ビジョン実現コンサルティング

  • お気軽にお問い合わせください。TEL : 03-4530-9287
  • 営業時間:9:00〜17:00(土日祝除く)

今週のコラム 商社業界の勝者と敗者を分ける営業利益率の秘密

商社業界の経営者のみなさま、足元の業績はいかがでしょうか?
中小・中堅商社は、5大商社のように「ラーメンからロケットまで」と言われるほど事業範囲は広くありません。ある特定の商品・サービスについての輸出入、卸売販売、中間流通等の事業を展開している専門商社と呼ばれるところがほとんどだと思います。

インターネットなどのIT技術の発展・普及、流通網の高度化・効率化などにより、これまでのように、ある特定の商品・サービスについての輸出入、卸売販売、中間流通等の事業を展開していても、これまで以上に稼ぐことが難しくなってきている状況ではないでしょうか?

実際に、中小・中堅商社の営業利益率は、下記となっており、コロナ禍後は回復基調ですが、2.1%と十分な営業利益率とはいえません。

  • 2018年度:約1.66%
  • 2019年度:約1.53%(↓減少)
  • 2020年度:約1.61%(→ほぼ変わらず)
  • 2021年度:約1.96%(↑増加)
  • 2022年度:約2.11%(↑増加)

1. はじめに

商社業界における営業利益率の改善は、コロナ禍の影響からの回復期において、今や企業存続のために避けては通れない課題となっています。多くの商社は、売上は徐々に回復しつつあるものの、営業利益が期待通りに増加していない現状に直面しています。これは、営業効率の低下、高まるコスト圧力、そして市場の不確実性が相まって、営業利益率を押し下げているからです。

このような状況下で、営業利益率の改善はただ単に経営上の優先事項ではなく、企業が市場内で生き残り、さらには成長するための必須条件となります。しかし、大手商社と比較して、我々のような中小商社が同様のスケールでコスト削減や効率化を行うことは現実的ではありません。そこで重要となるのは、自社の状況に合わせた営業利益率の改善策を見つけ、実行に移すことです。

こんなことはありませんか?

経営会議で、「営業利益率の改善」が重要な議題として取り上げられたが、具体的な行動計画にはまだ手がつけられていない状態。この状況を打開するためには、まず営業利益率をどのように改善できるかについての深い理解が必要です。そして、適正な営業利益率が何であるべきか、また、自社にとって最適な改善方法は何かを探求することが欠かせません。

このコラムでは、中小商社の経営者が直面するこれらの課題に対して、具体的な解決策を提供します。営業利益率を劇的に高めることは決して容易な道のりではありませんが、勝者と敗者を分ける営業利益率の秘密を解き明かすことで、あなたの企業も市場での成功への道を歩み始めることができるでしょう。

2. 営業利益率の基礎知識

営業利益率は、企業の財務健全性と収益性を測定する重要な指標の一つです。これは、売上総利益から営業費用を差し引いた額を売上高で割ったもので、企業が本業からどれだけの利益を生み出しているかを示します。商社業界においては、この指標が特に重要視される理由があります。それは、商品の売買が主な事業であるため、効率的な運営が直接利益率に影響を与えるからです。

2.1. 営業利益率とは何か?

営業利益率を計算する公式は、営業利益率=営業利益÷売上高×100%です。この数値は、企業の売上高に対する営業利益の割合をパーセンテージで表したもので、企業が売上をどれだけ効率よく営業利益に転換しているかを示します。営業利益とは、売上原価や販売費および一般管理費などの営業費用を売上から差し引いたもので、企業の本業による利益を意味します。

2.2. なぜ営業利益率が重要なのか

営業利益率は、企業の収益性を判断するための基準として用いられます。高い営業利益率は、企業がその売上を高い効率で利益に変えていることを示し、市場競争力が強く、経営が効率的であることを意味します。逆に、低い営業利益率は、売上が高くても、その大部分がコストとして消費されていることを示し、収益性の向上が必要であることを指摘しています。特に、経済環境の変化や市場の不確実性が高い場合、営業利益率は企業がこれらの変動にどれだけ強く対応できるかを示す指標となります。

2.3. 業界内比較

営業利益率は業界や市場によって異なります。そのため、自社の営業利益率を業界平均と比較することは、企業の市場内での位置付けを理解する上で非常に有効です。商社業界においては、薄利多売のビジネスモデルを採用している企業が多いため、全体的に低い利益率が一般的です。しかし、効率的な在庫管理、優れたサプライチェーン戦略、強力な顧客関係を築くことができれば、業界平均を上回る営業利益率を実現することが可能です。

営業利益率の適正値は、業界の標準によって大きく異なりますが、一般的には5%から10%が健全な企業の目安とされています。しかし、これはあくまで一般的な指標であり、特定の商社が目指すべき営業利益率は、そのビジネスモデル、市場環境、戦略に基づいて個別に設定する必要があります。

営業利益率を理解し、適切に管理することは、商社が市場競争力を維持し、収益性を高めるために不可欠です。業界の平均や競合他社との比較を通じて、自社の営業利益率が適正な範囲内にあるかを評価し、必要に応じて戦略を調整することが重要です。経済環境の変化に柔軟に対応し、持続可能な成長を遂げるためには、営業利益率の基礎から応用までを熟知し、それを経営戦略に生かすことが求められます。

3. 営業利益率を高める戦略

商社の営業利益率を劇的に向上させるためには、戦略的なアプローチが必要です。これには、コスト削減、効率化、収益性の高い商品やサービスの選定、市場戦略の最適化など、複数の要素が関与します。以下では、商社が営業利益率を向上させるために採用できる主要な戦略について解説します。

3.1. コスト管理の強化

  • 固定費の最適化: 固定費用、特に不動産や設備投資に関連するコストの見直しを行い、必要な投資のみに限定することが重要です。リース契約の再交渉や、非中核部門のアウトソーシングも効果的な手段となり得ます。
  • 変動費の削減: 売上原価を構成する変動費、特に仕入れコストの削減には、サプライヤーとの交渉、代替サプライヤーの検討、バルク購入による単価削減が有効です。
  • 運営効率の向上プロセスの自動化、デジタルツールの導入により、業務効率を高め、人件費などのオペレーションコストを削減します。

3.2. 収益性の高い商品・サービスの選定

  • 高利益商品への焦点: 売上構成を分析し、利益率の高い商品やサービスに焦点を当てることで、全体の営業利益率を向上させます。この選定プロセスには、市場分析と顧客ニーズの詳細な理解が必要です。
  • 価格戦略の最適化: 適切な価格設定は、営業利益率を大きく左右します。価格感受性の低い製品やサービスでは価格を見直し、価値提案を強化することで、利益率を改善できます。
  • 新商品・サービスの開発: 市場ニーズに応える新しい商品やサービスの開発は、収益源の多様化と営業利益率の向上に寄与します。

3.3. 市場戦略と顧客管理の最適化

  • ターゲット市場の精選: 市場のセグメント化とターゲット市場の選定により、マーケティングの効果を最大化し、より収益性の高い顧客層にリソースを集中させます。
  • 顧客関係の深化: 長期的な顧客関係を築くことで、取引の安定性と顧客からの信頼を高め、リピート購入や高価格帯の商品・サービスへのアップセルを促進します。
  • 新市場への進出: 国内市場だけでなく、海外市場への展開も検討します。新興市場への進出はリスクを伴いますが、大きな成長機会と営業利益率の向上につながります。

3.4. 組織とプロセスの再構築

  • 組織文化の変革: 従業員の意識と行動を変えることで、コスト意識の高い文化を醸成し、経費削減と効率化を推進します。
  • 意思決定プロセスの迅速化意思決定プロセスを簡素化し、迅速な市場対応を可能にします。これにより、チャンスを逃さず、競争優位性を保つことができます。

営業利益率を向上させるためには、コスト管理、商品・サービス戦略、市場戦略の最適化がポイントとなります。これらの戦略を組み合わせることで、商社は競争力を高め、市場における持続可能な成長を達成することが可能です。営業利益率の向上は一朝一夕には達成できないため、長期的な視点を持ち、組織全体で取り組む必要があります。

4. 営業利益率を低下させる罠

営業利益率の低下は、企業にとって深刻な経営上の問題を引き起こします。特に商社においては、市場の変動性や競争の激化により、利益率を維持することが一層難しくなっています。営業利益率が低下する主な原因を理解し、これらの罠に陥らないようにすることが、企業の収益性と持続可能性を確保するポイントです。

4.1. 過剰なコスト構造

  • 固定費の膨張: 過剰なオフィススペースや必要以上の設備投資は、固定費を不必要に増大させます。経済状況が悪化した際には、これらの固定費が重荷となり、利益率を圧迫します。
  • 効率の悪いプロセス: 業務プロセスが非効率的である場合、それに伴うオペレーショナルコストの増加は営業利益率を低下させる主因となります。特に手作業に依存するプロセスや、過剰な承認手続きが問題となるケースが多いです。
  • 在庫コストの管理失敗: 過剰な在庫保持は、資金の固定化だけでなく、廃棄や値引き販売による損失を引き起こします。適切な在庫レベルの維持は、コスト削減と営業利益率の改善に不可欠です。

4.2. 不適切な商品・市場戦略

  • 利益率の低い商品への依存: 利益率の低い商品やサービスに依存していると、全体の営業利益率が低下します。市場ニーズや競争状況の変化に応じて商品ポートフォリオを最適化することが重要です。
  • 市場分析の誤り: 市場の需要や競争力を正確に分析できていない場合、商品やサービスの価格設定ミスや市場戦略の失敗を引き起こし、結果として利益率が低下します。
  • 価格競争への過剰反応: 競合との価格競争に過剰に反応することは、利益率を大幅に低下させる可能性があります。価格よりも価値提案に焦点を当てることが、長期的な収益性を確保するためには重要です。

4.2. 経営の柔軟性欠如

  • 市場変化への適応失敗: 経済環境や消費者の嗜好が変化しても、それに適応する柔軟性がないと、企業は市場機会を逃し、最終的には営業利益率が低下します。
  • 革新の遅れ: 新技術やビジネスモデルの採用が遅れると、競争優位性を失い、市場での立場が弱まります。これは、収益性への直接的な影響を及ぼします。
  • リスク管理の不備: 市場の変動や外部からのショックに対するリスク管理が不十分であると、突発的なコスト増加や収益の損失を招き、営業利益率に悪影響を与えます。

営業利益率を低下させるこれらの罠は、多くの場合、経営戦略や意思決定プロセスにおける誤りから発生します。これらの罠を避け、営業利益率を向上させるためには、コスト管理の徹底、商品・市場戦略の最適化、そして組織全体の柔軟性と適応性の強化が必要です。商社は、これらの戦略を実施することによって、経済環境の変化に対応し、競争力を維持しながら収益性を向上させることができるでしょう。

5. 業界勝者の営業利益率向上事例

業界内で勝者となるためには、単に市場で生き残るだけでなく、変化する環境に適応し、営業利益率を効果的に向上させる必要があります。成功企業の事例を学ぶことは、他の企業にとって貴重な洞察を提供し、自社の戦略に活かすことができます。以下では、商社業界の中で営業利益率を劇的に改善した企業の事例をいくつか紹介します。

5.1. 中小・中堅商社の事例

事例1: デジタル化によるコスト削減と効率化

ある商社は、デジタル化を全面的に推進することで営業利益率を大幅に向上させました。具体的には、在庫管理、顧客管理、販売プロセスをデジタル化し、これまで人手に頼っていた作業を自動化することで、オペレーションコストを大幅に削減しました。また、デジタルマーケティングの導入により、より正確な顧客ニーズの把握と効果的な販売戦略を実現。これらの取り組みにより、営業利益率は前年比で20%以上向上しました。

事例2: 高利益商品へのシフト

別の商社は、商品ラインナップの見直しにより営業利益率の改善を達成しました。低利益率の商品を徐々に削減し、高マージンの商品や独自ブランドの開発にリソースを集中。さらに、価格戦略を見直し、価値提案を強化することで、顧客の価格感受性を減少させました。この戦略により、同社の営業利益率は15%向上し、業界内での競争力を大幅に高めることができました。

事例3: サプライチェーンの最適化

ある中堅商社は、サプライチェーンの効率化により、営業利益率の改善に成功しました。サプライヤーとの長期契約の見直し、バルク購入による単価の削減、ロジスティックスプロセスの最適化を実施。これにより、仕入れコストを大幅に削減し、在庫保持コストを低減しました。また、リードタイムの短縮により顧客満足度も向上。この取り組みにより、営業利益率は10%以上改善されました。

事例4: ターゲット市場の再定義

業界の変化に対応して、ある企業はターゲット市場を再定義しました。従来の一般消費者市場から、より利益率の高い企業向け市場にフォーカスを変更。ニッチながらも高収益を見込める市場セグメントを開拓し、特化した商品とサービスを提供することで、顧客の厚い信頼を獲得しました。この戦略転換により、営業利益率は25%向上し、業界内でのポジションを確固たるものにしました。

5.2. 5大商社の事例

かつて5大商社は、原材料やエネルギー資源を海外から日本に輸入、日本製品を輸出する貿易業が中心でした。その後、1980年代の「商社冬の時代」を迎え、2000年初めまで各社が大規模なリストラを断行し、業界再編も起こりました。

5大商社といわれる大手総合商社は、幅広い分野で商品・サービスの輸出入、卸売販売、中間流通等の事業を展開。「ラーメンからロケットまで」と言われるほど事業範囲は幅広く、石油や鉄鉱石、石炭など資源の権益投資から、電力や鉄道などインフラ関連の輸出や事業運営、さらに食料・繊維分野まで多岐にわたり、コンビニエンスストアへの出資、金融事業や医療・医薬品、病院経営にまで広がっています。

経営モデルはかつての原油、鉄鋼、食糧の大口輸入を軸とするビジネスから様変わりしました。近年強化しているのは様々な事業会社に出資、経営を担い収益を得るビジネスです。成長分野では単なる出資だけでなく、事業会社自体の買収や経営参加を積極化。輸出入ビジネスの比率は小さくなり、今の商社はメーカーや小売り、物流などの事業集合体となっています。

最近の大手商社ビジネスのキーワードは「非資源」「新興国」「バリューチェーン(価値の連鎖)」だといわれています。ただ、資源価格の推移や景気動向によって、それぞれの分野への投資は変化する。さらに各社は人工知能(AI)や、すべてのモノがネットにつながる「IoT」などの技術の掘り起こしにもしのぎを削っています。

三菱商事:バランスの取れた事業経営。「金属資源」に強み

2023年3月期決算 

連結:21兆5,719億円、営業利益9,524億円(営業利益率4.42%)、経常利益1兆6,806億円(経常利益率7.79%)

単体:売上高2兆4,108億円、営業利益▲1,285億円(営業利益率▲5.33%)だが、受取配当金1兆3,315億円などで、経常利益1兆2,992億円(経常利益率53.89%)

三菱商事はバランスの良い事業経営を行っており、「金属資源」に強みを持っています。

「DX総合戦略Vision」を掲げています。「DX事業戦略」と「データドリブン(DD)経営戦略」の2つから成り立っており、各事業現場が保有するデータにデジタルの力を掛け合わせ、新たな価値を生み出すことで、事業の強化を目指しています。

三井物産:「資源No.1」から非資源分野の開拓へ 

2023年3月期決算

連結:売上高 14兆3,064億円、営業利益6,934億円(営業利益率4.85%)、経常利益1兆3,952億円(経常利益率9.75%)

単体:売上高 4兆7,923億円、営業利益166億円(営業利益率0.35%)だが、受取配当金8,936億円などで、経常利益8,975億円(経常利益率53.89%)

「資源分野」に強みを持っています。しかし、資源分野は資源価格の影響をダイレクトに受けてしまう市況産業であるというデメリットがあります。その結果、2016年度に財閥解体後以来で初めて赤字を計上してしまいましたが、鉄鉱石などの資源高を追い風に、2022年度の純利益は1兆1,306億円で業界2位を記録しました。

近年、三井物産は経営方針のかじを切り替え始め、急速にポートフォリオ総合商社として歩み出しつつあります。その中でも特に強みは、食料や消費財の製造・販売および売買や医療・ヘルスケア関連事業の「生活産業」事業です。

伊藤忠商事:非資源分野に強み。安定的な収益基盤を構築

2023年3月期決算 

連結:売上高  13兆9,456億円、営業利益7,108億円(営業利益率5.10%)、経常利益1兆1,068億円(経常利益率7.94%)

単体:売上高  4兆2,071億円、営業利益1,142億円(営業利益率2.71%)だが、受取配当金5,241億円などで、経常利益6,551億円(経常利益率15.57%)

特に「非資源分野」に強みを持っています。資源価格の影響を大きく受ける資源ビジネスに偏らず、景気変動耐性のある生活消費関連を中心としているため、安定的な収益基盤を構築しています。ファミリーマートでの広告ビジネスや金融サービスの拡大、「ほけんの窓口」でのオンライン接客などもあります。

丸紅:金属だけでなく、食料などの非資源分野も強い

2023年3月期決算 

連結:売上高9兆1,904億円、営業利益3,467億円(営業利益率3.77%)、経常利益6,517億円(経常利益率7.09%)

単体:売上高 2兆2,446億円、営業利益▲391億円(営業利益率▲1.74%)だが、受取配当金4,080億円などで、経常利益3,626億円(経常利益率16.15%)

資源分野では「金属事業」と、非資源分野では「食料事業」があります。資源分野である金属事業では、特に銅分野に強みを持っています。チリで鉱山開発を展開しており、持分権益銅量は日本トップクラスです。非資源分野である食料事業は、総合商社の中でも大きな存在感を発揮しています。

特に、コーヒー豆輸入は業界全体の約30%のシェアを誇ります。2019年5月、イグアスベトナム社(ベトナム、丸紅100%)を設立し、2022年度より生産販売を開始しました。イグアス社・丸紅の両社で年産4万トンの生産能力となり、丸紅はB to Bインスタントコーヒー市場において、世界最大級の製造販売者となる見込み。

また、食料事業だけでなく、アグリ事業やフォレストプロダクツにも注力しています。

AiRO社による空港内の自動運転ソリューション、インドネシアでのデジタル母子健康手帳サービスも展開中。

住友商事:非資源分野では、不動産やメディア・デジタルに強み

2023年3月期決算 

連結:売上高 6兆8,178億円、営業利益4,230億円(営業利益率▲6.20%)、経常利益7,229億円(経常利益率10.60%)

単体:売上高 5,901億円、営業利益▲595億円(営業利益率▲10.08%)だが、受取配当金4,154億円などで、経常利益3,917億円(経常利益率66.38%)

特に、メディア分野では、日本最大のケーブルテレビ事業であるJ:COM、テレビ通販事業のジュピターショップチャンネルに加え、第5世代移動通信システム(5G)関連事業、デジタルメディア関連事業に取り組み、収益基盤の強化を進めています。さらに、デジタルビジネス事業では、DXセンターに社内外のデジタル人材を集結し、ITサービス事業を展開するSCSKとの一体運営により、住友商事グループのDXを加速させています

「HAX Tokyo」を通じたハードウェア領域でのアクセラレーター事業、DX技術専門会社「Insight Edge」の設立も手がけています。

これらの事例からわかるように、営業利益率を向上させるためには、デジタル化の推進、商品戦略の見直し、サプライチェーンの最適化、市場の再定義など、多角的なアプローチが必要です。これらの成功事例は、他の商社が営業利益率を改善するための貴重な示唆を提供します。変化への適応、イノベーションの推進、そして戦略的な意思決定が、業界内での勝利への重要なポイントとなるでしょう。

6. 営業利益率向上のための未来戦略

商社が未来にわたって営業利益率を向上させ続けるためには、短期的な利益追求だけでなく、長期的な視野を持って戦略を策定することが不可欠です。ここでは、技術革新、持続可能性、組織適応力の向上を核とした未来戦略について解説します。

6.1. デジタル技術の活用

  • ビッグデータと分析ツールの導入: 市場の動向、顧客の行動、競合の状況など、ビッグデータを分析することで、より戦略的な意思決定が可能になります。これにより、マーケティングの効率化、在庫管理の最適化、顧客ニーズの迅速な把握が実現します。
  • AIと自動化の利用: AI技術を活用した顧客サービスや、ロボティクスによる倉庫管理の自動化は、オペレーショナルコストの削減とサービス品質の向上を同時に達成します。
  • デジタルマーケティング: ソーシャルメディアやオンラインプラットフォームを通じたデジタルマーケティングの展開により、広範囲にわたる顧客層にコスト効率良くリーチできます。

6.2. 持続可能性への取り組み

  • エコフレンドリーな商品とサービスの提供: 環境への配慮が消費者の購買決定に大きな影響を与えるようになっています。商社は、環境に優しい商品やサービスを提供することで、市場の需要を捉え、新たな顧客層を開拓することができます。
  • サプライチェーンのグリーン化: サプライチェーン全体での環境影響の低減は、コスト削減にもつながります。例えば、持続可能な原材料の使用や、効率的な物流プロセスの導入などが挙げられます。
  • CSR活動の強化: 企業の社会的責任(CSR)活動に対する取り組みを強化することで、ブランドイメージを向上させ、顧客ロイヤルティの構築に寄与します。

6.3. 組織とプロセスの革新

  • アジャイル経営の採用: 市場の変化に迅速に対応するためには、組織の機動性を高めるアジャイルな経営スタイルが効果的です。これにより、変化への適応速度が上がり、市場の機会を最大限に活用できます。
  • 人材の多様性とスキル開発: 多様なバックグラウンドを持つ人材の採用と、従業員のスキルアップを図ることで、新しいアイデアと革新的な解決策を生み出します。また、デジタル時代に適したスキルセットの育成は、企業の競争力を維持する上で不可欠です。
  • 柔軟な働き方の推進リモートワークやフレックスタイムの導入は、従業員のモチベーション向上につながるだけでなく、オフィス関連のコスト削減にも寄与します。

営業利益率を向上させるための未来戦略は、デジタル技術の活用、持続可能性、組織適応力の向上の三つの柱に集約されます。これらの戦略を積極的に取り入れることで、商社は長期的な視点で市場の変化に対応し、持続可能な成長と収益性の向上を実現することができます。未来に向けて営業利益率を高めるためには、革新を恐れず、絶えず学び続ける柔軟な姿勢が求められます。

7. まとめ

商社業界における営業利益率の改善は、経済の変動性が高い今日では特に重要な課題です。本コラムでは、営業利益率の基本から、それを低下させる罠、そして未来戦略に至るまで、幅広い視点からアプローチしました。

コスト管理の徹底、収益性の高い商品やサービスへの焦点、効果的な市場戦略の実施、そして経営の柔軟性と革新性の強化が、利益率向上のための重要なポイントとなります。また、持続可能性への取り組み、デジタル技術の活用、そして組織文化の革新が、未来にわたって営業利益率を向上させるための基盤となります。

最終的に、これらの戦略を総合的に実施することで、商社は市場での競争力を維持し、持続可能な成長を達成することが可能となるでしょう。今日の経済環境下で成功を収めるためには、絶えず環境に適応し、革新を追求する姿勢が不可欠です。

あなたはどのような戦略で営業利益率を向上させ、持続的な成長を成し遂げられますか?