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今週のコラム 第61話:地銀再編に伴う融資スタンス変更にはこう備えよ!

「地銀などで、合併や資本・業務提携などの動きは少し落ち着いてきたようですが、各地銀が独自に国連のSDGs(持続可能な開発目標)の目標の達成に応じて金利を優遇する融資や、コンサルティング業務・事業承継支援などを強化してきていますよね。この動きの中で何か気をつけておいた方がよいことがあれば教えてください。」──セミナーで講演させていただいた後の質疑応答で、サービス業の経営者の方からのご相談です。

2022年4月の東京証券取引所の市場再編に伴い、グローバル企業向けの「プライム」市場を選んだ地銀もあれば、中堅企業向けの「スタンダード」市場に変更する地銀もあり、吸収合併や資本・業務提携は話題になっていませんが、地銀再編に向けての3つの施策(期間限定)と金融庁マニュアル廃止の影響で、これからが再編の正念場だと思います。

【地銀再編に向けての3つの施策(期間限定)】

地銀再編については、以前のコラム(第19話:経営者が備えたい地銀再編への準備) でもコメントさせていただいておりますが、地銀再編に向けての3つの施策が期間限定で実施されています。
①日銀の経営改善支援(22年度末まで)
②独占禁止法の適用除外とする特例法(30年11月まで)
③経営統合にかかるシステム関連費用の3分の1を補助する交付金制度(26年3月末)

また、地銀の足元業績は好調だが、急増した実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)による金利収入が増えたものです。このため、今後も好調を持続できるかは不明であり、ニューノーマルが定着した後に不良債権が急増するリスクもあります。

地銀は株式会社であり、信金・信組のような相互扶助を理念とした組織ではありません。
このため、(政府や日銀、金融庁の圧力もあり)従来のやり方で稼げないのであれば、上記期間限定の3つの施策が終了するまでにビジネスモデルを変革して、何がなんでも稼いでいく必要があるのです。そして、それができなければ規模を確保するための合併などを選択せざるを得なくなります。

【「金融庁検査マニュアル」の廃止】

更に、もう一つ大きく地銀の融資スタンスに影響を及ぼす可能性があることがあります。

バブル崩壊後の残債処理のために1999年に「金融庁検査マニュアル」が制定され、2019年12月18日に廃止されるまで、各地銀はこれに基づいて融資・査定をしていました。

「金融庁検査マニュアル」は約400ページに渡り、金融機関の業態などによりいくつもの別冊が制定されていました。バブル崩壊後の金融機関の資産(=融資)ポートフォリオの査定基準を画一化するために、格付や区分の仕方など、細かく規定されていましたので、銀行は特に考えるまでもなく、それに従って融資・査定をしていればよかったのです。

しかし、バブル崩壊後の残務処理も目処がついたということで、「金融庁検査マニュアル」は廃止されました。今後は、各銀行で独自の格付や区分に基づいた、自己査定が本格化してきます。

「金融庁検査マニュアル」の廃止に伴い、融資の審査姿勢が次のように変わります。

<これまで:「金融庁検査マニュアル」による融資>
①形式重視:担保や保証を必要以上に重視
②過去重視:事業の将来性よりも過去の健全性を重視
③部分重視:企業の資産査定(格付など)を重視

<これから:「金融庁検査マニュアル」廃止後の融資>
①実態重視:企業の事業内容を評価
②未来重視:将来の見通し、経営計画を評価
③全体重視:非財務情報・営業力・販売力などを評価

「実態重視」とは、担保や保証に依存せず、個々の企業の事業内容をきちんと評価することです。

「未来重視」とは、過去の決算書等の数値分析ではなく、将来の見通しや経営計画がどうなっているのか、その実現可能性はどうなのか?ということを重視していくことです。

「全体重視」とは、財務内容の分析だけでなく、ビジネスモデルや取引関係、技術力や販売力、経営者の経営姿勢、ミッション・ビジョン・バリューなど決算書には表れない非財務情報も評価していくことです。

これまでとは大きく異なり、融資先企業の事業内容や将来性を評価した「事業性評価融資」や、担保・保証にとらわれない融資に積極的に取り組むことで、特に運転資金などの増加が期待されているのです。

極端な話、これまでは過去の財務内容で自己資本比率の多寡が格付の主な決定要因であり、案件毎に担保や保証の有無などで融資の審査がなされていましたが、今後は、それ以外の要素をきちんと盛り込んで、企業の実態・未来・全体を審査されるようになるのです。

このため、経営計画書の重要性が今後ますます増加してきます。経営計画書の巧拙が融資の審査に大きく影響してきますので、大変ですが経営計画書の策定は経営者にしかできないことですので積極的に策定してください。

「金融庁検査マニュアル」の廃止により、各銀行独自の格付や区分に基づいた自己査定が前提となりますが、これまで同様に「金融庁検査マニュアル」に基づく自己査定が否定されるものではありません。これまで同様の格付や区分に基づく自己査定も許容されています。

メガバンクや上位地銀などでは、独自のモデルによる格付や区分、デフォルト率による貸倒引当金の計上が可能ですが、その他の金融機関では独自のモデルがないために、これまで同様に「金融庁検査マニュアル」に基づいた対応になっています。

このため、現時点では「金融庁検査マニュアル」廃止の影響を全く感じていない経営者の方が多いと思いますが、今後、各銀行が独自の特色を出してくることが見込まれますので、是非とも今のうちから準備なさっておいてください。経営計画書の策定が、地銀再編に伴う融資スタンス変更に備えることにつながるのです。

金融検査マニュアルが廃止されたということは、今後は銀行の経営陣についても、どのような経営方針に基づいて融資や資産運用をするか、経営環境をどのように捉えていくかが問われることになります。

例えばある地域の銀行が「地元の中小企業に対して将来性を考えた支援を実施し、足元の業績が不振であったとしても再生支援を強化(コンサルティング)して融資を続けていく」という経営方針をとったとすれば、実際の営業現場で経営方針実現のためどのような工夫をしているか、その巧拙によって貸し倒れが発生する件数が増減することになります。そして、その貸倒実績値をベースに貸倒引当率が算出され、銀行経営に反映されることになるのです。

例えば、アパートローン融資に特化する、地元以外の地域への「越境融資」などを強化する経営方針を立てた銀行が出てくれば、これまでに実行してきたそれらの融資ポートフォリオを計測し、アパートローン、越境融資それぞれの実態に応じた貸倒実績値を使うこととなるのです。

このように、金融庁検査マニュアル廃止の影響は、地銀再編の有無に関わらず、銀行経営陣の融資スタンス変更という視点からも、今後は「経営計画書」がとても重要になってきます。というのも、これまでは「金融庁検査マニュアル」があり、各銀行は「金融庁検査マニュアル」にさえ基づいて融資・査定をしていればよかったので、極端な話、考える必要がなかったのです。

先ほどもご説明しましたが、「金融庁検査マニュアル」廃止後の融資では、下記3点が重要になりますので、経営計画書にきちんと盛り込んでください。
①実態重視:企業の事業内容を評価
②未来重視:将来の見通し、経営計画を評価
③全体重視:非財務情報・営業力・販売力などを評価

そして、あなたが経営する会社の将来の姿に合致する地銀を、あなたが選ぶことで地銀再編を効果的に活用できるはずです。

最近の事例では、下記が公表されています。

「足利銀行は国の脱炭素実現のための金融支援に関する指定機関になった。産業競争力強化法に基づくもので、事業者は国に提出した計画に対する成果に連動して指定機関の利下げを受けられる。脱炭素に関連する融資メニューを広げ、地域企業の事業変革を後押しする。この指定を受けるのは地方銀行で初めて。

この制度の貸付期間は最短7年。国から認定を受けた企業は複数の指定金融機関から融資を受けられ、1社が借りられる上限は500億円となっている。事業者が制度に申請するにはカーボンニュートラルに関する10カ年以上の計画の提出が求められる。足利銀は必要に応じて計画策定の支援も行う。」(2022年3月3日の日経新聞より)

「中四国でも中小企業の事業承継を支援する動きが相次ぐ。広島銀行が支援ファンドを設立するなどサービスが広がる広島県は後継者不在率の改善幅が全国で4位になるなど成果が出てきた。香川県信用保証協会は2021年6月に専門組織を設置し、事業承継の多様な相談に応じる。後継者確保・育成は地域経済の底力に関わる。一朝一夕にはいかないだけに、手間をかけ知恵を絞る必要がある。

広島銀行は20年、総額20億円の事業承継ファンドを立ち上げた。これまでに100件以上の相談が寄せられており、出資件数は2億円。支店の担当者が取引先を回るなかで承継に関する相談に乗り、後継者がいない場合、ファンドによる出資も選択肢とする。新たなオーナーが見つかるまで、5年を目安として銀行が株式を保有する。」(2022年3月3日の日経新聞より)

このような状況をきちんと認識した上で、地銀再編に備えるだけでなく、銀行取引についても見直ししてみてはいかがでしょうか?

あなたの会社にとって、どのような銀行が必要でしょうか?
また、必要な銀行取引はどのようなものでしょうか?
あなたの会社の今後の発展のために、現在取引している銀行は本当に必要でしょうか?

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