時的に下がることもあります。
また、設備投資によって売上が増えても、材料や人件費、在庫、売掛金が増えれば、運転資金も必要です。
例えば、5,000万円の設備を導入する場合、5,000万円の融資を受ければ終わりではありません。
導入後に受注が増えれば、材料を先に仕入れ、製品を作り、取引先から入金されるまでの資金を立て替える必要があります。この運転資金を見込んでいなければ、売上が増えているのに現金が不足する事態が起こります。
設備投資では、設備の価格だけでなく、導入後に売上が立ち、入金され、借入金を返済するまでの資金の流れを確認しなければなりません。
銀行も、設備そのものの性能だけを見て融資を判断するわけではありません。
なぜ今この設備が必要なのか。設備導入によって、生産量、売上、利益はどの程度増えるのか。受注の根拠はあるのか。計画どおりに進まなかった場合でも返済できるのか。経営者や幹部が計画を実行できる体制になっているのか。
こうした点を総合的に確認します。
特に、事業承継後の会社では、銀行が現社長の経営力や社内体制を見ている場合があります。
先代が銀行対応を続け、現社長が自社の数字や投資計画を説明できなければ、銀行は「実際に経営を担っているのは誰なのか」と不安を感じるかもしれません。
また、経営会議で設備投資を決めても、工場長が導入後の生産計画を説明できず、営業部長が受注見込みを示せなければ、計画の実現可能性を疑われます。
設備投資の銀行説明は、社長と経理担当者だけで作るものではありません。
営業部門は売上と受注の根拠を示し、製造部門は生産量、原価、人員、稼働計画を示します。社長は、それらを利益計画、資金繰り、借入返済へ結び付けて説明します。
経営コンサルタントを選ぶ際には、次の点を確認してください。
・設備投資後の売上、利益、資金繰りを試算できるか
・追加で必要になる運転資金まで計算できるか
・複数の投資案を比較し、優先順位を決められるか
・投資が計画を下回った場合の返済可能性を検証できるか
・銀行へ提出する事業計画や資金計画を作れるか
・融資面談で想定される質問を整理できるか
・銀行から追加説明を求められた際に対応できるか
単に補助金や融資制度を紹介するだけでなく、設備投資が会社全体に与える影響を検証できることが重要です。
また、設備投資の目的が曖昧な場合には、投資を見送る判断も必要です。
「設備が古くなったから」「競合会社も導入しているから」という理由だけでは、多額の借入を伴う投資を正当化できません。
投資によって、どの工程が改善され、何時間削減され、原価がどの程度下がり、どの受注を獲得できるのかを具体的にします。
銀行から融資を受けることが設備投資の成功ではありません。導入した設備を現場が使いこなし、利益と現金を生み、その中から無理なく返済できて初めて成功といえます。
設備投資を予定している場合は、見積書を銀行へ持ち込む前に、営業、製造、財務の責任者を集めてください。
そして、設備導入の目的、受注の根拠、生産計画、利益への効果、必要な運転資金、返済方法を、一つの計画として整理しましょう。
4.3.幹部に数字を理解させる支援ができるか
中小企業では、会社の数字を理解しているのが社長と経理担当者だけということがあります。
営業部長は売上だけを見て、工場長は生産量や納期だけを見ている。購買担当者は仕入価格を下げることに集中し、在庫金額や資金繰りまで考えていない。
この状態では、各部門が自分の目標を達成しても、会社全体の利益や現金が増えないことがあります。
例えば、営業部長が売上目標を達成するために、利益率の低い案件を大量に受注したとします。
売上は増えますが、短納期対応によって残業や外注費が増えれば、利益は残りません。さらに、入金までの期間が長ければ、材料費や人件費の支払いが先行し、資金繰りも悪化します。
工場長が欠品を防ぐために、多くの材料や製品在庫を持った場合も同様です。
現場から見れば、納期を守るための合理的な判断かもしれません。しかし、在庫が増えれば、その分だけ会社の現金が倉庫に眠ることになります。
幹部が自部門の数字だけを追いかけている限り、会社全体として正しい判断をすることはできません。
だからといって、幹部に決算書の読み方を一度教えればよいわけではありません。
必要なのは、それぞれの業務と会社の数字を結び付けて理解してもらうことです。
営業部門であれば、売上だけでなく、製品別・取引先別の粗利益、値引き、回収条件まで確認します。
製造部門であれば、材料費、外注費、労務費、不良率、設備稼働率、残業時間、在庫などを確認します。
購買部門であれば、仕入単価だけでなく、発注量、在庫回転、支払条件まで考えます。
幹部に共有する数字は、多ければよいものではありません。役割に応じて、自分の行動によって変えられる数字を選ぶ必要があります。
例えば、工場長に営業利益だけを示しても、自分が何を変えればよいか分かりません。
一方で、製造時間、不良率、外注費、残業時間、製品別原価などを示せば、現場の改善行動と結び付きます。
経営会議では、単に数字を報告させるのではなく、次の点まで確認します。
・計画と実績に、どの程度の差があるか
・なぜ差が生じたのか
・どの行動が数字へ影響したのか
・今後、何を変えるのか
・誰が、いつまでに実行するのか
・改善結果を、どの数字で確認するのか
これを毎月繰り返すことで、幹部は数字を責任追及の材料ではなく、経営判断の道具として使えるようになります。
経営コンサルタントを選ぶ際には、財務研修を行えるかだけでなく、幹部が数字を使って行動を変えるところまで支援できるかを確認してください。
具体的には、次のような質問をしてみましょう。
・幹部ごとに、どの数字を持たせるのか
・数字が苦手な幹部へ、どのように説明するのか
・部門別や製品別の採算を、どのように整理するのか
・経営会議で数字をどう活用するのか
・数字が悪化した場合、現場の行動までどう確認するのか
・幹部が自ら改善案を出せる状態まで支援するのか
難しい財務用語を使って説明するだけでは、幹部の行動は変わりません。
自部門のどの行動が利益や現金に影響するのかを、具体的に示せることが重要です。
社長一人が数字を理解していても、会社全体の収益力は高まりません。営業部長、工場長、管理部門の責任者が、自分の判断と会社の利益・資金繰りを結び付けて考えられる状態をつくる必要があります。
まずは次回の経営会議で、幹部に売上の報告だけを求めるのではなく、「その売上から、いくらの利益が残ったのか」「そのために、いくらの現金が必要だったのか」を質問してみてください。
答えられなければ、幹部の能力が不足していると決めつけるのではなく、必要な数字を教え、定期的に確認する仕組みから整える必要があります。
組織改革と財務改善は、どちらか一方を先に終わらせてから、もう一方へ進むものではありません。
組織の役割を整理し、幹部に必要な数字を持たせ、経営会議で実行状況と財務への影響を確認する。その結果を踏まえて、設備投資や銀行対応を進めます。
この流れを一体として支援できるコンサルタントでなければ、組織は変わっても利益が残らない、融資は受けられても投資効果が出ない、といった問題が起こる可能性があります。
コンサルタントへ相談する際には、「組織をどう変えるか」だけでなく、「その結果、利益と資金繰りをどのように改善するのか」まで説明を求めてください。
5.会社が変わるまで伴走できるか
経営コンサルタントへ相談するとき、「伴走支援」という言葉を目にすることがあります。
しかし、伴走支援の内容は、コンサルタントによって大きく異なります。
月に一度、社長の相談を聞くだけの場合もあれば、経営会議へ参加し、幹部との面談を行い、決定事項の実行状況まで確認する場合もあります。
製造業の2代目社長がコンサルタントを選ぶ際には、「伴走します」という言葉だけで判断してはいけません。誰と、何を、どの頻度で確認し、どのような成果が出るまで支援するのかを具体的に確認する必要があります。
会社の改革は、一度方針を決めれば、そのまま順調に進むものではありません。
経営会議で原価改善を決めても、繁忙期になると後回しになることがあります。工場長に改善活動を任せても、日々の納期対応に追われ、進捗が止まることもあります。
先代と役割を整理しても、社員が従来の習慣から先代へ相談し続ければ、以前の状態へ戻ってしまいます。
新しい設備を導入しても、現場で使いこなせなければ、期待した利益は生まれません。
会社が本当に変わるためには、方針を決めるだけでなく、実行が止まった理由を確認し、修正しながら、成果が定着するまで繰り返す必要があります。
そのため、経営コンサルタントを選ぶ際には、提案や計画策定までではなく、会社の行動と数字が変わるまで関与できるかを確認してください。
5.1.実行状況を継続的に確認する仕組みがあるか
経営改革が進まない会社では、経営者や幹部に能力がないのではなく、実行状況を確認する仕組みがないことがあります。
経営会議で方針を決め、担当者も決めた。しかし、次の会議で進捗を確認していない。誰も確認しないため、日常業務が優先され、決定事項は少しずつ忘れられていく。
このような状態では、どれほど正しい改善策を決めても実行されません。
例えば、経営会議で「製品別原価を把握する」と決めたとします。
しかし、誰がデータを集めるのか、いつまでにまとめるのか、どの製品から始めるのか、結果をどの会議で確認するのかが決まっていなければ、作業は進みません。
また、担当者と期限を決めただけでも不十分です。
実行の途中で、必要なデータがそろわない、営業部門と製造部門で原価の考え方が異なる、通常業務が忙しく時間を確保できないといった問題が起きる可能性があります。
こうした問題を放置すると、「担当者がやらなかった」という結論になりがちです。
しかし、本当の原因は、担当者に必要な権限がなかったことや、他部門から協力を得られなかったことかもしれません。
実行確認とは、担当者を責めることではありません。なぜ止まったのかを把握し、進められる状態へ整え直すことです。
継続的に実行状況を確認するには、少なくとも次の項目を決める必要があります。
・何を実行するのか
・誰が責任者になるのか
・いつまでに行うのか
・どの状態になれば完了なのか
・途中経過をいつ確認するのか
・実行できない場合、誰へ相談するのか
・次回の経営会議で何を報告するのか
例えば、「在庫を減らす」という目標ではなく、「滞留在庫の一覧を営業部長と工場長が作成し、3か月以内に在庫金額を1,000万円削減する」と具体化します。
さらに、毎月の経営会議で、処分した在庫、売却した在庫、新たに発生した滞留在庫を確認します。
このように、期限と確認方法まで決めることで、実行が継続しやすくなります。
経営コンサルタントを選ぶ際には、定期面談の回数だけでなく、面談と面談の間に決定事項をどのように管理するのかを確認してください。
次のような質問をするとよいでしょう。
・経営会議の決定事項を、どのように記録しますか
・進捗状況を、どの頻度で確認しますか
・担当者が実行できない場合、どのように対応しますか
・社長だけでなく、幹部にも直接確認しますか
・計画と実績に差が出た場合、どのように修正しますか
・支援終了後も社内で運用できる仕組みを作りますか
毎月、社長から状況を聞くだけでは、実行支援とはいえません。
必要に応じて経営会議へ参加し、責任者本人から進捗を確認し、止まった原因を整理する支援が求められます。
また、コンサルタントがいなければ何も進まない状態を作ってはいけません。
支援期間中に、社長と幹部が自分たちで進捗を確認し、問題が起きたときに修正できる仕組みを作る必要があります。
伴走支援で最も重要なのは、コンサルタントがいつまでも会社を動かすことではありません。社長と幹部が、自分たちで決め、自分たちで実行を確認できる会社へ変えることです。
まずは、現在進めている改革について、責任者、期限、完了条件、次回確認日が決まっているかを確認してください。
一つでも曖昧な項目があれば、実行が止まる可能性があります。
5.2.成果を数字と事実で確認しているか
経営改革を行った後、「社内の雰囲気がよくなった」「会議で発言が増えた」「幹部の意識が変わった」と感じることがあります。
これらも大切な変化です。
しかし、感覚だけで改革の成果を判断していると、本当に会社が改善しているのか分からなくなります。
例えば、経営会議が活発になっても、決定事項が実行されていなければ、会社の業績は変わりません。
工場長が前向きな発言をするようになっても、不良率や外注費、残業時間が変わらなければ、現場の行動は変わっていない可能性があります。
売上が増えても、利益率が低下し、在庫や売掛金が増えていれば、資金繰りは悪化することがあります。
改革の成果は、印象だけでなく、数字と具体的な事実の両方で確認する必要があります。
製造業で確認すべき数字としては、次のようなものがあります。
・経営会議の決定事項の実行率
・会議で決めてから実行に移すまでの日数
・原価率や粗利益率
・製品別、取引先別の採算
・在庫金額と在庫回転期間
・不良率、手直し件数、返品件数
・残業時間や外注費
・設備の稼働率
・売掛金の回収期間
・営業利益と資金繰り
・借入返済後の現金残高
一方、数字だけでは捉えにくい変化もあります。
例えば、次のような事実です。
・会議後に先代へ個別確認する回数が減った
・工場長が自ら改善案を提出するようになった
・社長を経由せず、営業部長と工場長が問題を解決できた
・幹部が自部門の利益について説明できるようになった
・決定事項に責任者と期限が必ず記載されるようになった
・先代が社員へ直接指示を出さなくなった
・社長が日常業務から離れ、経営判断へ時間を使えるようになった
こうした事実を確認することで、組織の変化が実際の行動に表れているかが分かります。
重要なのは、支援を始める前に、何を成果として確認するのかを決めておくことです。
例えば、「経営会議を改善する」という目標だけでは、成果を判断できません。
「会議の決定事項のうち、期限内に実行された割合を、現在の40%から6か月後に80%へ引き上げる」と決めれば、成果を確認できます。
「幹部に数字を理解させる」という目標も同様です。
「各部門長が毎月、自部門の計画と実績の差、その原因、翌月の改善策を説明できる状態にする」と具体化します。
経営コンサルタントを選ぶ際には、支援開始前に現状をどのように確認し、どの指標で成果を測るのかを尋ねてください。
具体的には、次の点を確認します。
・支援前の状態を、どのように把握するのか
・どの数字を改善目標に設定するのか
・組織面の変化を、どのような事実で確認するのか
・成果を、どの頻度で振り返るのか
・目標どおりに進まない場合、何を見直すのか
・支援終了時に、どのような報告を行うのか
「幹部の意識が変わりました」「組織が活性化しました」という説明だけでは、支援の成果は判断できません。
数字と事実を組み合わせて説明できることが重要です。
成果を確認する目的は、コンサルタントを評価することだけではありません。どの取組が会社を変え、どこに改善余地が残っているのかを明らかにし、次の行動につなげることです。
まずは、現在行っている改革について、「何が変われば成功といえるのか」を三つ書き出してみてください。
売上や利益だけでなく、幹部や現場の行動についても具体的に決めることで、改革が進んでいるかを判断しやすくなります。
5.3.同じような会社の支援事例を説明できるか
経営コンサルタントのホームページを見ると、「製造業の支援実績が豊富」「事業承継を支援」「業績改善に成功」といった表現が並んでいます。
しかし、これらの言葉だけでは、自社と同じような問題を解決できるかは分かりません。
製造業といっても、会社の規模、製品、取引先、設備、組織体制はさまざまです。
創業者が経営する従業員10名の会社と、先代が会長として残る従業員40名の会社では、起きている問題が異なります。
また、同じ事業承継支援でも、株式移転や相続税対策を支援した事例と、承継後に会社が動かない問題を解決した事例では、必要な経験が異なります。
経営コンサルタントを選ぶ際には、実績の件数だけでなく、どのような会社に対し、どのような問題を、どのように解決したのかを確認してください。
自社と同じ業種であることだけでなく、会社の規模、承継後の年数、先代の関与、古参幹部の影響、財務状況などが近い事例を持っているかが重要です。
例えば、今回支援しているのは、売上約8億円、従業員約40名の製造業です。
事業承継から4年が経過していましたが、先代が会長として会社に残り、古参の工場長も強い影響力を持っていました。
現社長が原価改善や新規事業を決めても、現場では先代や工場長への確認が優先され、実行が止まっていました。
このような会社を支援した経験があるかを確認する場合、次の内容を質問します。
・会社の業種、売上規模、従業員数
・事業承継から何年経過していたか
・先代は、どのような立場で会社に残っていたか
・工場長や古参幹部と、どのような問題があったか
・相談前に、どのような取組を行っていたか
・なぜ、それまでの取組では解決できなかったか
・コンサルタントが具体的に何を実施したか
・社長、先代、幹部にどのように働きかけたか
・どの程度の期間で変化が表れたか
・数字と組織に、どのような成果が出たか
良い支援事例は、単に「売上が増えた」「利益が改善した」という結果だけではありません。
問題の背景、実施した支援、途中で起きた抵抗や停滞、それをどのように乗り越えたのかまで説明されています。
例えば、先代との権限整理を行った結果、社員が会長へ個別確認する回数が減った。経営会議を再設計したことで、決定事項の実行率が上がった。工場長に原価改善の責任を持たせたことで、不良率や外注費が低下した。
このように、支援内容と成果の関係が分かる事例が必要です。
一方で、守秘義務があるため、会社名や具体的な数字を公開できない場合もあります。
その場合でも、業種や規模を一部変更しながら、問題の構造、支援の進め方、成果を説明することはできます。
「守秘義務があるので何も話せません」という回答だけでは、支援経験を判断することができません。
経営コンサルタントへ相談する際には、「自社と似た会社の事例を、匿名で構わないので説明してください」と依頼してみてください。
その説明を聞きながら、次の点を確認します。
・問題の原因を表面的に捉えていないか
・社長への助言だけで終わっていないか
・先代や幹部、現場へ関与しているか
・組織と財務の両面を扱っているか
・成果を数字と事実で説明しているか
・成功した理由だけでなく、途中の失敗や修正も説明できるか
実際に現場へ入った経験があるコンサルタントであれば、支援が計画どおりに進まなかった場面や、幹部から反発を受けた場面についても具体的に説明できるはずです。
支援事例を確認する目的は、過去の成功話を聞くことではありません。そのコンサルタントが、自社で起こり得る抵抗や停滞を理解し、最後まで対応できるかを見極めることです。
自社とまったく同じ会社はありません。
しかし、会社が動かない原因や、先代・古参幹部との関係、経営会議が機能しない構造には共通点があります。
その共通点を理解しながら、自社の状況に合わせて支援方法を調整できるコンサルタントを選んでください。
会社が変わるまで伴走できるかどうかは、契約期間の長さだけでは判断できません。
実行状況を確認する仕組みがあるか。成果を数字と事実で測っているか。自社と似た会社を、どのように変えたのかを説明できるか。
この三つを確認することで、支援の実態が見えてきます。
まずは、候補となるコンサルタントに、次の三つを質問してください。
「決めたことが実行されない場合、どのように対応しますか」
「支援の成果を、どの数字と事実で確認しますか」
「当社と似た会社を支援した事例を教えてください」
会社を変えるために必要なのは、提案を受け取ることではありません。実行が止まるたびに原因を整理し、成果が定着するまで改善を続けることです。
まとめ
製造業の2代目社長が経営コンサルタントを選ぶ際には、知名度や料金、提案書の見栄えだけで判断してはいけません。
製造業の会社が動かなくなる背景には、先代との権限関係、古参の工場長や幹部の影響力、機能していない経営会議、製造原価、設備投資、資金繰りなど、複数の問題が絡み合っています。そのため、一つの分野だけに詳しい専門家では、表面的な改善にとどまる可能性があります。
確認すべきなのは、製造業と承継後の問題を理解しているか、先代や古参幹部との関係整理に対応できるか、経営会議へ入り実行まで支援するか、組織と財務を一体的に扱えるか、成果が定着するまで伴走できるかという点です。
経営計画を作ることと、会社を実際に動かすことは同じではありません。
どれほど正しい改善策でも、責任者と期限が曖昧であれば実行されません。先代と現社長の権限が整理されていなければ、社員は誰の指示に従えばよいか迷います。幹部が数字を理解していなければ、売上を増やしても利益や現金が残らないことがあります。
だからこそ、コンサルタントには、社長へ助言するだけでなく、先代、工場長、幹部との対話を通じて、役割、権限、責任を整理する力が求められます。さらに、経営会議で決めたことの実行状況を確認し、その結果を利益や資金繰りなどの数字で検証できなければなりません。
選ぶべきなのは、立派な答えを示してくれるコンサルタントではありません。社長と一緒に現場へ入り、止まっている原因を明らかにし、会社が自ら動ける状態になるまで支援するコンサルタントです。
まずは、候補となるコンサルタントに、自社と似た会社の支援事例を尋ねてください。そして、何を提案したかではなく、誰に働きかけ、何を実行し、組織と数字がどのように変わったのかを確認しましょう。
同時に、自社でも「誰が最終判断をしているのか」「会議で決めたことが実行されているか」「幹部が利益と資金繰りを説明できるか」を確認してください。
問題が見つかったとしても、悲観する必要はありません。曖昧になっている役割や意思決定の流れを一つずつ整理すれば、会社は変わり始めます。
コンサルタント選びを、外部へ仕事を任せるための手続きではなく、自社の経営体制を見直す最初の行動にしてください。
あなたは最高経営責任者として、どのようにコンサルタントを選ばれますでしょうか?
