ビジョン実現コンサルティング

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今週のコラム 経営者なら経営計画書に自らの魂を込めよ!

「ゴールデンウイーク前までにIT補助金申請を終わらせようと頑張っていたのですが、経営計画書がネックとなり、いまだに申請が出来ておりません。一時は補助金申請を諦めようかとも考えたのですが、髙窪先生のコラムに励まされてこのGW中に私なりの言葉で経営計画書をまとめたいと思います。簡単に留意点を教えていただけませんでしょうか?」 ── とある飲食関連事業の経営者の方からのご相談です。

従来、景気刺激策として企業への補助金・助成金は大々的に行われていましたが、昨今の感染症拡大などに伴う環境変化対応として、更に踏み込んだ補助金・助成金がされています。

従来の補助金・助成金は、極めて表面的な経営計画の数値が記載・申請されていましたが、最近は実施効果測定を求められることが多くなってきたこともあり、今回のご相談のように経営計画書の提出または経営計画を記載した上での申請が求められるようになったのです。

個人的には、非常に好ましい方向になってきていると感じています。
経営者が中小企業診断士などの専門家に相談した上で、補助金・助成金の申請を行うことで、専門家による第三者の視点で経営計画が見直されることになりますので、従来よりは確実に客観的な申請内容になってきているはずです。

例えばIT導入補助金2022であれば、<経営計画>にて、
「1.企業概要」、
「2.顧客ニーズと市場の動向」、
「3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み」、
「4.経営方針・目標と今後のプラン」
が求められます。

また、<補助事業計画>でも、「Ⅰ.補助事業の内容」として
「1.補助事業で行う事業名」、
「2.販路開拓等(生産性向上)の取組内容」、
「3.業務効率化(生産性向上)の取組内容【任意記入】」、
「4.補助事業の効果」
について作成する必要があります。

そして、「経営計画・補助事業計画等の作成にあたっては商工会・商工会議所と相談し、助言・指導を得ながら進めてください。」とのことで、中小企業診断士が相談に乗ってくれることになっています。

このため、留意点として私から申し上げたことは、「相談に乗っていただいた中小企業診断士などの専門家と、経営者として正面から対峙した上で『あなたの魂』を込めた経営計画書を策定していただきたい。」ということです。

更に付け加えさせていただくとすれば、「経営者であるあなたが全身全霊をかけて作成した経営計画書なので、目標値と実際の数字に大幅な差が出ても目標を修正せずに、如何にして目標を達成するかを経営者の覚悟で挑んでいただきたい。」

特に、はじめての経営計画書の作成は、経営者を本当に悩ませます。これまで、自分の頭の中に断片的にしかなかった事柄を、散々苦しんで、どのようにすべきかを考え、それを経営計画書としてまとめるのですから、2ケ月や3ケ月かかることはよくあります。
その目標値と実際の数字が大幅に乖離するとなると・・・

手塩に掛けて育てた経営計画書の数字が大幅に乖離してくると、目標値を減額して帳尻を合わせたくなる気持ちは分かりますが、年度中の目標値変更は絶対にしないようにしてください。

他の誰かが勝手に作った目標値ではありません。経営者であるあなたが作った数字ですので、今期中はトコトンこだわってください。あなたがこだわらなければ、従業員は誰もついてきません!

辛いことだとは思いますが、ここは経営者としての「覚悟」と「胆力」を発揮してください。

混沌とした状況下だからこそ、経営者として会社の舵取りをするための羅針盤ともいうべき「経営計画書」を策定して、それを書面にした上で従業員の方々に徹底・実践してもらわなければならないのです。

また、「経営計画書」の巧拙は、今後の銀行・信金との取引についても大きな影響を及ぼすことも視野に入れておかなければなりません。

というのも、バブル崩壊後の残債処理のために1999年に制定された「金融庁検査マニュアル」が、2019年12月18日に廃止されており、今後は各銀行で独自の格付や区分に基づいた、自己査定が本格化してきます。

「金融庁検査マニュアル」の廃止に伴い、融資の審査姿勢が次のように変わります。

<これまで:「金融庁検査マニュアル」による融資>
①形式重視:担保や保証を必要以上に重視
②過去重視:事業の将来性よりも過去の健全性を重視
③部分重視:企業の資産査定(格付など)を重視

<これから:「金融庁検査マニュアル」廃止後の融資>
①実態重視:企業の事業内容を評価
②未来重視:将来の見通し、経営計画を評価
③全体重視:非財務情報・営業力・販売力などを評価

「実態重視」とは、担保や保証に依存せず、個々の企業の事業内容をきちんと評価することです。

「未来重視」とは、過去の決算書等の数値分析ではなく、将来の見通しや経営計画がどうなっているのか、その実現可能性はどうなのか?ということを重視していくことです。

「全体重視」とは、財務内容の分析だけでなく、ビジネスモデルや取引関係、技術力や販売力、経営者の経営姿勢、ミッション・ビジョン・バリューなど決算書には表れない非財務情報も評価していくことです。

極端な話、これまでは過去の財務内容で自己資本比率の多寡が格付の主な決定要因であり、案件毎に担保や保証の有無などで融資の審査がなされていましたが、今後は、それ以外の要素をきちんと盛り込んで、企業の実態・未来・全体を審査されるようになるのです。

このため、経営計画書の重要性が今後ますます増加してきます。経営計画書の巧拙が融資の審査に大きく影響してきますので、大変ですが経営計画書の策定および計画の達成は経営者にしかできないことであり積極的に対応してください。

単なる数字のお遊びではなく、経営者であるあなたの魂が入った経営計画書がどれほど従業員を奮い立たせるか、ご自身で実感してください。本当の意味で、「経営者の醍醐味」が味わえるはずです。

あなたは「経営者としての魂を込めた経営計画書」で、経営者の醍醐味を味わいたいですか?

それとも、これまで同様のどんぶり勘定で羅針盤もなく混沌とした世の中を航海されるのでしょうか?