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今週のコラム 第98話: 経営者は「組織は頭から腐る」ことを自覚すべし!

「3年前に先代から引き継いだ後、古参役員も多いので、これまでは様子見をしてきました。私としては、ビジネスモデルが古いと感じていますので、新規事業を立ち上げるべきだと思うのですが、何かいいアイディアはないでしょうか?」──とある金属加工業の二代目社長からのご相談です。

これまでうまくいっていたビジネスモデルほど、時代の変化や顧客ニーズの変化に対して鈍感であり、過去の成功体験が捨てられないものです。そして、その強烈な成功体験が邪魔をして、「まだ大丈夫だ!?」、「アプローチを少し変えれば・・・」、「もっと営業に注力すれば・・・」などと、もっともな言い訳を用意して、自分に言い聞かせている経営者が多いように思います。

それに忖度して、「もっと切り口を変えてアプローチしろ!」、「もっとしっかりと営業活動をして取引獲得してこい!」などと、発破をかける役員連中が出てくると、組織は瓦解してしまいます。

本来であれば、ビジネスモデルを変えて、新規事業を立ち上げるということは、組織のトップである経営者にしかできないことなのですが・・・

失敗したときのリスクヘッジなのかどうかは知りませんが、新規事業と立ち上げる際に、役員連中に意見を出させたり、合議制にしてみたりして、なんとなく会社全体の意思統一をしたような体をつくろうとしたりする経営者がいると非常に残念な気持ちになります。

特に、大手企業の経営者で、いわゆるサラリーマン社長(=「雇われ社長」)に多いように思われて仕方ありません。問題点や課題を指摘するのは、びっくりするぐらいに的確で経営者らしいのですが、「その問題をだれがどのように解決するか」ということになると、なぜか当事者ではないような言動・振る舞いがでてきたりします・・・

とある大手部品メーカーでは、外部から社長に抜擢された方が、各部門の責任者である担当役員に「現在、起きている問題・課題は何か?」、「どのように対処すれば問題・課題を解決できるのか?」という質問をしたところ、問題・課題の現状や対処方法についてはきちんと回答できたそうです。

その後、「では、その問題をだれが対処して解決するのですか?」と質問すると、全ての役員が黙ってしまい、場の空気が凍りついたとのこと・・・

これと同じことを、大手企業の各担当役員に質問したらどうなるでしょうか?
個人的な意見ですが、間違いなく同様の事態が頻発するのではないかと考えています。

あくまで一般論ですが、上場企業の大手クラスであれば、役員になれるのは同期で数百人いるなかの1人だけであり、役員になった当人以外は全て外部への出向・転籍となることが多いです。

当然ながら、いい大学をいい成績で卒業しなければ入社も叶いません。そして、その後の約20〜30年間(業種・業界によって異なる)を過酷な出世競争に勝ち残って部長などになっていますので、優秀であることは間違いありません。

そして、最後の競争にも打ち勝ち、見事「役員の椅子」を手に入れたはずであり、その後も順調に出世すれば、取締役・監査役→常務 (取締役常務)→専務(取締役専務、代表取締役専務)→副社長(代表取締役副社長、取締役副社長)→社長(代表取締役社長)→会長(取締役会長)となるので、社長というのは極めて優秀な人材がなるはずなのですが・・・

大手企業のピラミッドでは、学歴や派閥というものが、現在でも非常に強く機能しています。特に、経営層に近くなればなるほど、足の引っ張り合いなどの派閥争いは日常茶飯事なのです。

そして、その修羅場をくぐってきたからこその役員就任です。そして、いかにボロを出さないか、いかに成果をアピールするかが、その後の出世も左右します。このため、リスクを取ることを極端に避けるようになっていくのです。

つまり、失敗が許されない社風の中で、常に優秀であり続けるだけでなく、成果も残しながら、派閥争いを制しなければならないのです。

入社当時、血気盛んに、「何でやらないんですか?やらなきゃ何も始まらないでしょう!」と上司に噛み付いていた優秀な若者は、見切りをつけて自分で起業したり転職したりします。

外部に転出できない若者は、不満を抱えながらも、長年の派閥争いなどを経験する中で大人しくなり、上司の顔色ばかり見るような風見鶏に成り下がってしまう・・・

運良く出世競争に勝ち残り、役員に就任したとしても、これまでの習い性が出てしまい、「チャレンジして失敗するよりは、評論家になり、チャレンジしない」という残念な行動になってしまうのです。

そのような役員の中から、社長(=代表取締役)が選出されるのですから、本来であれば「ビジネスモデルを変えて、新規事業を立ち上げる」という、組織のトップである社長がやらなければならないことができないのも仕方ないかもしれません

しかし、社長がやらなければならないことをやらなければ、間違いなく組織は腐っていきます。

「職務として、やるべきこと」をトップの社長がやらないのですから・・・その部下である役員や従業員などが、職務をきちんと遂行することを期待する方がどうかしているのです。

社長であるあなたが、会社の内外からどのように見られているか、きちんと認識されていますでしょうか?日ごろ接点のある役員や部長職クラスだけでなく、役職のない社員やパート・アルバイトでさえも、社長の言動などを敏感に感じています。

日頃から「会社経営に真摯に対応し、新規事業を率先して展開している」社長が経営する会社では、各責任者だけでなく、末端の従業員までもが、如何にして会社をより良くしていくかなどを考えているものなのです。

私の個人的な感想ですが、「社長の器以上には、会社はならない」と言っても過言ではないのではないでしょうか?

中小企業でも、役員への出世階段などは同じですが、肝心要の社長はオーナーであるあなたが担うのですから、失敗による批判を恐れずに「ビジネスモデルを変えて、新規事業を立ち上げる」ことに積極的に挑んでください。

上場しているような大手企業などでは、株主に配慮して短期的な収益アップが至上命題とされることがあります。しかし、わらわれのような中小企業で、親族一同で会社経営&保有している場合には、株主も親族ですので、長期的な視野を持って経営をしていくことが可能になります。

このようなファミリービジネスの利点を最大限に活かし、社長として「ミッション(=自分の会社が何を目的に事業を遂行しているのか、何のために社会に存在しているのか)」、「ビジョン(=企業として将来どんな展望があるか、この先どんな企業になることが理想か)」を再定義した上で、如何にして高付加価値・高機能・高単価のある新規事業を展開していくのか、長期的な視野を持ってチャレンジし続けてください。

創業何百年と続いている企業のほとんどは、ファミリービジネスの企業であり、明確な「ミッション」、「ビジョン」をベースに、安定した経営基盤を築かれています。

あなたは社長として、新規事業に果敢にチャレンジしていますか?