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今週のコラム 経営者必見!銀行稟議書で成功を収めるための5つのポイント

「髙窪先生、増加運転資金を借りたいのですが、コロナの影響もあり、5期連続で赤字が続いています。こんな状況でも、借入をすることは可能でしょうか?」
1年半ほど前に通常品ではなく、贈答用の高級品で勝負されてはいかがですか?とアドバイスさせていただいた食品製造業の社長からのご相談です。

5期連続赤字と伺ったので、お断りしようかと思いましたが、あまりにも思い詰めた表情をされていましたので、状況を確認させていただくことに…

というのも、3期連続赤字で、「要注意先」に認定されて原則新規融資不可となってしまいますので、新規の借入は極めて難しいのです(汗)。また、増加運転資金として、銀行に借入を申請しても、赤字の補填に使われる懸念があり、これの払拭も難易度が高いです。ということを先ずお伝えさせていただいた上で、お話を伺いました。

コロナ禍前までは、一般消費者向けに試食販売をしていたが、コロナ禍で試食ができなくなり、売上が激減。一時は、これまで継続的に購入していただいていたお客様のみに…

また、売上が激減した上に、この1、2年で原材料が高騰してその影響も…

あまりにも厳しい状況で、廃業も考えたが、弊社でアドバイスさせていただいた贈答用の高級品にシフトすることで、ピンチをチャンスに変えようと地道な努力を続けてこられたとのこと。

これまで一般消費者宛てに試食販売、通販などBtoCで売ってこられたのですが、贈答用の高級品となると、対象顧客や販路が全く異なります。百貨店や専門店で高級品を扱っているところを中心にBtoBにシフトしなければなりません。

銀行が主催する商談会に参加したり、FoodEXなどの展覧会にも出店されたりと、これまでとは大きく異なる動きをされ、「大手百貨店や通販業者などとの商談が増えてきて、契約にも至っていることから、増産体制に入らなければならないが、先立つ資金がない。」とのことで、今回の増加運転資金の借入をされたいとのことでした。

はじめに

食品に限らず製造業の経営者の方であれば、同様の経験をされている方も多いのではないでしょうか?コロナ禍を乗り越え、インバウンドなどの影響もあり、マーケットは回復傾向にあります。この絶好の機会を活かし、多くの製造業が売上増加につなげるべく増加運転資金を調達することでさらなる成長を目指しています。

そのためには、銀行からの資金調達がポイントとなりますが、これを成功させるためには効果的な稟議書(銀行宛て提出用)が不可欠です。本コラムでは、銀行宛て稟議書で融資を獲得するための5つのポイントを紹介します。

これにより、経営者であるあなたが資金を確保し、事業拡大へと繋げる手助けをすることが目的です。具体的な目的の明確化、重要情報の提示&根拠、リスク管理の詳細な説明、信頼性のあるデータと予測の提供、そして説得力のある締めくくりの方法を学ぶことで、銀行からの支援を引き出し、事業の可能性を最大限に高めることができれば幸いです。

1. 目的とゴールの明確化

1.1. 稟議書において最も重要なこと

銀行宛て稟議書における最も重要な要素の一つは、その目的とゴールの明確化です。稟議書は、借入(この場合は増加運転資金)の意図と成果を明確に伝えるための重要な書類であり、銀行が資金提供の判断を下す際の基礎となります。このセクションでは、具体的にどのように目的とゴールを設定し、それを明確に伝えるかを掘り下げます。

まず、借入の目的を具体的に定義し、それにどのようにして到達するかの計画を示します。例えば、増加運転資金により生産量をどれだけ増やすか、どのように高付加価値をつけて市場での競争力をどのように高めるかなど、明確な数値や期日を設定することが重要です。このように目的を明確にすることで、銀行に対して資金調達の必要性と効果を具体的に示すことができ、稟議書の説得力を高めることができます。

1.2. 具体的な目的と目標の設定方法

増産体制の整備を目指す食品製造業の経営者が、銀行宛て稟議書において明確にすべき目的とゴールには、具体性と戦略的視点が求められます。まず、増産によって達成したい具体的な成果を設定しましょう。これは、市場の需要拡大への対応、生産効率の向上、または新商品の導入による製品ラインの拡張などが考えられます。

次に、これらの目的を達成するための明確な目標を定めます。これには、具体的な生産数量の増加率、効率改善のパーセンテージ、市場への導入予定時期などが含まれます。これらの目的と目標は、銀行に対して融資の具体的な期待リターンを示すことで、資金調達の承認確率を高める助けとなります。それぞれの目標には、達成を証明するための具体的な指標や、期間を明示することが重要です。

1.3. 銀行が何を求めているかの理解

銀行が資金提供を決定する際に最も重視するのは、稟議書の中で明確にされた目的とゴールです。銀行は、その資金がどのように使われ、借入がどのようにして確実に回収されるのかを明確に理解したいと考えています。そのため、資金の具体的な用途、期待される具体的な成果、そしてそれが実現されるための明確な計画が必要です。

借入の目的がはっきりしていると、銀行はリスクをより正確に評価しやすくなります。また、目的が具体的で測定可能なゴールを含んでいることが、承認プロセスをスムーズにする重要なポイントとなります。事業の持続可能性や成長潜在力を示すことで、銀行からの信頼を勝ち取り、資金調達の確率を高めることができるのです。

2. 重要情報の提示&根拠

2.1. 必要な情報の提示&根拠

銀行宛て稟議書において重要情報の提示は、成功の重要なポイントとなります。特に、資金の用途、返済計画、事業の持続可能性は、銀行が最も関心を持つところです。資金の用途を明確にすることで、銀行は融資の具体性を評価できます。

返済計画では、事業のキャッシュフロー予測を基に、確実でリアルな返済スケジュールを提示することが重要です。事業の持続可能性を示すためには、市場動向、競争分析、技術進化への対応策などを詳細に記述するとともに、その根拠も提示します。これらの情報を効果的に盛り込むことで、銀行からの信頼を勝ち取り、資金調達の確率を高めることができます。

2.2. 安全性と利益性の情報提示

銀行が評価する「安全性」と「利益性」は、銀行宛て稟議書において極めて重要な情報です。安全性では、融資に対するリスクが最小限に抑えられていることを示す必要があります。これには、堅実な返済計画や保証の提供が含まれることが一般的です。

一方、利益性は、提案されたプロジェクトがどれだけ収益性が高いかを示すため、事業計画の着実な財務予測と市場分析を詳細に提示する必要があります。これらの情報は銀行にとって、貸出の判断材料となり、融資の回収可能性と収益性を評価するための根拠となります。したがって、これらの点を強調し、具体的かつ説得力のあるデータに支えられた稟議書を作成することが、資金調達の成功へと繋がります。

3. リスク管理の説明

3.1. リスクと対策の詳細説明

リスク管理は、銀行宛て稟議書で非常に重要なセクションです。経営者として増加運転資金に伴うリスクを明確にし、それにどう対処するかを詳細に説明することが求められます。具体的には、市場動向の変化、技術の進化、供給チェーンの問題など、外部リスクを識別し、これらのリスクに対して企業が取りうる具体的な対策を列挙します。

また、事業が直面するかもしれない内部リスク、例えば生産遅延や品質管理の問題についても同様です。これらのリスクを管理するための戦略を明確にし、それが実行可能であることを示すことで、銀行に対して融資の安全性をアピールすることが可能になります。このセクションを通じて、銀行は貴社のリスクへの理解と対処能力を評価します。

3.2. 予見可能な問題への対応策

リスク管理は、銀行宛て稟議書の重要な要素です。増加運転資金に際しては多くの不確実性が伴いますが、予見可能な問題への対応策として、これらのリスクを明確にし、適切な管理策を講じることが求められます。

具体的には、市場の変動、技術の陳腐化、運用上のトラブルなど、様々なリスクを識別し、それぞれに対する対策を詳細に計画する必要があります。これにより、銀行に対して事業計画の信頼性を高めるとともに、資金調達の成功確率を向上させることができます。リスク管理のセクションでは、これらの対策を具体的に述べることで、銀行からの資金提供を確実に引き出すための説得力を持たせることが重要です。

4. 具体的なデータと予測の提示

4.1. 業績データと市場分析

銀行宛て稟議書において、過去の業績データと市場分析に基づく将来予測の提示は、銀行からの資金調達成功のために極めて重要です。食品製造業においては、製造技術の進化や市場需要の変動が激しいため、これらのデータを適切に反映させることが求められます。過去の業績データは、企業の安定性や成長の実績を示すための基盤となります。

また、市場分析は将来的な事業の展望を示し、融資の妥当性を銀行に理解させるために不可欠です。この二つの要素を明確に提示することで、銀行に対して事業計画の信頼性と実現可能性を強調し、資金調達の確率を高めることができます。

4.2. データの種類とその提示方法

銀行が信頼できるデータの種類とその提示方法について、食品製造業における増加運転資金調達を成功させるには、極めて重要です。まず、過去の財務報告を詳細に提供することで、企業の財政健全性と信頼性を示します。これには、利益率、キャッシュフロー、売上高成長率などが含まれます。

また、市場分析に基づいた将来のビジネスプランと収益予測を明示することが求められます。これらの予測は、業界のトレンド分析や競合他社との比較を通じて裏付けるべきです。さらに、増加運転資金による具体的な収益向上のシナリオを提示し、融資の回収期間とそのリターンを詳しく説明することが効果的です。これらのデータを銀行に提示する際は、視覚的にも理解しやすい形式(グラフやチャートを用いたプレゼンテーション)で整理し、説得力を持たせることが重要です。

5. 説得力のある締めくくり

5.1. 効果的な稟議書の締め

銀行宛て稟議書の締めくくりは、銀行からの資金調達において非常に重要な部分です。ここでの目的は、稟議書全体の要点を強調し、銀行に対して強い印象を残すことにあります。

まず、プロジェクトの成功に向けた自信を表明し、その理由を簡潔に再確認することが重要です。その上で、資金調達の必要性と、その資金が企業にとってどれだけ重要かを強調しましょう。

また、銀行との長期的な関係を築くことへの意欲も示すことが、信頼感を高めるために役立ちます。最終的には、銀行からの融資が自社に対してどのような影響をもたらすかを明確にし、積極的な承認を促すような表現を用いることが効果的です。この段階で、具体的な行動の提案や施策を追加することも考えられますが、常に前向きで積極的なスタンスを保つことが成功のポイントとなります。

5.2. 銀行に対する最終アピール

銀行に対する最終的なアピールは、銀行宛て稟議書の締めくくりにおいて非常に重要です。この部分で、貴社の事業計画の真剣さと信頼性を強調し、銀行の承認を確実に引き出すことが求められます。

良い締めくくりは、提案されたプロジェクトが銀行にとってどれだけ魅力的か、またリスクに対してどのように備えているかを明確にする必要があります。具体的には、事業計画の総括、将来のビジョンの提示、そして融資のリターンに対する自信の表明を通じて、銀行担当者および決裁者に強い印象を残すことが重要です。

このセクションでは、返済計画の実行可能性を再確認し、資金の有効な利用を約束することで、貴社の誠実さと計画の堅実さをアピールします。

まとめ

融資を勝ち取るアプローチと戦略

銀行宛て稟議書の作成において成功を収めるためには、戦略的なアプローチが不可欠です。このプロセスでは、初めに目的とゴールの明確化から始め、どのようにして銀行の信頼と資金を獲得するかに焦点を当てることが重要です。

文書内での重要情報の提示&根拠、リスク管理の徹底した説明、具体的なデータと将来予測の提示が銀行からの承認を得るためには欠かせません。また、説得力のある締めくくりが全体の印象を左右し、提案が成功に結びつくかどうかの重要なポイントとなります。

これらのポイントを総合的に把握し、計画的に稟議書を作成することで、増加運転資金の確保と事業の発展を実現することが可能になります。このアプローチにより、食品製造業の経営者は持続可能な成長と市場での競争力を確保するための資金を確実に調達できるようになります。

今回の事例では、大手百貨店や通販業者との商談メール、商談会を主催していた銀行から推薦コメントをいただき、それらを根拠の補強材料としたことが、一番のポイントとなりました。このほかにも経営計画書、資金繰り表、試算表などなど、過去、最大の銀行宛て稟議対応案件となりました。

経営者としての決断と行動

増加運転資金を獲得するためには、経営者としての果断な決断と具体的な行動が求められます。成功への道は、計画性と戦略に裏打ちされた意思決定に依存します。

まず、自社の現状と市場環境を正確に分析し、融資によって達成したい具体的な目標を設定します。次に、必要な資金をどのように調達するかの計画を立て、銀行宛て稟議書にその詳細を反映させます。

リスク評価を行い、万一の事態に備えた適切な対策も計画に含めることが重要です。最終的には、これらの計画を銀行に説得力ある形で提示し、資金調達を成立させることが、事業拡大と持続可能な成長への重要なポイントとなります。

これらのことを全て実施したことから、過去融資実績の最大金額まで増加運転資金を調達することができ、大手百貨店との大口商談が無事実行されることとなりました。

最近は倒産事例が増えてきていますので、融資スタンスは厳しくなってきていますが、経営者としての情熱とこれまでご説明したポイントを押さえていただくことで、資金調達の可能性が高まりますので、是非ともチャレンジしてください。

あなたは経営者として、融資をどのように活用し、会社を持続的成長に導いていくおつもりでしょうか?