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今週のコラム 一人親方がひ孫請けを脱却するには次の3つに注力すべし!

「いや〜、コロナ禍が収束したら以前のように稼げるようになると思っていたのですが、原材料や資材などの値上げが相次ぐだけでなく、受注先からも単価の引き下げ要請などで、これまで以上に利益を確保するのが難しくなってきました。一人親方から成功された先輩方のお話しを聞いても、現在の状況にはそぐわないように感じていますが、どのように考えて行動してゆけばよいのでしょうか?」──とある経営者交流会でご一緒した一人親方の方からのご相談です。

一人親方というと、建設業をイメージされる方が多いと思いますが、今回ご相談いただいた一人親方も建設業で独立された方です。コロナが流行する前に独立されましたので、独立当初は、体力にモノをいわせて受注につながるものは安価であっても全て対応してきました。

その甲斐あって、順調に業績を伸ばしてきたのですが、外国人労働者を多用する同業者に仕事を取られることが多くなってきたとのこと。労働者を確保できるか否かが発注のポイントになっており、一人親方だと懇意にしている発注先の力関係次第で、仕事が全く回ってこないことも・・・

1.ひ孫請けからの脱却について

結論から申し上げると、「一人親方がひ孫請けを脱却して成功することは可能。」です。

以前のコラムでもお伝えしておりますが、協力業社(ひ孫請け→孫請け、孫請け→下請け)→専門工事業社、専門工事業社→地方ゼネコン、といったかたちで、川上に守備範囲を広げていくというのが現実的であり、下請け企業としてのランクアップする方向性が正しいのです。

ちなみに、建設業特有の何層にもなっている「下請けのピラミッド構造」を考えておかなければなりません。スーパーゼネコンと呼ばれる5社を頂点に、全国展開する大手ゼネコンが50社程度、中小規模の地方ゼネコン2万社がそれに続きます。

それらゼネコンの下請けとして、内装・電気・屋根・塗装・鉄筋といった施設を管理する専門工事業者があり、さらにその下請けとして実際の設備工事を施工する協力業者がいるといったピラミッド型の下請け構造になっています。

そして、その協力業者も下請け→孫請け→ひ孫請け、というように更に階層が分かれており、一人親方はひ孫請けに該当しています。この6層以上にもわたる「下請けのピラミッド構造」があるために、ひ孫請けの一人親方として活躍することも可能なのですが、ひ孫請けから孫請け、孫請けから下請けにステップアップすることは容易ではありません。

労働者をある程度確保できて、価格も柔軟に対応できる下請けや孫請けが重宝されており、ひ孫請け以下である一人親方は、発注先の言い値・条件で受けなければ仕事が取れない状況になっているからです。

2.一人親方が注力すべき3つのポイント

一人親方がひ孫請けから脱却するためには、独自のノウハウや技術の活用が不可欠です。これは、競争力を高め、新規市場を開拓するために必須のものとなります。ここでは、その具体的な方法などについて解説します。

2.1. 独自のノウハウや技術の活用

ひ孫請けからの脱却には、独自のノウハウや技術がポイントとなります。これらを活用することで、高付加価値を生み出し、利益を確保することができるのです。独自性があれば、新規取引先を開拓しやすくなり、特定の取引先に依存しないビジネスモデルを構築できます。このプロセスでは、独自のノウハウや技術を明文化し、社内外にその価値を伝えることが重要です。

①独自性の重要性

独自のノウハウや技術は、市場での差別化を可能にし、競争優位を築くための重要な要素です。これにより、一人親方や中小企業は、大手企業や他の下請け業者とは異なる価値を提供できるようになります。独自性があれば、顧客にとって代替が難しいサービスや製品を提供でき、より高い価格設定や利益率を実現することが可能です。

②ノウハウや技術の特定

まずは、自社が持つ独自のノウハウや技術を特定することが重要です。これには、自社の過去の成功事例や特許、独自の製造プロセス、特殊な技術力、ユニークなサービス提供方法などが含まれます。これらをリストアップし、それぞれが市場でどのように価値を提供できるかを分析します。

③明文化と共有

独自のノウハウや技術を明文化し、社内で共有することが次のステップです。これにより、従業員全員が会社の強みを理解し、それを活用したサービス提供や製品開発に取り組むことができます。明文化は、マニュアル作成、トレーニングプログラムの開発、社内研修などを通じて行うことができます。

④新商品・サービスの開発

独自のノウハウや技術を活用して、新しい商品やサービスを開発します。これには、市場のニーズやトレンドを研究し、それに応える製品やサービスを設計することが含まれます。新しい商品やサービスは、既存の市場に新たな価値を提供するだけでなく、全く新しい市場を切り開く可能性もあります。

⑤市場へのアプローチ

独自のノウハウや技術を活用した新商品やサービスを市場に導入する際には、適切なマーケティング戦略が必要です。ターゲット市場を特定し、その市場のニーズに合わせたプロモーションを計画します。これには、デジタルマーケティング、展示会への参加、業界誌への広告掲載などが含まれます。

⑥パートナーシップの構築

他の企業や組織とのパートナーシップを構築することも、独自のノウハウや技術を活用する上で重要です。これにより、新しい市場へのアクセスや、追加のリソース、新たな顧客基盤へのアクセスが可能になります。パートナーシップは、共同研究開発、販売代理店契約、技術ライセンス提供などの形で行うことができます。

⑦継続的なイノベーション

市場は常に変化しているため、独自のノウハウや技術も継続的に更新し、改善する必要があります。これには、定期的な市場調査、技術開発への投資、従業員のスキルアップトレーニングなどが含まれます。イノベーションを継続することで、競争優位を維持し、市場での地位を強化することができます。

独自のノウハウや技術の活用は、ひ孫請けからの脱却とビジネスの成長に不可欠です。これには、独自性の特定、明文化と共有、新商品・サービスの開発、市場への適切なアプローチ、パートナーシップの構築、そして継続的なイノベーションが含まれます。これらの戦略を実行することで、一人親方や中小企業は、新しい市場を開拓し、持続可能なビジネスモデルを構築することが可能になります。

2.2. 新規取引先の開拓

ひ孫請けから脱却するためには、新規取引先の開拓が不可欠です。これには、市場のニーズを理解し、新商品やサービスを開発することが含まれます。マーケットインのアプローチを取り、顧客の課題を解決する製品やサービスを提供することで、新しい市場に進出し、多くの新規取引先を獲得することが可能です。この過程で、独自のノウハウや技術を活かすことが、競争優位を築く上で重要になります。

①市場調査とニーズの特定

新規取引先を開拓するためには、まず市場調査を行い、潜在的な顧客のニーズを特定することが重要です。どの業界が成長しているか、どのような製品やサービスが求められているかを理解することで、ターゲット市場を絞り込むことができます。

②独自のノウハウや技術の活用

既存のスキルや技術を活用して、市場のニーズに合った新しい製品やサービスを開発します。独自性があれば、競合他社との差別化を図り、新規顧客の獲得が容易になります。

③ネットワーキングと関係構築

業界イベントや展示会への参加、オンラインプラットフォームでの活動を通じて、新規取引先とのネットワーキングを強化します。信頼関係の構築は、新規ビジネスチャンスを生み出す鍵となります。

④営業戦略の策定

効果的な営業戦略を策定し、潜在顧客にアプローチします。これには、ターゲット顧客の特定、適切なコミュニケーションチャネルの選択、説得力のあるプレゼンテーションの準備が含まれます。

⑤提案のカスタマイズ

顧客のニーズに合わせて提案をカスタマイズします。顧客が直面している問題を理解し、それを解決するための具体的なソリューションを提供することが重要です。

⑥フォローアップとリレーションシップ構築

初回のミーティングや提案後には、定期的なフォローアップを行い、関係を維持します。長期的な関係構築には、継続的なコミュニケーションと信頼の構築が必要です。

新規取引先の開拓は、一人親方がひ孫請けの立場から脱却し、ビジネスの成長と安定を実現するための重要なステップです。市場のニーズを理解し、独自のノウハウや技術を活用して競争力を高め、効果的な営業戦略を通じて新規顧客を獲得することがポイントとなります。これらの戦略を実行することで、ビジネスの多様化とリスク分散を図り、より安定した収入源を確保することが可能になります。

2.3. 事業継続性の確保

ひ孫請け脱却の試みは、事業継続性を脅かすリスクも伴います。そのため、新規取引先開拓の過程で、既存の取引先との関係を維持し、安定した収入を確保することが重要です。また、独自のノウハウや技術を安売りせず、適正な利益を確保することで、事業の持続可能性を高めることができます。

①事業継続性の重要性

事業継続性は、市場の変動や予期せぬ事態に対応し、安定した収益を維持する能力を指します。特に、ひ孫請けからの脱却を目指す際には、新たなビジネスモデルへの移行期間中に収益の不安定さが生じる可能性があります。このリスクを管理し、安定した運営を維持することが、事業継続性の確保には不可欠です。

②リスク管理と収益の安定化

事業継続性を確保するためには、まずリスク管理が重要です。これには、市場分析、競合分析、財務状況の評価などが含まれます。これらの分析を通じて、ビジネスが直面する可能性のあるリスクを特定し、それに対する対策を講じることが重要です。また、複数の収益源を持つことで、一つの市場や顧客に依存するリスクを減らし、収益の安定化を図ります。

③新規市場への進出

新規市場への進出は、事業継続性を確保する上で重要な戦略です。新しい市場に進出することで、ビジネスは新たな顧客層にアクセスし、収益の多様化を図ることができます。これには、市場調査、顧客ニーズの分析、新商品・サービスの開発などが必要です。特に、独自のノウハウや技術を活かした新商品・サービスの開発は、競争優位を築く上で有効です。

④既存顧客との関係強化

新規市場への進出と並行して、既存の顧客との関係を強化することも重要です。既存顧客との関係を維持し、安定した収益を確保することは、事業継続性の観点から非常に重要です。これには、顧客満足度の向上、アフターサービスの強化、顧客とのコミュニケーションの頻度増加などが含まれます。

⑤内部リソースの最適化

事業継続性を確保するためには、内部リソースの最適化も重要です。これには、効率的なオペレーション管理、コスト削減、生産性の向上などが含まれます。特に、独自のノウハウや技術を最大限に活用し、生産プロセスを効率化することで、コストを削減し、利益率を高めることが可能です。

ひ孫請けからの脱却は、一人親方にとって重要なステップですが、この過程で最も重要なのは事業継続性の確保です。リスク管理、新規市場への進出、既存顧客との関係強化、内部リソースの最適化などを通じて、事業の安定性と成長を実現することが可能です。これらの戦略を実行することで、一人親方としての自立と成長を目指し、長期的なビジネスの成功を確保しましょう。

3.一人親方がひ孫請けから脱却するメリット・デメリット

一人親方がひ孫請けの立場から脱却することは、多くのビジネス上の利点をもたらす一方で、いくつかのリスクやデメリットも伴います。以下では、これらのメリットとデメリットを詳細に分析し、ご自身がどのような対応をするべきか検討ください。

3.1. メリット

  • 収益性の向上: ひ孫請けの立場では、利益率は通常低く抑えられがちです。直接取引に移行することで、中間マージンが削減され、収益性が向上します。これにより、より多くの利益を再投資に回すことが可能になり、事業の拡大や安定化に寄与します。
  • 事業の自立性とコントロール: ひ孫請けから脱却することで、事業の意思決定における自立性が高まります。これにより、一人親方は自らのビジネス戦略をより自由に計画し、実行することができます。
  • 市場での競争力の強化: 独自のノウハウや技術を活用し、新規市場に進出することで、市場での競争力が強化されます。これにより、新しい顧客層を開拓し、ビジネスの成長機会を拡大できます。
  • リスク分散: 特定の取引先に依存するリスクを軽減し、複数の取引先を持つことでビジネスのリスクを分散できます。これにより、一つの取引先が不調になった場合でも、事業の継続性が保たれます。
  • ブランド価値の向上独自ブランドの確立と市場での認知度向上により、事業の長期的な価値を高めることができます。

3.2. デメリット

  • 初期投資とリスクの増加: 新規市場への進出や新商品の開発には、初期投資が必要です。また、新しいビジネスモデルへの移行は、不確実性とリスクを伴います。
  • 既存取引先との関係悪化の可能性: ひ孫請けから脱却する過程で、既存の取引先との関係が悪化する可能性があります。特に、元請け企業が新規取引先開拓を好ましく思わない場合、ビジネス上の対立が生じることがあります。
  • 市場の変動への対応: 新規市場に進出する際、市場の動向や顧客のニーズを正確に把握し、迅速に対応する必要があります。これには、市場調査や顧客分析などの追加的な努力が必要です。
  • 運営の複雑化: ひ孫請けから脱却することで、事業運営が複雑化します。新しいビジネスモデル、新規顧客、新しい市場への対応など、管理すべき要素が増え、運営の難易度が高まります。
  • スキルとリソースの必要性: 新規市場への進出や新商品の開発には、特定のスキルやリソースが必要です。これには、追加の人材採用や研修、技術開発などの投資が伴います。

一人親方がひ孫請けから脱却することは、収益性の向上、事業の自立性の強化、市場での競争力の強化など多くのメリットをもたらしますが、同時に初期投資の増加、既存取引先との関係悪化のリスク、市場の変動への対応、運営の複雑化、必要なスキルとリソースの確保など、いくつかのデメリットも伴います。

したがって、ひ孫請けからの脱却を検討する際には、これらのメリットとデメリットを慎重に評価し、総合的なビジネス戦略を策定することが重要です。ビジネスの成長と安定を目指す一人親方にとって、これらの要素をバランス良く管理することが、成功への鍵となります。

4.一人親方がひ孫請けを脱却できた事例

一人親方がひ孫請けを脱却し、成功を収めた具体的な事例を建設業に限らず3つご紹介します。これらの事例は、異なる業界やアプローチを通じて、ひ孫請けの制約から脱却し、自立したビジネスを築いた実例です。

事例1: 建設業界の一人親方

概要:

  • 背景: この一人親方は、長年にわたり大手建設会社の下請けとして働いていました。しかし、利益率の低さと仕事の不安定さに悩まされていました。
  • 脱却戦略: 彼は独自の建築技術とデザインスキルを活かし、小規模ながらも高品質な住宅建築に特化しました。また、地域コミュニティでのネットワーキングを強化し、直接顧客との契約を増やしました。
  • 結果: 独自のブランドを確立し、高い評価を受けるようになりました。これにより、安定した収入と高い利益率を実現しました。

事例2: ITサービス業のフリーランス

概要:

  • 背景: IT分野で働くこの一人親方は、大手企業のプロジェクトに低単価で参加していましたが、技術力と経験を活かせていないと感じていました。
  • 脱却戦略: 自身の専門知識を活かし、ニッチな分野の専門コンサルティングサービスを開始しました。また、オンラインマーケティングを強化し、自身のブログやソーシャルメディアを通じて知識を共有しました。
  • 結果: 独自の専門性が評価され、高単価のプロジェクトやコンサルティング契約を獲得しました。これにより、収入とキャリアの自由度が大幅に向上しました。

事例3: 製造業の小規模事業主

概要:

  • 背景: 製造業で働くこの一人親方は、大手メーカーの下請けとして、低利益の製品を生産していました。
  • 脱却戦略: 独自の製品開発に着手し、特定の市場ニーズに合わせたカスタマイズ製品を提供し始めました。また、オンライン販売チャネルを開設し、直接消費者にアプローチしました。
  • 結果独自製品の高い品質とユニークさが市場で認知され、大手企業からの依存から脱却しました。これにより、利益率が大幅に向上し、ビジネスの成長を遂げました。

これらの事例からわかるように、一人親方がひ孫請けを脱却するためには、独自の強みやスキルを活かし、直接顧客との関係を築くことが重要です。また、ニッチ市場の特定やオンラインプレゼンスの強化など、多角的なアプローチが成功の鍵となります。

5.まとめ

一人親方がひ孫請けの立場から脱却し、自立したビジネスを築くためには、独自のノウハウや技術の活用、新規取引先の開拓、そして事業継続性の確保が不可欠です。これらの要素は、持続可能なビジネスモデルへの移行を可能にし、一人親方としてのビジネスの安定と成長を実現します。

①独自のノウハウや技術の活用

独自のノウハウや技術は、一人親方が市場で差別化を図るための最も強力な武器です。これにより、高付加価値の製品やサービスを提供し、利益を最大化することが可能になります。独自性があれば、競合との差別化が容易になり、新規顧客の獲得がより効果的になります。しかし、この独自性を活かすためには、それを明文化し、社内外にその価値を伝えることが重要です。これにより、社内の従業員はもちろん、外部のステークホルダーにもその価値を認識してもらうことができます。

②新規取引先の開拓

新規取引先の開拓は、ひ孫請けからの脱却において最も重要なステップの一つです。新しい市場に進出することで、ビジネスのリスクを分散し、特定の取引先に依存しない安定したビジネスモデルを構築できます。新規市場への進出には、市場のニーズを理解し、それに応える新商品やサービスの開発が必要です。このプロセスでは、マーケットインのアプローチを取り、顧客の課題を解決する製品やサービスを提供することが重要です。また、新規取引先との関係構築には、独自のノウハウや技術を前面に出し、競合との差別化を図ることが効果的です。

③事業継続性の確保

ひ孫請けからの脱却を図る過程で、事業継続性を確保することは非常に重要です。新規取引先の開拓に成功しても、既存の取引先との関係を維持し、安定した収入を確保することが必要です。また、独自のノウハウや技術を安売りせず、適正な利益を確保することで、事業の持続可能性を高めることができます。事業継続性を確保するためには、市場の変化に柔軟に対応し、ビジネスモデルを適宜調整する必要があります。

一人親方がひ孫請けから脱却するためには、独自のノウハウや技術を活用し、新規取引先を開拓し、事業継続性を確保することが重要です。これらの要素は相互に関連し合い、一つ一つがビジネスの成功に不可欠です。独自のノウハウや技術を活用することで、市場での競争力を高め、新規取引先の開拓を通じてビジネスのリスクを分散します。また、事業継続性を確保することで、ビジネスの安定と成長を実現します。これらの戦略を実行することで、一人親方はひ孫請けの立場から脱却し、自立したビジネスを築くことが可能になります。

あなたはひ孫請けから脱却するために、どのような戦略を実行されるでしょうか?

ご参考:下請けのランクアップ!建設業で成功を収める5つのステップ