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今週のコラム 第57話:大企業に対抗する戦略を考えるのが経営者の責任!

「我々の業界では、これまで受注額の大小で大手企業と中小企業の住み分けがなされていたのですが、大手企業が業績不振になってきたために、これまでのマーケット区分がなくなってしまい、我々の中小企業マーケットが大手に食い散らかされてきています。これまで、地元の公共工事は、我々のような地元の中小ゼネコンが落札していたのですが、今年は大手ゼネコンが赤字覚悟のディスカウントで入札・落札してきており太刀打ちできません。どうしたらいいでしょうか?」──地元中堅ゼネコン経営者の方からのご相談です。

大企業と中小企業の住み分けがなくなる事例は、成熟産業でマーケットが飽和状態になったり、拡大基調であったマーケットが縮小してしまったような場合に起こります。

これまではマーケットがあったので、大企業は規模に見合った大きなマーケットに、同様に中小企業は小さなマーケットに特化することで、それぞれの特性を活かして事業活動をしてきたわけですが・・・

マーケットが飽和状態になったり、縮小してしまった場合でも、大企業は多数の従業員を抱えており、遊ばせているわけにはいきません。人件費を回収するためにも、これまで対応してこなかった小規模案件であっても、採算ギリギリでなり振り構わずに獲得しにくるのです。

そして残念ながら、大企業に比べて、中小企業の稼ぐ力は約半分程度しかありません。

〜抜粋〜

中小企業庁2021年度「中小企業白書」の中小企業・小規模事業者の実態

「企業規模別従業員一人当たり付加価値額(労働生産性)の推移(第1-2-11図)」

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/PDF/chusho/03Hakusyo_part1_chap2_web.pdf

これによると、大企業製造業の1,238万円、大企業非製造業の1,363万円に対して、中小企業製造業の535万円、中小企業非製造業の534万円と半分以下になっています。

従業員一人当たりの付加価値額(=稼ぎ)が2倍以上ある大企業と中小企業では、当然ながら、採算ギリギリの水準が大きく異なります・・・

稼ぐ力が違う主な要因は、そもそもの「事業モデル」と「効率的な業務の仕組みづくりがされている」ことなのです。そして、大企業での稼ぐ事業モデルを小規模案件に修正、かつ採算ギリギリで攻めてきます。企業体力も違いますので、勝負になりません。

〜抜粋〜

中小企業庁2021年度「中小企業白書」の第2部 危機を乗り越える力

「第2-1-5図 損益分岐点比率の推移(企業規模別)」

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap1_web.pdf

損益分岐点比率とは、売上高が現在の何%以下の水準になると赤字になるかを表す指標ですが、これを見ると、大企業の損益分岐点比率は2019年度時点で60.0%にまで改善している一方、中規模企業では85.1%、小規模企業では92.7%となっています。つまり、採算ギリギリで勝負する際に、大企業であれば40%ディスカウント可能ですが、中規模企業では15%、小規模企業では8%のディスカウントで赤字に転落してしまいます。

ご相談いただいた地元中堅ゼネコン経営者の方の場合、20%のディスカウントがギリギリとのことでしたので、大手ゼネコンが採算ギリギリで入札してきたら太刀打ちできないことは明白です。一時的には持ち出しで対抗できるかも知れませんが、企業体力が違いますので消耗戦も無駄な戦いになってしまいます。

これは、どの業界にも言えることですが、中小企業が生き残るためには、高価格・高級品で勝負することと、一つの業界のみで勝負するのではなく、現在の技術を活用して複数の業界にまたがる商品・サービスを展開する必要があります。

何よりも大事なことは、利益はお客様の要求を満たすことで、はじめて手にすることができるということをキチンと理解しなければなりません。地元の公共工事の入札で考えた場合、そもそも作って欲しいものの仕様などは決まっていて、あとはいくらで請け負ってくれるかどうかの勝負(もちろん、例外もありますが)となる以上、大企業が参入してきたら勝ち目がありません。

デザイン面で特徴があるのであればデザイン勝負で、機能面で特徴があるのであれば機能面勝負で、構造面で特徴があるのであれば構造面勝負で、という風に自社の特徴を活かして地元の中堅ゼネコンとして高価格帯で勝負するのが望ましいですし、それぞれの特徴を建設以外の業界で商品・サービスとして展開できないかを突き詰めたいところです。

そして、お客様の声(=要求)に耳を傾け、新しい商品・サービスを開発するとともに、本当にお客様に喜んでもらえるかを検証することで、常にスクラップ・アンド・ビルドをし続けなければならないのです。

この経営者の方に、「オリンピックが終わった後で、いろいろと逆風が吹いていると思いますが、成功している企業さんはないのですか?」とご質問をしたところ、複数の会社のお名前を挙げていただきました。

さらに、それぞれの会社の特徴をお伺いしたところ、「高価格・高級品で勝負」、「複数の業界にまたがる商品・サービスを展開」、「常にスクラップ・アンド・ビルド」のどれかに分類できました。

最後に、「これまでのように、ゼネコン一辺倒ではいけないですね。これからは、複数の視点を持ちつつ、何よりもお客様のご要望にお応えすることで、事業を活性化させていきます。」との決意をこの経営者の方がされました。

あなたは経営者として、大企業の進出に対して、どのような戦略で挑みますか?