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今週のコラム 第83話:経営者は仕組みでパワハラを撲滅して、士気を高めよ!

「今年4月からパワハラ防止法が、我々中小企業にも適用されるようになり、パワハラ問題を無視できなくなりました。対応しなければいけないとはわかっているのですが、どう対応していけばいいのかサッパリわかりません。専門外であることは承知していますが、何かヒントはいただけないでしょうか?」──営業代行業の経営者の方からのご相談です。

パワハラ問題については、パワハラ防止法で基準が明確化されているのですが、仕事熱心な経営層や幹部が無自覚でパワハラを行なってしまう場合もあり、実際の運用が悩ましいものです。

特に、我々中小企業では、会社=家族というイメージで、全社一丸となって業務に邁進する必要があり、そうでないと厳しい状況下で勝ち残っていけません。
このため、仕事熱心であればあるほど、指導や叱責が厳しくなる傾向にあります・・・

実際に、新入社員が「上司にパワハラされたので、会社と上司に損害賠償を請求し、退職する」という事態になってしまってからでは遅いのです。我々中小企業では、従業員が1人でも欠けると、大幅な戦力ダウンとなります。そもそも、限られた人員の中で対応していますので、日常業務でさえも滞ってしまうことになるのです。

また、退職には至らなかったとしても、パワハラの被害者だけでなく加害者も含めた、全ての従業員が快適な労働環境で働けない職場では、圧倒的な成果はとても期待できません。

全従業員に快適な労働環境で働いてもらうために、経営者であるあなたがいかにして環境を整えるのかが、今後の会社発展のキーポイントになるのです。

パワハラについては、パワハラ防止法で基準が明確化されているので仕組み化はそれほど難しくはありません。実際、我々中小企業に導入される以前から適用されている大企業では、基準に基づいた運用がなされています。

実際の法令を見てみましょう。ご存知のように、パワハラ防止法は「改正 労働施策総合推進法」の通称で、2020年6月1日から大企業に、2022年4月1日から中小企業にも適用されることとなりました。

<ご参考 下記より抜粋>
労働施策総合推進法に基づく「パワーハラスメント防止措置」チラシ(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000855268.pdf

これによると、職場における「パワーハラスメント」の定義は、下記3点全てを満たす行為となります。
① 優越的な関係を背景とした言動
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
③ 労働者の就業環境が害されるもの

なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は該当しません。

また、職場におけるパワーハラスメントの代表的な言動の類型、該当すると考えられる例も例示されていますので、確認してください。

では、経営者であるあなたが実際に何をすればいいのでしょうか?
「職場におけるパワーハラスメントを防止するために講ずべき措置」とは?として、事業主が必ず講じなければならない具体的な措置も下記の通りに示されています。


★事業主の方針等の 明確化および周知・啓発
①職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
②行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等文書に規定し、労働者に周知・啓発すること

★相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
④ 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること

★職場におけるパワハラに関する事後の迅速かつ適切な対応
⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥ 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
⑦ 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
⑧ 再発防止に向けた措置を講ずること (事実確認ができなかった場合も含む)

★併せて講ずべき措置
⑨ 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
⑩ 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

※労働者が事業主に相談したこと等を理由として、事業主が解雇その他の不利益な取り扱いを行うことは、労働施策総合推進法において禁止されています。

如何でしょうか?
既に、会社を仕組みで回されている経営者であれば、普通に仕組みをひとつ増やすだけですので簡単だと思います。これまで同様、仕組みづくりをしていってください。大企業は基本的に仕組みで会社が回っていますので、この制度が導入されたときにそれほど負担感なく対応ができていました。

問題なのは、これまでマニュアルさえも整備されていない我々中小企業です。
マニュアルさえも整備されていない状況下では、何をどのようにすればいいのかイメージさえも持てないのが正直なところだと思います。

上記①から⑩について、実際にパワハラが起きたと仮定して、それを防ぐためにどのような対応をしていくべきか、一連の流れを整理した上でマニュアルを作成しましょう。既に、項目が例示されていますので、短期間でつくることができるはずです。会社の仕組みづくりの練習だと思って取り組んでください。

最初は荒削りなマニュアルになっても構いません。
まず、明文化することが大事なのです。我々中小企業で多いことは、口頭ベースでのやりとりが中心で、マニュアルのように明文化されたものがなく、実務が担当者の頭の中にしかないのです。

このため、実務が担当者にしかわからず、属人化してしまい、担当者が病気などで休んでしまうと「○○さんに聞かないと分からない。どうすればいいんだ・・・」と全く実務が回らなくなってしまうのです。

でも、マニュアルなどで明文化すると、実務が会社の業務として平準化できますので、ベテランに頼らずに新人でも対応が可能になります。ブラックボックスがなくなるので、休暇も取得させることがやりやすくなりますし、人材を適材適所に配置することが可能になります。

パワハラのマニュアルができたところで、イメージができてきたと思いますので、今度は通常業務を仕組みで回せるように仕組みづくりをしていきましょう。目指すべきゴールは、マクドナルドなどのファストフード店の仕組みです。

ファストフード店では、従業員がやらなければならない手順について、事細かく定められたマニュアルがあります。さらに、そのマニュアルを実施・更新していくための運営がなされています。

ファストフード店の仕事内容は、接客やレジ、店内での調理や清掃という4つの業務があります。そして、それぞれの業務にマニュアルがあり、全体が流れるようにまとめられています。だからこそ、学生や主婦のアルバイトで切り盛りすることができるのです。

これと同じように、あなたが経営している会社の業務を抽出し、それぞれの業務の内容を抽出・マニュアル化した上で、全体の業務が流れるように整えてみましょう。

そうすることで、実務が会社の業務として平準化できますので、ベテランが退職したとしても、明日からの実務が滞ることがなくなるだけでなく、実務の効率化も図れます。また、マニュアルがあれば、新人や中途採用者も、実務を独学することができるので、人材教育もやりやすくなり定着率も向上します。

このマニュアル化や仕組みづくりができていれば、今後、業績を拡大して会社を増やす場合でも非常に役に立ちます。新規事業や異業界で会社を立ち上げて、グループ経営をしてく際に、それぞれの実務・業務を抽出し、それぞれの業務の内容を抽出・マニュアル化した上で、全体の業務が流れるように整えれば会社組織ができあがるのです。

これができるようになってくると、グループ企業での経営が可能となり、売上高も10億円→30億円→100億円→数百億円といった具合に、売買ゲームのように増やしていくことができます。

そして、仕組みづくりができているので、グループ会社を数社経営していても、経営者としての負担は少ないのです。仕組みづくりができていない会社を1社経営しているときよりも負担が少ない場合が多いくらいです。

これまで、仕組みづくりができていないのであれば、是非ともパワハラ防止法を契機として実践してみてください。仕組みづくりで、グループ経営という経営者の醍醐味を味わい尽くしてください。