今週のコラム なぜ、経営者より優秀な営業担当者が採用できないのか?
「高窪さん、営業担当者がまた辞めてしまったので、新たに求人を出したのですが、応募者を面接しても私の求めるレベルとはかけ離れた人ばかりで採用がうまくいきませんでした。これまでも何度か求人は出したのですが、いつも残念な結果ばかりで内心困り果てています。中小企業が、優秀な営業担当者を採用するには、一体どうしたらいいのでしょうか?」とある中堅製造業の経営者の方からのご相談です。
そこで、どのような営業担当者を採用したいのですか?と質問をさせていただくと・・・
「とにかく優秀で、会社の売り上げに貢献してくれる即戦力です。できれば、ウチの会社の営業部隊の刺激になり、更に引っ張ってくれるような人材を採用したいですね」と。
その条件を聞いてまず私が申し上げたのが、経営者の方より優秀な人材を採用することは諦めてください、と言うことでした。
あなたが経営者として求めているレベルの人材なら、3000万円以上の年棒を保証してやっと採用できるかできないかです、とお話しさせていただきました。
3000万円以上の年棒を保証、、、
この条件は、求めていらっしゃるレベルの人材の報酬として至極当然なのですが、この経営者の方は聞いた途端に絶句されてしまいました。
そこでまず最初に、求められているレベルが「転職市場で3000万円以上の年俸レベル」である理由から解説させていただくことにしました。
求めている人材レベルは、上場企業でトップレベルの営業成績を上げている人材です。そのレベルの人材を上場会社から、現職より規模の小さな中堅企業に引き抜きするには、最低限3000万円以上の年棒と言う破格の動機付けがなければ、そもそも転職意欲さえ生まれません。
また、このレベルの人材は、自分の仕事能力に自信もあります。それなら、リスクを張って転職するならフルコミッションで思いっきり稼ぎたいと考える人材も多いでしょう。
余談ですが、上場企業の営業部隊は、日々命がけで会社経営に取り組まれている経営者の方々が想像され、求めているレベルの人材はほぼいません。
本当に優秀な人材がいたとしても、大きな組織の中で歯車になる期間が長くなると均一化されてしまいます。また、均一化されることが嫌な人材は、私が知る限りの範囲ですが、独立するかフルコミッションの世界に飛び込む人材がほとんどです。
そうなると、もうお分かりでしょう。
大きな組織で数十年間残った人材には、経営者の方々が求めるようなレベルの人材はいません。
稀にいたとしても、独立したくてもできない、何らかの要因を抱えているはずです。
ここで今一度、今回ご質問された経営者の方が求められている人材像を確認してみましょう。
「とにかく優秀で、会社の売り上げに貢献してくれる即戦力です。できれば、ウチの会社の営業部隊の刺激になり、更に引っ張ってくれるような人材を採用したいですね」
経営者の方からすれば当然、時間と労力、そして費用をかけて求人するのであれば、より高いレベルの人材を採用したい、と考えるのは当然だと思います。
この経営者の方に限らず、私が現役の銀行員だったときにもよく同じようなご相談とも愚痴⁈ともつかないお話を聞かせていただくことが多かったことからも、明白です。
今回、ご相談内容をお伺いしながら、思い出したのが創業されて東証一部上場企業にまで成長された経営者の方の言葉です。
その経営者の方は、東証一部に上場された後すぐの面談で、「これでやっと有名大学からも新卒採用ができる」と感慨深げにおっしゃっていたのです。それくらい、企業として素晴らしくとも、中堅企業が有能な人材採用を確保するのはなかなかに難しい、のです。
さて、まずここまでの解説で、求める人材を採用することが極めて難易度が高いことはご理解いただけたと思います。
その上で、経営者のあなたに質問です。
仮に採用できたとした場合、その人材が自社でどのように活躍される、と思われますか?
ここから先は、私の今までの経験値からの想定なのですが・・・
私の想定は、大きく下記4つです。
1.期待通りのリーダーシップを発揮するとともに、プロパー社員の協力もあり会社全体の売り上げ増加に貢献。
2.期待通りのリーダーシップを発揮するも、プロパー社員の協力なく会社全体の売り上げは増加せず。
3.リーダーシップを発揮する前にプロパー社員と衝突するも、プロパー社員への影響はなく会社全体の売り上げは増減せず。
4.リーダーシップを発揮する前にプロパー社員と衝突し、プロパー社員への悪影響があり会社全体の売り上げは減少。その後、他社へ再転職。
経営者として、優秀な人材を中途採用するのですから、想定1のようになって欲しいところですが、実際にこのようになる確率は極めて低い、と私は考えます。
仮に、想定1の状況になったとしても、今度はその優秀な中途採用の営業担当者が、さらに好条件を提示されたり、独立を目指して退職してしまった場合は、最悪、優秀な人材の採用前の状況に戻ってしまいかねません。
確かに一時的には売り上げは上がりますが、一人の能力に頼り切ってしまうと組織が育つことがないので、長期的に考えると決して望ましい状況とは言えないのではないでしょうか?
さらに、想定2から4については、以下のような状況が考えられます。
自他ともに認める優秀な人材ですから、当然、中途採用で入社した時点はやる気満々でしょう。
その気持ちそのままに、経営者の期待に応えようと必死で頑張ります。
しかし残念なことにその「やる気」が行き過ぎると仇となり、気持ちだけが先走り空回りし、さらに途中採用された人材が今まで経験してきた企業と転職先とのカルチャーの違いも相まって、プロパー社員との軋轢を生んでしまいがちです。
例えば、商品やサービスが優れていて、既存の取引先へのルート営業だけで十分に回っているような企業カルチャーの企業に、飛び込み営業で新規取引先をガツガツ獲得してくるような優秀な人材が中途採用されたとしたら・・・
間違いなくプロパー社員との衝突は避けられないことは、想像に難くないでしょう。
プロパー社員からすれば、そんなにガツガツして新規取引先を獲得しなくても、今まで通りに既存の得意先をフォローしていれば問題なく稼げるのに、中途採用の「新参者」が調和を乱さないで欲しい、と感じることでしょう。
その一方で、中途採用で入ってきた優秀な人材からすれば、自分はこのぬるま湯体質を改善・改革するために中途採用されたのだから、プロパー社員にビシバシ指導して、キッチリ成果を出すぞ、と気合が入っているはずです。
このため、途中採用で入社した人材に包容力が足りない場合、プロパー社員とのギャップで空回りしてしまい、多勢に無勢となってしまいます。
基本的に会社は組織なので、一人では何もできないのです。
平和だった世界:会社に中途採用者という部外者がやってきて、これまでの社内秩序を乱すとプロパー社員から捉えられることをした場合、残念なことに優秀であるはずの人材がその能力を活かせずに孤立してしまうのです。
人間は本能的に、変化を好みません。
このため、中途採用で優秀な人材が入社してきたとしても、異物が入ってきたとの認識で攻撃的になったり、全く関心を示さないということが起きても仕方ないのです。
ただし、プロパー社員が変化を望み、その手助けを中途採用された優秀な人材ができるのであれば、劇的な変化が起こる可能性も大いにあります。
ただし、その条件を満たすためには、経営者であるあなたがキチンと下地を整えてから、中途採用する必要がありますので、その点、くれぐれもご留意ください。
当社がご提案している「銀行を活用した営業部隊の仕組みづくり」では、優秀な営業担当者だけに頼ることなく、プロパー社員を仕組みづくりに組み込むことによって、新規取引見込先へ組織的にアプローチする営業部隊をつくり上げることが可能になります。
今までのように、我が社には優秀な営業担当者がいないから新規取引先が獲得できずに、売り上げが思うように伸ばせない、というような悩みからも解放されます。
新規取引先開拓を自動化するため「銀行を活用した営業部隊の仕組みづくり」をぜひ実践していただきたいと思います。
このコラムをお読みいただいている経営者のみなさま、
「売り手よし」、「買い手よし」、「世間よし」という、
「三方よし」の経営をご一緒に実現させましょう!