ビジョン実現コンサルティング

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今週のコラム 部下を論破してしまうと建設的な意見がでなくなると自覚すべし!

「何でも私がやってしまうのがいけないことは、わかっているつもりなのですが、つい自分でやってしまうのです。自分でやるだけではなく、部下がとてもいい意見具申をしてくれたときも、ついつい余計なアドバイスをしてしまって(汗)・・・貴重な意見具申を論破してしまったような結果になってしまい、その後、意見具申がなくなってしまいました。もっと、部下が自発的に意見具申をして、どんどん会社を変えていって欲しいのですが、どうすればよろしいでしょうか?」──当社セミナー後の個別相談会で、物流業を営む社長からのご質問です。

「社長!もう貴社の会社としての成長ステージが変わっているのですから、(やりたくなる気持ちがわかりますが)私に任せて、口も手も出さないでください!」とお伝えしました。

というのも、50歳を目前に一念発起で独立・起業され、その後は紹介だけで大手企業との取引を多数獲得するなど、オーナー社長兼トップ営業マンとして20年以上最前線でご活躍され、地域一流企業へと成長させてこられました。

もともと研究熱心で、あだ名が「学者」とされているだけあって、非常に博識であるだけでなく、好奇心が旺盛で何でも自分でチャレンジしなければ気が済みません。そして、とても器用なので、何でもできてしまうのです。そうでなければ、一念発起で独立・起業しませんし、その後の会社の成長もありません。

その一方で、従業員はあくまで会社員として、オーナー社長に雇われていますので、同じレベルの能力を求める事自体がナンセンスなのです。

【創業期・成長期・成熟期での社長の役割】

①創業期

50歳を目前に一念発起で独立・起業され、それ以降、事業を継続・発展させるためには、研究熱心かつ非常に博識であるだけでなく、好奇心が旺盛で何でも自分でチャレンジするとともに、とても器用で何でもできてしまうという性格やスキルは、創業期には不可欠です。

独立後は、まるで水を得た魚のように、イキイキとご活躍されていたであろうことは、容易に想像できます。

②成長期

成長期では、この社長の性格やスキルは非常に有効で、地域一流企業へと成長する原動力となってきました。でなければ、一代で地域一流にまで成長させられません。

ただし、成長期には、会社の成長に合わせて人材の確保と稼ぐビジネスモデルをベースにした仕組みづくりが不可欠です。会社を組織で回す仕組みづくりがなされなければ、ある一定の売上以上に成長することができません。

一般的には、3億円、5億円、10億円の壁があります。どうしても、この売上高の壁を超えられないようであれば、その売上規模に見合った仕組みづくりができていないことになります。

③成熟期(=安定期)

ご相談いただいた社長の場合、あと数年で創業30年を迎えるとともに、社長自身もすでに後期高齢者であることから、企業の成長サイクルとしては成熟期であると認識しなければなりません。

成熟期といっても、そこで成長がストップするわけではなく、一度立ち止まって組織体系や業務全体を見直し、更なる成長を遂げるために必要なフェーズなのです。成長が踊り場に差しかかり、良い意味で安定する段階ですので、安定期とも呼ばれることがあります。

組織体系や業務全体を見直し、会社を組織で回せる仕組みづくりを行うのに最適な時期なのです。会社を組織で回せる仕組みを構築することで、更なる事業拡大により全国展開を目指したり、IPO(株式上場)を検討することが可能になります。また、後継者への事業承継も、会社を組織で回せる仕組みを構築することができれば、誰にでも承継させることが可能になります。

ただし、きちんと会社を組織で回せる仕組みを構築できず、利益を継続して稼ぎだすことができないと、すぐに衰退が始まってしまいます。そうなってしまうと、更なる事業拡大やIPO(株式上場)どころか、事業承継さえも頓挫してしまうことになります。このため、常に新たなビジネスモデルの構築や新規事業への取り組みを行うことが不可欠です。

ちなみに衰退しないために稼ぐべき利益は、営業利益率12%超を基準にしていただければ、間違いありません。もし、社長であるあなたが、営業利益率12%超が現実的でないと考えるのであれば、ビジネスモデル自体が儲かるビジネスモデルではありませんので、是非とも儲かるビジネスモデルへの転換を図ってください。

【従業員からの意見具申について】

①オーナー社長の立場からみると

ご相談いただいた社長の場合、きちんと会社を組織で回せる仕組みが構築できておらず、社長が孤軍奮闘している状況が続いていました。せっかく、従業員から意見具申が出てきた時も、ついつい余計なアドバイスをしてしまい、貴重な意見具申を論破してしまったのです。

その後、意見具申がなくなってしまいましたとの社長のコメントにもあるように、絶対君主のオーナー会社になってしまったことから、非常に危険な状況に陥っています。

②従業員の立場からみると

意見具申した従業員は、それこそ会社員生命を賭けてまで、絶対君主のオーナー社長に意見具申したにもかかわらず、他の従業員の前で社長に論破されてしまったのです・・・(汗)

会社員を経験されたことのなる社長であれば、この事態がどれほど従業員を傷つけたかが、おわかりになると思います。従業員からすれば、「クビになるかもしれないけど、勇気を振り絞って意見具申したのに・・・みんなの前で恥をかかされた(泣) もう金輪際、社長には意見具申しない!」となっても仕方ありません。

そして、それを見ていた他の従業員も、「社長に何を言っても、論破されるだけだから、何も言わないで言われたことだけやろう。」となってしまいます。

③オーナー社長と従業員の立ち位置の違い

当たり前ですが、オーナー経営者と従業員の立ち位置は決定的に違います。雇う側と雇われる側の違いなので、雇う側が「黒」といえば、真実が「灰色」であろうが、「白」であろうが、どうであれ「黒」なのです。

雇う側が「黒」といっているにもかかわらず、雇われる側が「灰色」だとか、「白」だとかいっていたとしたらどうでしょうか?

会社という組織の中で、統率がとれなくなりますので、雇う側からすれば「強制的に排除」しなければなりません。また、雇われる側も、一人だけ反旗を翻していても意味がないので、「自主的に離脱」することになります。「自主的に離脱」したくないのであれば、雇う側の「黒」に、従うしか道は残されていないのです。

そして、一度、このようなやりとりがあると、「雇う側の「黒」に、従うしか道は残されていない」と全従業員が学習しますので、この社長のコメントにあるように、「その後、意見具申がなくなってしまいました。」という結果になります。

でも、社長には悪気はなく、いつものクセで「論破」してしまったため、事の重大性を理解せずに、「もっと、部下が自発的に意見具申をして、どんどん会社を変えていって欲しいのですが、どうすればよろしいでしょうか?」といった質問をいただくことになります。

このような事例は、極めて多く、特に会社を大きく成長させてきた創業オーナー社長によくある典型的なパターンです。

④従業員からの意見具申がなくなるデメリット

意見の抑圧:部下は自分の意見が論破されることを恐れ、積極的に発信することを躊躇するようになります。意見の抑圧は組織内のイノベーションを阻害し、成長の機会を逃す原因となります。

モチベーション低下:部下が意見を述べることに対して消極的になると、仕事へのモチベーションが低下します。結果として、生産性や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

新たなビジネスチャンスの見落とし:部下の多様な視点から生まれる新たなビジネスチャンスを見落とす恐れがあります。組織が市場に対応できなくなり、競争力を失うリスクが高まります。

⑤従業員からの意見具申がでることのメリット

新たなアイデアと創造性の促進:部下の多様な意見を尊重し、自由に発信させることで、新たなアイデアと創造性が促進されます。組織全体の知恵を結集することで、革新的なビジネスモデルが生まれる可能性が高まります。

チームの結束と信頼関係の構築:部下の意見尊重は、チームの結束力を高め、信頼関係を構築する助けとなります。協力的な雰囲気の中で仕事を進めることで、組織全体が目標に向かって一丸となります。

持続的な成長と競争力の確保:部下の意見を活かすことで、持続的な成長と競争力の確保が可能となります。組織が市場や顧客のニーズに敏感に対応し、変化する環境に適応する力を身につけます。

⑥解決のために必要なこと

では、どのようにすれば従業員からの意見具申がでるようにできるのでしょうか?箇条書きにしましたので、ヒントにしていただければ幸いです。

コミュニケーションの重要性を認識する:部下とのコミュニケーションを重要視しましょう。定期的なミーティングやフィードバックの場を設けることで、部下の意見を収集しやすくなります。

オープンな雰囲気の醸成:オープンな雰囲気の中で意見を述べる文化を醸成しましょう。部下が自分して発信できる環境を作ることで、意見を抑えることなくアイディアを出し合うことができます。

参加型の意思決定を導入する:重要な意思決定において、部下たちに参加してもらうことで、彼らの意見を尊重する姿勢を示しましょう。組織全体の意見を反映した決定は、従業員の自己肯定感を高め、結果的に組織の成果につながります。

フィードバック文化の確立:部下からのフィードバックを受け入れる姿勢を持ちましょう。コンストラクティブなフィードバックは成長の機会であり、組織の改善に繋がります。逆に、フィードバックを拒絶する姿勢は部下の意欲を削ぎ、チームのモチベーションを低下させる可能性があります。

カンファレンスやワークショップの参加:業界のカンファレンスやワークショップに参加し、新しい知識やトレンドを取り入れることで、組織全体の視野が広がります。部下たちと共に学び、共有することで、組織のアップデートと成長を促進します。

外部専門家の活用:第三者の意見は客観的であり、組織内部では気付きにくい課題や潜在的なチャンスを見つけることができます。外部専門家の意見を取り入れることで、組織の強化と競争力向上に繋がるでしょう。

如何でしょうか?個人的な意見ですが、一番効果的で、オーナー社長の負担にならないのは「外部専門家の活用」だと思います。最初に、「社長!もう貴社の会社としての成長ステージが変わっているのですから、(やりたくなる気持ちがわかりますが)私に任せて、口も手も出さないでください!」とお伝えした通りで、これが一番効果的だと思います。万が一、失敗しても「外部専門家の活用」が上手くいかなかっただけで、オーナー社長の責任ではありませんので、遠慮せずにご活用ください(笑)。

【まとめ】

オーナー社長が部下を論破してしまうと、極めて高い確立で建設的な意見が出なくなります。

創業期や成長期では、オーナー社長の性格やスキルは非常に有効で、地域一流企業へと成長する原動力となります。

ただし、成熟期には会社を組織で回す仕組みづくりが不可欠であり、部下を活用して利益を継続的に上げていかなければ衰退してしまいます。このため、部下の意見を尊重し、自走する組織を築くためのアドバイスをお伝えしました。

部下の意見具申を奨励し、彼らの持つ専門知識や経験を活かすことで、組織全体の力を引き出すことができます。社長が自らの考えに固執せず、第三者の意見も取り入れながら、客観的な視点を得ることが重要です。そして、自由な意見交換ができる社内環境を醸成し、建設的なアイディアが生まれやすい環境を作り出すことが必要です。

自走する組織を築くことは、儲かるビジネスモデルと強い経営基盤を構築する上で不可欠な要素です。社長自らが部下とのコミュニケーションを大切にし、信頼関係を築く姿勢が、組織文化の形成に大きく寄与します。部下が自由に意見を発信し、積極的に参加できる社内環境があれば、持続的な成長と競争力の向上が期待できるます。

中小企業オーナー経営者の皆様には、ぜひ部下の意見を尊重し、建設的な意見が生まれる組織を築く努力をしていただきたいと思います。第三者の意見も積極的に取り入れ、自走する組織の構築に取り組むことで、儲かるビジネスモデルと営業利益率12%超を是非とも実現してください。

あなたは経営者として、どのように部下とのコミュニケーションを育み、自走する組織を構築して会社を発展させますか?