今週のコラム 補助金は経営者にとっての毒薬!?
「コロナ禍で本業が厳しくなってきたので、新しい事業を立ち上げて1億円の事業再構築補助金を申請しようと考えているのですが、どういう点に注意して対応すればいいのですか?」──とある金属加工業の2代目経営者の方からのご相談です。
元銀行員ですので、補助金の申請についてご相談をいただくことが多いのですが、そもそも補助金についての基礎的なことも理解されず、ただ補助金がもらえればどうにかなると考えている経営者の方が結構いらっしゃることが残念でなりません・・・
この経営者の方には、「事業再構築補助金についての概要はご理解されていますか?
そもそも、事業再構築補助金の通常枠での補助金額は中小企業100万円~6,000万円(補助率2/3)、中堅企業100万円~8,000万円(補助率1/2、4,000万円超は補助率1/3)となっています。
別途、中小企業は卒業枠(400社限定)として6,000万円超~1億円(補助率2/3)、中堅企業はグローバルV字回復枠(100社限定)として8,000万円超~1億円(補助率1/2)が設けられていますのが、それぞれ下記基準をクリアする必要があります。
卒業枠は事業計画期間内に、①組織再編、②新規設備投資、③グローバル展開のいずれかにより、資本金又は従業員を増やし、中小企業から中堅企業へ成長する事業者向けの特別枠。
グローバルV字回復枠は100社限定。以下の要件を全て満たす中堅企業向けの特別枠。
①2020年10月以降の連続する6か月間のうち任意の3か月の合計売上高がコロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して、15%以上減少している中堅企業。
②補助事業終了後3~5年で付加価値額又は従業員一人当たり付加価値額の年率5.0%以上増加を達成を見込む事業計画を策定すること。
③グローバル展開を果たす事業であること。
このため、事業再構築補助金の補助金額は中小企業100万円~6,000万円(補助率2/3)、中堅企業100万円~8,000万円(補助率1/2、4,000万円超は補助率1/3)という通常枠で考えていただくのが妥当だと思います。
ちなみに、中小企業に該当する場合、通常枠いっぱい6,000万円の補助金を申請するのであれば、補助率1/2なので、自己資金6,000万円+補助金6,000万円で補助対象経費12,000万円の事業規模となります。
また、中堅企業に該当する場合、通常枠いっぱい8,000万円の補助金を申請するのであれば、4,000万円までは補助率1/2なので、自己資金4,000万円+補助金4,000万円で補助対象経費8,000万円・・・(A)、4,000万円超は補助率1/3なので、自己資金8,000万円+補助金4,000万円で補助対象経費12,000万円・・・(B)、補助対象経費総合計20,000万円(A+B)の事業規模となります。
なお、補助金は「後払い」が原則ですので、これをアテにした資金繰りはできません。くれぐれも勘違いをされることがないようにお願いします。
更に、事業再構築補助金を申請する前提として、経営革新等支援認定機関と計画を作成する必要があります。また、補助金額3,000万円を超える場合は、金融機関(銀行、信金、ファンド等)を認定支援機関に組み込むことが必要です。金融機関が認定経営革新等支援機関を兼ねる場合は、金融機関のみで構いません。
他にも緊急事態宣言特別枠などの細かな条件・規定がありますので、詳細は中小企業庁の事業再構築補助金HPをご参照してください。」とお伝えしました。
事業再構築補助金の概要についてご説明しましたが、経営者であるあなたの認識と相違ありませんでしたでしょうか?「えっ、こんなに面倒なの・・・」という声が聞こえてきたような気もしますが・・・(笑)
事業再構築補助金を申請する際の留意点としては下記となります。
1.(経営者として)本当に事業を見直して再構築する覚悟がありますか?
事業再構築補助金の対象は「新分野展開」や「業態転換」、「事業・業種転換」など、会社の命運を賭けておこなう事業の見直しでもありますので、経営者の強い覚悟と、実現可能な事業計画、補助金に関する正しい理解と徹底した進捗管理が必要です。
事業計画書に含めるべきポイントは大きく次の5つですが、経営者であるあなたの頭の中できちんと整理されていますか?そして、それを実行する覚悟はできていますか?
①現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性
②事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)
③事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法
④実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む)
⑤事業化に向けた計画の妥当性、再構築の必要性、地域経済への貢献、イノベーションの促進
また、事業計画書では、あなたが経営者として考える新規事業の「ミッション」「ビジョン」「バリュー」が非常に大切になりますので、前回のコラム「第27話:経営者が考えるべき「ミッション」「ビジョン」「バリュー」について」をご参考になさってください。
2.事業再構築に必要な金額はいくらですか?それは補助対象となっていますか?
事業再構築に必要な経費は、補助対象担っているかどうか事前に確認しましょう。
事業再構築の必要性や経営者の強い覚悟があっても、補助対象にならないと当然ながら補助金は交付されません。
3.補助金は後払いなので、事業再構築期間の資金繰りは大丈夫でしょうか?
基本的には全額自己資金で対応し、途中で補助金が交付されなくても対応可能な資金繰りが必要です。資金繰りが不安な場合は、補助金を使う場合と使わない場合の事業計画と資金繰り表を作成して、把握してください。
事業計画と資金繰り表を踏まえ、金融機関に事業再構築補助金を申請したい旨、現状と今後の取り組みについて説明し、認定支援機関になってもらえるか?もし補助金が交付されなかったとしてもプロパーの融資をしてもらえるか?ということについて相談しましょう。(補助金額3,000万円を超える場合は、金融機関(銀行、信金、ファンド等)を認定支援機関に組み込むことが必要です。金融機関が認定経営革新等支援機関を兼ねる場合は、金融機関のみで構いません。)
4.「認定経営革新等支援機関」の選定はきちんとできていますか?
補助額が高いため、小規模補助金やIT補助金よりも計画作成難易度が高い「経営革新計画」や「ものづくり補助金」レベルの計画書が必要です。
投資額と補助額も大きいため税務の観点や、返金にならないための注意も必要ですし、新規事業・事業立て直しの観点が強いため、単なる補助金申請だけでなく、財務・税務・抜本的なコンサル力・金融機関や税理士などを巻き込むリード力、それらを勘案した実態のある計画作成能力が求められます。実績がある支援機関に依頼しましょう。
5.「事業計画書」作成内容は大丈夫でしょうか?
審査項目として下記をクリアする必要があるのですが、「事業計画書」の内容はこれらをきちんと説明していますか?
(1)補助対象事業としての適格性【2項目】
(2)事業化点【4項目】
(3)再構築点【4項目】
(4)政策点【5項目】
(5)加点項目【3項目】国による緊急事態宣言の影響を受けた事業者に対する加点
また、事業再構築補助金とほかの給付金・助成金等との大きな違いは、以下の2点です。
・対象となる金額が大きく、書類や進め方に、万が一不備があった場合に、支払が否認される場合や資金交付後に返金措置される場合も想定され、会社の業績・事業に与える影響が大きい。
・給付金などとは異なり、書類の整理や事業報告に正確性・透明性が求められ、認定経営革新等支援機関での書類の作成や報告に相応の負担や時間がかかる。
事業再構築補助金は、持続化給付金や持続化補助金のように気軽に申請し、支給されるものではないため、給付金等と同じような感覚で申請すると後に「こんなに大変だとは・・・」となります。
このように、補助金は、事業転換の自己資金の負担を抑えるために活用できるものの、このように相応のリスクと、負担がありますので慎重にご対応願います。
このように効果とリスク(負担)は正に毒薬と同じですので、くれぐれもご留意ください。
あなたは補助金についてどのような認識をお持ちでしょうか?
あなたは事業再構築のために事業再構築補助金を申請しますか?
どのように事業再構築をなさりたいのでしょうか?
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