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今週のコラム 第31話:経営者に必要な環境変化感応能力とは?

「2021年8月6日の日経新聞「ホンダ早期退職が映すEVの波 崩れる産業ピラミッド」という記事で、急変する環境変化の大きな波への対応について考えさせられました。ガソリン車で3万点ある部品数がEV(電気自動車)になると4~5割減るとなるとのことで、エンジン部品の下請企業で他に転用できない場合は廃業せざるを得ない事例も今後でてきますよね。

うちの会社はエンジン関連部品を作っていないので直接的な影響ないけど、影響のある分野でこのような大きな環境変化があった場合にどう対応したらいいか・・・うちの会社が製造している業種で同様の変化があった場合には、変化に対応する時間に余裕がないと廃業するしかありません。

大きな環境変化についての確かな情報をどういう点に注意して情報を集めればいいのでしょうか?もちろん、髙窪さんの本業ではないことはわかっているのですが、元銀行員ということでわかる範囲で教えていただけませんか?」──とある製造業の経営者の方からのご相談です。

 元銀行員だから、ということで、専門外のことについてもご相談をいただくことが多いのですが、業界特有の環境変化に関する情報収集の中で私がやっていた簡単なものをお伝えしました。

「その業界で上場している大企業の有価証券報告書の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」および「事業のリスク」を時系列で見てください。対象先が複数社ある場合は、全ての上場企業の有価証券報告書をチェックしてください。」これだけで、その業界が抱えている環境変化については正確に把握できます。

経営者であるあなたは、どのように情報収集をされますか?

業界紙を定期購読している…、○○総合研究所の業界レポートを参考にしている…など、いろいろとあると思います。

もちろん、業界紙やシンクタンクのレポートなども参考にしていただきたいのですが、有価証券報告書は投資家宛を前提に公開されているものですので、幅広く(=漏れなく:漏れがあると投資家などから訴えられかねない)・簡潔にまとめられています。

これまで自動車の最重要部品であるガソリンエンジンがなくなり、EV(電気自動車)になるほどの変化の場合、人間は変化を好まない習性がありますので「まだ大丈夫!そんなすぐに全てがEV(電気自動車)になるわけではない…」という言い訳をしてしまうことも十分に考えられます。

そのような現状維持バイアスに打ち勝つためにも、経営者であるあなたは自分なりのルールを決めて、環境に大きな変化がありそうな場合は、そのルールに従って対応することが望ましいです。

あなたの会社が属している業界で、上場企業の有価証券報告書をチェックして、業界特有の環境変化に関する情報がある場合には、どれだけの影響があるのか?そして、生き延びるためにどのような対応をしなければならないのか?経営者として、これだけは対応するようにしてください。

また、環境の変化は株価にも反映されます。最重要部品であるガソリンエンジンがモーターに代わること(=電動化)により、部品点数の大幅削減、下請企業の系列崩壊、ガソリンエンジンにかかる商品・サービスの消滅・・・という経営環境の激変により、これまでの勢力地図が大幅に塗り替えられることになるからです。

実際、2020年7月には米電気自動車(EV)メーカーであるテスラの時価総額(「株価×発行済株式数」で計算されるもので、その企業の規模を示しているもの)がトヨタ自動車の時価総額を抜いて、それ以降はトヨタ自動車がテスラに大きく差をつけられている状況がつづいています。

本田技研工業株式会社の2021年3月期有価証券報告書 第一部「企業情報」第二「事業の状況」における「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」および「事業のリスク」はこちらを参照ください。

「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の項目では、(2) 経営環境として「大きな転換期を迎えており、価値観の多様化や、高齢化の進展、都市化の加速、気候変動の深刻化、さらに電動化、自動運転化、IoTといった技術の進化による産業構造の変化が、グローバルレベルで進んでいる。」という記載があります。(2016年3月期以降の有価証券報告書で同様の記載あり)

また、「事業のリスク」の項目では、(4) 環境規制に関わるリスクとして「当社グループのさらなる、電動化の推進に関する中長期的な取り組みに与える影響も大きく、対策の重要性は高まっており、この傾向は今後も加速すると予想されます。」との記載があります。(2020年3月期の有価証券報告書でも同様の記載あり)

「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の項目では5年前から、「事業のリスク」の項目では前年から記載開始されています。時系列でこれらの項目を見ていればある程度の余裕を持って業界特有の環境変化に関する情報収集は十分可能です。

ちなみに、トヨタ自動車株式会社の有価証券報告書でも、2017年3月期から「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の項目で電動化についての記載があります。

日産自動車株式会社の有価証券報告書でも、2018年3月期から「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」および「事業のリスク」の項目で同様の記載があります。

これらのように有価証券報告書を時系列で見るだけで、業界特有の環境変化について数年前から情報収集することが可能です。

「電動化」でガソリンエンジンがモーターに代わることにより、①部品点数の大幅削減、②下請企業の系列崩壊、③ガソリンエンジンにかかる商品・サービスの消滅、④その他、などの影響が考えられます。今後、どのような環境変化があるかさえわかれば、経営者であるあなたには自社にどのような影響が出るかわかるはずです。

あなたの会社にどのような影響が出るかがわかれば、自社商品・サービスの特徴(メリット・デメリット)を把握した上で、系列外や異業種・異業態への新規取引先獲得、新商品・サービスの開発などを目指していく必要があるかを、経営者であるあなたが判断・実践していくことになります。

EV(電気自動車)になることで不要になる部品で大きなものは、エンジン部品(エンジン本体部品、動弁系部品、燃料系部品、吸排気系部品、エンジン電装品 等)およびトランスミッション部品(クラッチカバー、クラッチディスク、MT、AT、CVT 等)があります。

逆に、EV(電気自動車)になることで必要となる部品で大きなものは、モーターバッテリー部品(リチウムイオンバッテリー、駆動用モーター、インバータ、DC-DCコンバータ 等)となります。

実際に、不要となる部品にかかわる製造業では、扱っている製品の種類や用途、保有する自社技術、取引先との関係などから受け止め方に差はあるものの、近い将来EV(電気自動車)が本格的に普及する前提で経営者が対策を講じてきています。

具体的には、系列外や異業種・異業態での新規取引先獲得、EV(電気自動車)で必要となるモーターバッテリー部品へのシフトや新規参入、医療分野や航空宇宙産業への進出などがあります。

系列に属しているかどうかに関わらず、業界で上場している大企業の有価証券報告書のリスク項目に、経営者であるあなたが認識している項目がどれだけありますか?
そして、そのリスクにどのように対応されていますでしょうか?

弊社では、「銀行のネットワークを最大限に活用する営業紹介の仕組みづくり」に特化しコンサルティングさせていただいています。

社会インフラでもある銀行のネットワークを活用したビジネスマッチングで、系列外や異業種・異業態への新規取引先獲得が可能な仕組みづくりを一緒にしませんか?

「売り手よし」、「買い手よし」、「世間よし」という、「三方よし」の経営をご一緒に実現させましょう!