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今週のコラム 金融庁の地銀規制強化に備えよ!!!

「金融庁が2024年3月末から、地方銀行や信用金庫に新たな資本規制を導入するというニュースがありましたが、うちのような中小企業にも影響があるのでしょうか?新聞だけではよくわからなかったので、わかりやすく教えてください。」──とある経営者の方からのご相談です。

新聞記事をご覧になった方もいらっしゃると思いますが、2021年9月20日の日経新聞朝刊で「地銀株保有厳しく 金融庁が新規制 中小融資は促進」という記事がありました。金融庁が2024年に導入するのは、2008年のリーマン危機の反省を踏まえてできた国際規制(バーゼル3)の国内版です。

日経新聞記事はこちら →
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210920&ng=DGKKZO75908740Q1A920C2MM8000

メガバンクなど海外でも営業する銀行(=国際基準行)には2023年3月末から最終段階の適用を開始、地銀など国内だけで営業する金融機関(=国内基準行)への適用時期は明確になっていませんでしたが、今回2024年3月末と明示されました。

金融機関に対する規制のベースとなるバーゼル規制については、日銀HPを参照ください。

日銀HPはこちら →
https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/pfsys/e24.htm/

バーゼル合意とは、バーゼル銀行監督委員会が公表している国際的に活動する銀行の自己資本比率や流動性比率等に関する国際統一基準のことです。日本を含む多くの国における銀行規制として採用されています。

バーゼル合意は、1988年(昭和63年)に最初に策定され(バーゼルI)、2004年(平成16年)に改定されました(バーゼルII)。その後、2007年(平成19年)夏以降の世界的な金融危機を契機として、再度見直しに向けた検討が進められ、2017年(平成29年)に新しい規制の枠組み(バーゼルIII)について最終的な合意が成立しました。

なお、バーゼル合意による規制はあくまで国際間の合意なので、日本の金融機関を直接的に規制する根拠になりません。このため、銀行法など関係法令に基準を設けることによって、各金融機関に対してバーゼル合意による規制と同等の基準を定めています。今回は、地方銀行や信用金庫などの国内基準行に対して資本規制を導入するものです。

ご相談いただいた資本規制による影響を考える上で、参考のために過去を振り返ってみましょう。

バーゼルIは1992年度末に日本で適用が開始され、「バブル崩壊の引き金」、「新規融資ストップ・貸し剥がし」、「株式の持ち合い解消」、「銀行の統合」という結果につながりました。

その後、生き残りをかけて都市銀行13行が統合により「メガバンク3行+りそな」に集約されます。統合後も不良債権処理に伴う損失が大幅に拡大した某メガバンクでは、優先株を約3,400の取引先に発行して「1兆1千億円の増資」を実施することで乗り切りました。

また、バーゼルIIは2006年度末から適用開始され、「銀行による必要な自己資本の検証と検証など」が行われました。そして、バーゼルIIIの契機となった「リーマンショック」は、大幅に基準未達となった「メガバンクの増資合戦」に発展したのです。

当時、銀行員として取引先との融資や営業を担っておりましたので、特に導入当初のバーゼルIでは本当に厳しい状況であったことを思い出します。実際、規制される前までは融資をどんどん増やしていたのに、規制が視野に入ると新規融資が完全にストップしましたので、「晴れたときには傘を貸して、雨が降ったときには傘を奪うのか!?」と揶揄されたりしました・・・(泣)

また、株式の持ち合い解消を打診した際には、取引先の社長から「メインを変えてもいいという意思表示と理解してよろしいですかな?」と詰め寄られることも多かったのです・・・銀行としても背に腹は変えられない状況でしたので、「我々はいつまでも貴社のメインバンクでありたい考えておりますが、持ち合い株の売却だけは何としてもご了解賜りたい。」と強引に了解いただいていたことが鮮明に思い出されます。

今回、地方銀行や信用金庫に新たな資本規制を導入する影響としては、どのようなものが考えられるでしょうか?自己資本規制適用によるものと、規制内容変更によるものの2つの観点から見てみましょう。

<自己資本規制適用による影響>
  ・バーゼル基準達成の金融機関 →  特段影響なし
  ・バーゼル基準未達の金融機関 →  新規融資ストップ・貸し剥がし、優先株購入依頼、etc

<規制内容変更による影響>
  ・保有株式の損失リスクを重く見積もる       → 株式の持ち合い解消
  ・中堅・中小企業向け融資のリスクを今より軽くする → 貸出増加?!

過去の国際基準行の事例と大きく異なる点としては、これまでバーゼル規制に対応する時間が十分にあったということです。あなたの会社のメインバンクが、どの程度の自己資本を確保していて、自己資本規制適用による影響を受けるのか否かを確認しましょう。

また、株式の持ち合いをしているのか否かも含めて、全ての取引金融機関との取引状況を確認するとともに、今後の取引を見直していただくいい機会になると思います。その際、新規融資がストップしたり、貸し剥がしされることだけでなく、あなたが取引している地方銀行や信用金庫が統合・消滅する可能性があることも認識しておいてください。

以前のコラム「経営者が備えたい地銀再編への準備」でもお伝えしましたが、「取引されている地銀が、いつ合併・統合するのかわからないので、新銀行になってもきちんと取引が継続できるよう、あなたの会社の経営計画書、商品・サービスの特徴、地域での活動状況についてまとめておいてください。」
(コラムはこちら → https://www.musubu-consulting.jp/column19/ )

バブル崩壊後、都市銀行13行が統合により「メガバンク3行+りそな」に集約されたのと同じような状況に、地方銀行や信用金庫がおかれていますので・・・

最悪の状況に備えつつ、最善を尽くすのが経営者としてのあるべき姿ですので、取引している地方銀行や信用金庫からの融資がストップすることや、株式持ち合い解消なども想定の範囲内としてください。

その上で、これまで取引していた地方銀行や信用金庫が統合で消滅しても影響がでないように資金繰りや銀行取引をしていきましょう。

コラム「経営者が銀行と良い関係を築くために必要なたったひとつの条件」も参考にしていただければ幸いです。是非とも、銀行と良い関係を築き、金融庁の地銀規制強化に備えてください。
(コラムはこちら → https://www.musubu-consulting.jp/column10/ )

あなたは経営者として、地方銀行や信用金庫と今後どのようなお付き合いをされるおつもりでしょうか?