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今週のコラム 資金繰りに詰まったら銀行の返済は後回し!

「先生大変です!!!月末の資金繰りが出来ないかもしれません・・・
大口受注先からの入金が遅延するかもしれないとの情報が今朝入ってきた状況なのです。どうしたらいいでしょうか?」──とある衣料関連業の経営者の方からの悲鳴にも聞こえるご相談です。

ニューノーマル時代になって早くも2年以上が経過しており、時代の変化についていけない業種・業態の企業では、大手企業であったとしても苦しい状況が続いており、場合によっては連鎖倒産の危機に見舞われることもあります。

このような場合、先ずは取引銀行に状況を説明してください。
説明する際に気をつけていただきたいのが、経営者であるあなたから取引銀行の支店長(融資責任者同席が望ましい)にご相談してください。

そして、今後、大口受注先からの入金が一切なくても(=売掛金が未回収になっても)、資金繰りが大丈夫なように協力いただきたい旨の経営者からの依頼が必須なのです。

間違っても、経理責任者に丸投げしないように!
(大口受注先からの入金がなくても、月末の資金繰りに問題がなく、これまでの売掛金が今後3〜4ケ月分決済がされなくても大丈夫であれば経理責任者に丸投げしても結構ですが・・・)

銀行の支店長や融資責任者に状況説明をした際の対応としては、取引銀行による緊急融資、信用保証協会の「セーフティネット保証2号(取引先企業のリストラ等の事業活動の制限)」、「セーフティネット保証5号(業況の悪化している業種(全国的)」、中小企業事業団の「中小企業倒産防止共済」、「セーフティネット保証1号(連鎖倒産防止)」などが考えられます。

しかし、以下に例示する融資の実行が難しい場合には、運転資金を確保するために、銀行の返済は後回し、返済予定金額を減額してリスケジュールしてもらってください。不渡で会社は倒産しますが、銀行の返済をリスケジュールしても会社は倒産しません(笑)

①取引銀行による「緊急融資」

民事再生手続開始の申立等の取引先倒産が確定していない状況では、経営者として一番やりやすいのは、臨機応変に対応可能な取引銀行による「緊急融資」となります。

②信用保証協会の「セーフティネット保証2号」

既に、「セーフティネット保証2号」の対象となっている大手企業との取引高が減少しているのであれば、「セーフティネット保証2号」を検討したいところです。

「セーフティネット保証2号」とは、生産量の縮小、販売量の縮小、店舗の閉鎖などの事業活動の制限を行っている事業者と直接・間接的に取引を行っていること等により、売上等が減少している中小企業者を支援するための制度です。

③信用保証協会の「セーフティネット保証5号」

緊急融資対応が難しく、大口受注先が「セーフティネット保証2号」の対象でもない場合、民事再生手続開始の申立等を行っておらず、入金遅延するかもしれないという状況ですので、「セーフティネット保証5号」での対応となります。

「セーフティネット保証5号」とは、(全国的に)業況の悪化している業種に属する中小企業者を支援するための制度です。

以下のいずれかの要件を満たすことについて、市区町村長の認定を受けた中小企業者が対象となります。

(イ)指定業種に属する事業を行っており、最近3か月間の売上高等が前年同期比5%以上減少の中小企業者

(ロ)指定業種に属する事業を行っており、製品等原価のうち20%を占める原油等の仕入価格が20%以上、上昇しているにもかかわらず、製品等価格に転嫁できていない中小企業者

詳細はこちらをご参照ください https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2014/140303gaiyou.pdf

④中小企業事業団の「中小企業倒産防止共済」

また、民事再生手続開始の申立等を行った場合であれば、その事業者との取引の確認が済み次第、すぐに借り入れることができ、無担保・無保証人で掛金の10倍(最高8千万円)まで借入れ可能な、中小企業事業団の「中小企業倒産防止共済」が一番便利です。

⑤信用保証協会の「セーフティネット保証1号」

最後に検討すべきは、「セーフティネット保証1号」の対象となっている民事再生手続開始の申立等を行った大型倒産事業者(経済産業大臣指定)に対し売掛金債権等を有しているのであれば、「セーフティネット保証1号」を活用したいところです。

「セーフティネット保証1号」とは、民事再生手続開始の申立等を行った大型倒産事業者に対し、売掛金債権等を有していることにより資金繰りに支障が生じている中小企業者を支援するための制度です。

この他にも、セーフティネット保証は8号まであり、要件に応じて申請することで融資を受けることが可能。また、一般保証の限度額(2億8千万円)とは別枠で限度額(2億8千万円)が設定されますので、一般保証で限度額一杯であっても申請・認可されれば融資を受けることが可能です。

<ご参考>

全国信用保証協会連合会ホームページより抜粋

「経営安定関連保証(セーフティネット保証)」

1号認定

大型倒産(再生手続き開始申立等)の発生により影響を受けている中小企業者

2号認定

取引先企業のリストラ等の事業活動の制限により影響を受けている中小企業者

3号認定

突発的災害(事故等)により影響を受けている特定地域の特定業種を営む中小企業者

4号認定

突発的災害(自然災害等)により影響を受けている特定地域の中小企業者

5号認定

全国的に業況が悪化している業種に属する中小企業者

6号認定

金融機関の破綻により資金繰りが悪化している中小企業者

7号認定

金融機関の相当程度の経営の合理化(支店の削減等)に伴い借り入れが減少している中小企業者

8号認定

RCC(整理回収機構)に貸付債権が譲渡された中小企業者のうち、再生可能性があると判断される者

保証限度額      普通保証2億円、無担保保証8,000万円(一般保証とは別枠)

セーフティネット保証の他にも、令和3年12月31日に指定期間終了となりましたが、「危機関連保証」という別枠の支援制度もありました。これを利用した場合の限度額は、一般保証の限度額(2億8千万円)+セーフティネット保証限度額(別枠で2億8千万円)+危機関連保証限度額(更に別枠で2億8千万円)にもなりました。

⑥取引銀行の返済リスケジュール

融資の実行が難しい場合には、運転資金を確保するために、返済予定金額を減額してリスケジュールしてもらってください。返済が延滞になってからでは、リスケジュールできません。時間との勝負になってきますので、金融機関には早めに動いてもらえるように依頼してください。

銀行サイドでは、「無理に返済して倒産されてしまうくらいなら、リスケジュールを申し出ていただきたい。」というのが本音ですので、ご心配なく。

⑦内部留保の資金化

これまでの企業活動で内部留保として蓄積してきた資産を資金化しましょう。

信用保証協会の保証付き売掛資産担保融資制度利用、棚卸資産の現金化、車両や機械のリースバック、土地・建物の売却・流動化、ゴルフクラブ・レジャークラブの会員権の売却、取引保証金の返却、保険の解約返戻金見合いの融資、倒産防止共済の解約などで内部留保を資金化してください。

決算書の貸借対照表上の項目だけでなく、決算書に載っていない保険解約返戻金や共済掛金などがないか今一度ご確認ください。

⑧私財の投入

融資による資金調達をベースに見てきましたが、必要額の融資が獲得できない・返済リスケジュールも不可・内部留保の資金化もできないという場合には、オーナー経営者である以上、最後の手段として私財を投入して危機を突破しなければなりません。

経営者であるあなたの報酬カット、個人年金保険や生命保険の解約返戻金見合いの融資、株式や会員権などの売却・・・

苦しいですが、オーナー経営者である以上、会社を潰すわけにはいきません。あなたを信じてついてきてくれている従業員やその家族を路頭に迷わせる訳にはいかないのです。

このような状況に陥った場合、経営者がしなければならないことは、「どのようにしてお金を会社に残すか」ということに尽きます。極端な言い方をすれば、「倒産の危機に至る状態からどう脱出するか」ということになり、それを経営者として陣頭指揮をとらなければならないのです。

具体的には、先ずお金(=キャッシュフロー)を確認しましょう。「この状況が続いた場合、あと何ヶ月持ち堪えられるのか?」を現状維持・最悪の2パターンを確認しましょう。特に、今後も売掛金の回収が遅延することが予想されますので、最悪パターンにはそれも織り込んでください。

「あと何ヶ月持ち堪えられるのかを確認したいので、至急、現状維持・最悪の2パターンで今後半年間の資金繰り表を見せてくれ。」と経理部長に指示するだけでOKです。

次に、お金を増やすための方策を考えます。シンプルに、「出ていくお金を減らし、入ってくるお金を増やす」ことに集中してください。無駄な支出・経費があれば削減することで出ていくお金を減らし、既存取引先で売上を増加・新規取引先で売上を獲得することで入ってくるお金を増やす。特に、人員の限られている中小企業では、既存取引先で利益率が高い先の売上増加に注力したいところです。

また、「お金を支払うまでの期間を先延ばし、お金が入金されるまでの期間を短くする」ことも同義であることをご理解ください。つまり、月末締め翌月末支払の条件で支払わなければならないものを、月末締め翌々月末支払の条件に変更することができれば、1ケ月分の現金が確保できます。発注額削減の要請があった場合には、支払いの前倒しを応諾条件にしましょう。

まだ、他にもいろいろと対応方法はありますが、「資金繰りに詰まったら銀行の返済は後回し!」ということだけは覚えておいてください。

会社は永続しなければなりません。

そのためには、これまでご説明した手法で現金を確保し、不渡にならないように手形や電子記録債権の決済を最優先しましょう。

キャッシュフローを確保し、お金を増やすための方策を実践することで、強い財務基盤の会社に生まれ変わることができます。将来的には、1年間くらい入金がなくても凌いでいける、倒産しない強い会社にしたいところです。

あなたの会社は、大口受注先の入金が止まった際、どの程度の期間持ち堪えられますか?

お金が残る経営で、あなたの会社の財務基盤を盤石なものにしていきましょう!