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今週のコラム 第66話:地域一番を目指すことが経営者としてなぜ必要なのか?

「ニューノーマル時代に入り、地元での売上が頭打ちになったことから、日本最大の消費地である東京進出をしようと考えています。自宅勤務へのシフトなどで、東京の賃料も下がってきているので、絶好の進出機会だと思うのですが、いかがでしょうか?」──売上8億円程度の関西圏の食品会社経営者の方からのご相談です。

確かに、関西圏の経営者の方から見たら、東京は最大の消費地ですので、売上が上がると考えられていてもおかしくはありません。東京でも、空きオフィスが増えてきて、比較的築年数の浅い物件でも、以前に比べれば破格の値段で借りることができるようになってきました。

単純に東京進出をコストだけで考えれば、こんな好機を逃すのはもったいないと思う気持ちもわかります。

ただし、東京進出のコストのうち、賃料だけで判断するのは時期尚早ではないでしょうか?本当に東京進出しても利益を確保した上で売れるのかが一番検討すべき課題です。

私からは、「ニューノーマルで賃料は下がったかも知れませんが、賃料だけでなく、資源・原材料高騰、政情不安など数多くの危機要因があります。これらの危機要因に対応できるだけの価格決定権はお持ちでしょうか?例えば、原材料が一気に2倍になったとき、その上昇分を価格に転嫁して値上げをすることができますでしょうか?」とご質問させていただきました。

価格転化ができずに、過当競争に巻き込まれるようであれば、東京進出することで「大火傷」を負うことも十分に考えられますので、このような質問をさせていただいたのです。

「価格転嫁ですか・・・東京に進出するので、ある程度はできるかと思いますが・・・」と今にも消え入りそうな声で回答をいただきました。

経営者の皆さんからの「甘い!!!東京はそんなに甘いところじゃないぞ!(怒)」という声が聞こえてきそうですね(笑)

私からは、「何を根拠に、『東京に進出するので、ある程度は価格転嫁できる』と思われていらっしゃるのでしょうか?」と再度質問させていただきました。

「何を根拠にと言われましても・・・売上を増やすために、大消費地である大都市に進出するので・・・東京進出の次は名古屋に進出しようかと考えていました。」と根拠というよりは、この経営者の方の漠然としたイメージを教えていただく結果に・・・(汗)

「それでは、質問を変えましょう。
社長の会社の市場占有率は何%でしょうか?
全国では○○%、関西圏では○○%、県内では○○%、□□地域では○○%、というようにお答えください。」と質問させていただくと・・・

「市場占有率ですか?占有率という視点で考えたことがありませんので、あくまで私のイメージですが、全国では1%、関西圏では2%、県内では4%、□□地域では50%程度だと思います。」との回答がありました。

「□□地域で50%とは素晴らしいですね。
それだけの占有率を確保できているのであれば、競合他社が攻めてくることもなく、いい商売ができているのではないですか?」と重ねて質問させていただくと。

「そうですね。□□地域では他社と競合することもなく、ありがたいことに当社のやりたいように商売させていただいております。」との回答をいただきました。

「50%もの占有率となると、『主導的占有率』である40%以上の占有率を獲得できていますので、おっしゃるようにその地域の主導権を握れているはずです。価格決定権も出てきますので、経営者であるあなたの努力次第では競合他社を寄せ付けないだけでなく、さらなる占有率の獲得も可能となります。」

「東京進出を検討されているとのことですが、新しい地域に進出を検討される際には、『主導的占有率』である40%以上の市場占有率を獲得できるか否かをベースに判断してください。」

「是非とも、現在の□□地域だけでなく、その他の地域でも主導的占有率を是非獲得していただき、あなたの会社が主導権を握るようにしてください。主導的占有率を獲得できる見込みのある地域はどこになりますでしょうか?東京も『主導的占有率』である40%以上の市場占有率を獲得できるのであれば対象地域となりますが・・・」と私からは質問させていただきました。

「40%以上の占有率となると非常に限られますね。競合他社の強い地域は対象外にしなければなりませんし、東京は問題外ですね・・・」
「○○地域、▽▽地域、◎◎地域ならば、可能性があると思いますし、現在の人員でも対応できるはずです。」と経営者の方からのご回答でした。

もうおわかりですよね。
あなたが経営者として、攻める地域は『主導的占有率』である40%以上の市場占有率を確保できる地域なのです。

ご参考までに、市場占有率について簡単にご説明します。
<占有率区分>
次の4つに区分されます。
①独占的占有率 70%以上
②主導的占有率 40%以上
③一人前占有率 25%以上
④限界的占有率 10%以下

①独占的占有率 70%以上
 このような占有率だと、文字通り独占的であり、絶対的な強みを持った状態となります。
ただし、絶対的であるが故に、競合他社が現れず、無競争に近い状態になることがあります。
このような場合、技術開発などを怠り、顧客に対する対応が高飛車になって、取引先に嫌われていることもあるのです。そのような状況で、もし競合他社が突然現れたとき、鞍替えされてしまい、大きく占有率を奪われる場合もありますので、十分留意する必要があります。

②主導的占有率 40%以上
 これくらいの占有率が確保できると、その市場の主導権を握ることができます。価格決定権も出てきますので、努力次第では競合他社を寄せ付けないだけでなく、さらなる占有率の獲得も可能です。経営者として、是非とも主導的占有率を確保するようになさってください。

③一人前占有率 25%以上
 顧客に対する知名度が高くなり、販売しやすくなるとともに、同業他社からも一目置かれるようになります。これくらいの占有率を確保できるようになると、これまでの努力が報われて、利益面でもあなたが経営者として考えている水準を確保できるようになります。

④限界的占有率 10%以下
 文字通り、この占有率では生き残ることができません。知名度は低く、売上増加が極めて難しく、利益面ではディスカウントが常態化して採算スレスレまたは赤字となります。生き残るためには、市場を細分化して、商品を絞り、これを死に物狂いで販売するしかありません。そして、市場で生き残るための占有率を何としても獲得するのです。

あなたが経営する会社の占有率はどうでしょうか?

例えば、「当社の全国シェアは限界占有率であるが、関東地域では限界占有率以上・一人前占有率未満であり、県内シェアでは一人前占有率、特定地域では独占的占有率」となっていれば、中小企業として十分に戦っていける占有率だと思います。

特に、中小企業の経営者の方は、市場占有率という認識をされている方が少ないので、自社の占有率をイメージできない方も多いのではないでしょうか?

時間がかかるかもしれませんが、是非ともあなたの会社の占有率を明確にしてください。市場占有率が、その地域での市場の地位を表しているので、今後あなたの会社がどのように市場戦略をしていくべきなのかが、これでわかるようになります。

これまで、市場占有率という捉え方をせずに、単純に売上高の伸び率だけで捉えていたのであれば、是非とも市場占有率をベースにしていただき、その合計値である売上高はあくまでその結果的であると認識を新たにしていただければ今後の戦略立案も楽になります。

売上高ではなく、市場占有率をベースにしていただき、市場を細分化することにより、どのように占有率を上げていくかを検討することで、あなたの会社が置かれている立ち位置や戦略が決まってくるのです。

「業界占有率が低くても、特定の地域での占有率が高いこと」
これが中小企業の生き残り条件なのです。

つまり、市場を細分化して、そのひとつひとつの占有率を考え、どのようにして占有率を上げていくのかが戦略となるのです。

細分化はあなたの会社の都合で決めていく必要があります。
地域細分化、商品別細分化、顧客別細分化、などなど、いくらでも切り口はあります。

ただし、産業用機械などは、地域細分化することは難しいので、「●●機械の占有率」ではなく、「高級●●機械の占有率」としたり、「官公庁需要」と「民間需要」に分けて、民間需要をさらに「大手」と「中小」に細分化したりします。

また、商品・サービスの大きさや格の違いによって、「大型」「中型」「小型」や、「高級」「中級」「低級」という細分化もできます。このように、市場細分化はどのようにでもできるのです。その無限の細分化の中から、「あなたが商品・サービス、市場、顧客をどのように細分化して市場戦略を立案・実践するのか」を決定するのです。

これにより、あなたの会社の商品・サービスの商品構成、対象市場、対象顧客について、明確な戦略が立てられるとともに実践できるようになるのです。

そして、細分化された地域毎に『主導的占有率』である40%以上の市場占有率することで地域一番となり、その地域での知名度や信用力が高まります。その市場の主導権を握ることで、価格決定権が出てくるなど収益性が向上します。

地域一番となることで、販売促進、配送、情報までもが極めて効率的に行うことができるようになります。これによって得た新たな戦力を、新しく『主導的占有率』である40%以上の市場占有率を獲得できる地域に投入し、新しい地域でも地域一番となるのです。

こうして、次々と「地域一番」を作り上げていくことで、最終的には「日本一という完全制覇」が成し遂げられるのです。

安易に、日本最大の消費地である東京進出をしようと考えるのではなく、地域一番で企業体力をつけた上で、東京でもどの地域なら『主導的占有率』である40%以上の市場占有率を獲得できるかを考えた上で進出していってください。

あなたは経営者として、どのような地域で地域一番の市場占有率の獲得を目指されますか?